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飲酒後の過食は意思の弱さではない②|飲酒中に体を整える栄養戦略

この記事は、「飲酒後につい食べすぎてしまう人向けの栄養戦略」について整理する、二本目の記事です。

これまでの記事では飲酒によって体に起こる変化とそれが