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腸活で”眠れる体”を作る|GABAを作る乳酸菌Lp815|Oura Ringで睡眠評価 - 『睡眠』の栄養戦略

「寝るためのサプリメント」と聞くと、多くの人はまず、寝る前に飲んでその日の睡眠を助けるものをイメージするかもしれません。

たとえば、グリシン、GABA、テアニン、マグネシウム。
どれも睡眠の文脈でよく見かける原料ですし、実際に「今日は寝つきが悪そうだな」という日に使いやすい選択肢でもあります。

一方で、今回紹介する Lactiplantibacillus plantarum Lp815 は、都度サプリメントで眠りを補助するというより、腸内環境を整えることで、深く眠れる体の土台を作ることを目的としています。

睡眠を“その日だけ補助する”のではなく、“眠れる体を作る”

こんなこと、ありませんか?

疲れているのに、なぜか寝つけない。
ベッドに入ると、仕事のことや明日の予定が頭に浮かんでくる。
眠れたとしても、夜中に何度も目が覚めて、朝の回復感が弱い。

こうした睡眠の乱れは、単に「眠気が足りない」という話だけではありません。背景には、ストレス応答、自律神経、腸内環境、神経伝達物質などが複雑に関わっています。

ここで重要になるのが、腸脳相関です。

腸は「第二の脳」と呼ばれることがあります。これは少しキャッチーな表現ですが、実際に腸と脳は、神経、免疫、ホルモン、腸内細菌の代謝産物などを通じて、双方向に情報をやり取りしています。

腸脳相関については下記の記事で詳しくまとめているので確認してみてください。

睡眠も同じです。ストレスが強い状態では、脳が休息モードに入りにくくなります。考え事が止まらない。不安が残る。体は疲れているのに、神経だけが起きている。こうした状態では、入眠も睡眠の維持も難しくなります。

そこで近年注目されているのが、腸内環境を介してストレス応答や睡眠の質にアプローチするという考え方です。

腸と睡眠の関係模式図

日本でも、Yakult1000などの乳酸菌飲料において、「腸内環境」「ストレス」「睡眠の質」を組み合わせた機能性表示が見られるようになっています。これは、まさに腸内環境の改善を通じて睡眠の質向上を狙っている製品です。



睡眠の質を改善する乳酸菌Lp815

今回はGrantら(Grant et al., 2026)がLp815の睡眠への機能性を評価した論文を紹介します。

Grant, A. D., Erfe, M. C. B., Delebecque, C. J., Keller, D., Zimmerman, N. P., Kazaryan, A., Oliver, P. L., Moos, J., Luna, V., & Craft, N. (2026).

Grantらは睡眠の質を”腸活”を通じて改善するにあたり、乳酸菌のGABA産生能力に着目しました。GABAは脳内で”抑制系”と呼ばれる神経伝達にかかわっており、気分を落ち着かせたりリラックスするために重要な要素であると考えられています。

GABA自体もサプリメント原料として広く普及をしていますが、今回興味深いのはGABAを産生する乳酸菌を摂取することで、”ストレスがかかった”時に接種をしなくても”体内でGABAが作られる”状況を作ることを目指している点です。

実際に、今回選別されてきたLp815は一般的なGABA産生菌株と比較して3倍高いGABA産生量を持つことが知られており、今回の投与量では500mgのGABAを産生することが細胞試験で確認されています。

この菌株の効果を検証するため、筆者らは一般的な睡眠の質に関する試験に加えて、Oura Ringを使った客観的な睡眠評価、並びにGABAの産生量(尿中のGABA量)も評価しています。

それでは一つずつ結果を見ていきましょう。


睡眠の質の評価:Insomnia Severity Index

睡眠の質を評価するにあたっては、ISI (Insomnia Severity Index:不眠重症度指数)が良く使われます。これは寝つきの悪さ、夜中に目が覚めること、早朝に目が覚めてしまうこと、睡眠への満足度、日中生活への影響、不眠に対する心配などを評価しています。

つまり、単に「何時間眠れたか」ではなく、本人にとって睡眠の問題がどれくらい負担になっているかを見る指標です。数値が高いほど、不眠症状が深刻であることを示しています。

まず被験者全体についてLp815を摂取した被験者と摂取していない被験者(プラセボ群)を比較したところ、Lp815群で 9.31 ± 4.58、プラセボ群で 12.0 ± 5.78というISI値が得られました。これは明確に不眠症状が改善されていることを示しています。

質問項目別にみると、”入眠困難”と”睡眠維持困難”に関する数値が有意に改善していました。

Lp815は入眠をサポートし、夜中の中途覚醒を抑える

また、さらに細かいグループ毎に見ていくと、摂取前に不眠症状が重かった人ほど改善幅が大きいことも示唆されています。

これは実用面でも大きな意味を持ちます。もともと睡眠に大きな問題がない人よりも、「寝つきが悪い」「夜中に起きる」「睡眠への不満が強い」といった悩みを持つ人のほうが、Lp815の変化を感じやすい可能性があります。


客観的な睡眠データ:Oura Ring

次に、Oura Ringを用いた客観的な睡眠評価を見ていきます。

Oura Ringは、指輪型のウェアラブルデバイスです。睡眠中の体の動き、心拍、呼吸などをもとに、総睡眠時間や睡眠効率、深睡眠などを推定します。

病院や研究施設で使われるPSG、つまり終夜睡眠ポリグラフ検査とは違い、家庭で日常生活を送りながら使える点が特徴です。

今回の試験で面白いのは、このような比較的身近で実施しやすいデバイスを使った評価でも、第三章で見たISIと同じ方向の改善が確認された点です。

本人の主観評価だけでなく、Oura Ringの客観データでも睡眠改善の方向性が見られたことは、この研究の重要なポイントです。

具体的には、Lp815群ではプラセボ群と比較して、ベッドに入っていた時間が有意に長くなっていました。差はおよそ9分です。

また、総睡眠時間もLp815群で有意に長く、差はおよそ6分でした。

6分と聞くと、かなり小さな差に感じるかもしれません。実際、1日単位で見れば「劇的に睡眠時間が伸びた」と言えるほどの変化ではありません。

ただし、ここで重要なのは、毎晩のOura Ringデータを6週間にわたって追跡したリアルワールド型のデータで、主観的なISI改善と同じ方向に結果が出ていることです。

睡眠研究では、本人の体感だけで改善が見える場合もありますし、逆に客観指標だけが変わって本人の実感が弱い場合もあります。今回の試験では、ISIという主観評価で不眠症状が改善し、さらにOura Ringでも総睡眠時間などが同じ方向に動いています。

つまり、Lp815の効果は「なんとなく眠れた気がする」という主観だけではなく、日常環境で取得した睡眠データ上でも一定の裏づけが見られた、と考えられます。


体内での作用機序:尿中GABA

次に、この論文で最も面白いポイントである 尿中GABA について見ていきます。

ここまで見てきたように、Lp815ではISIによる主観的な不眠症状の改善が見られ、さらにOura Ringによる客観的な睡眠指標でも同じ方向の変化が確認されています。

ただ、ここで気になるのは、「なぜそのような変化が起きたのか」です。

睡眠サプリメントの研究では、睡眠スコアが改善したかどうかに注目が集まりがちです。もちろん、それ自体は重要です。ただし、素材としての説得力を考えると、どのような仕組みで睡眠に関わっているのかまで見えてくると、原料の信頼性が一段上がります。

この研究の肝は、睡眠指標だけでなく、GABAという作用機序に関わる指標まで見にいっている点です。

今回の研究では、サブスタディとして尿中の神経伝達物質が測定されています。結果として、7日目の尿中GABAは、Lp815群で 67パーセンタイル、プラセボ群で 32パーセンタイル でした。群間差は p = 0.04 で、Lp815群のほうが尿中GABAが高い結果となっています。

また、Lp815群の尿中GABAは、ベースラインの 45パーセンタイル から、7日目には 70パーセンタイル へ上昇する傾向が見られています。

ここで重要なのは、Lp815がもともとGABA産生能力に着目して選ばれた乳酸菌であるという点です。つまり、睡眠指標が改善しただけでなく、その背景にある可能性として、GABA産生の関与を示唆するデータも得られているわけです。

もちろん、尿中GABAが増えたからといって、それがそのまま脳内GABAの増加を意味するわけではありません。尿中GABAは、あくまで体内でのGABA関連代謝を反映する一つの指標として見る必要があります。

一方で、今回の研究では、2週時点で尿中GABAが高い人ほど、ISIのスコアが低い傾向も示されています。つまり、断片的なデータではありますが、Lp815は腸内でのGABA産生量を増加させ、それにより睡眠の質が向上されることが示唆された原料である、と考えられます。

Lp815は、“腸内でGABAを作る乳酸菌”という仮説を、尿中GABAの変化から支持している


おわりに:この研究が示唆していること

今回のGrantらの研究では、Lp815の摂取によって、ISIによる主観的な不眠症状の改善が見られました。特に、寝つきの悪さや夜中に目が覚めるといった項目で改善が示されています。

さらに、Oura Ringを用いた客観的な睡眠評価でも、総睡眠時間や深睡眠推定値がLp815群で改善していました。Oura RingはPSGではないため解釈には注意が必要ですが、比較的身近なウェアラブルデバイスでもISIと同じ方向の変化が確認された点は、この研究の大きな特徴です。

そして最も興味深いのが、尿中GABAの上昇です。Lp815はGABA産生能力に着目して選ばれた乳酸菌であり、今回の試験でも尿中GABAが増える方向の変化が示されました。

Lp815は、睡眠を一時的に補助するというより、腸内環境を通じて“眠れる体の土台”に働きかける可能性がある素材です。

睡眠を考えるとき、どうしても”その夜をどうするか”という単回的な発想になってしまいがちです。一方で、日々のパフォーマンスを維持するための”マラソン”を考えると、生活の土台を整える重要性に気づかされます。

Lp815は、まさにその視点を広げてくれる素材です。

このnoteでは今後も、プロフェッショナル層が安定して高いパフォーマンスを発揮するための栄養戦略を、科学的な視点から整理していきます。

気になるテーマがあれば、ぜひコメントで教えてください。

それでは皆様、ご健康に✋

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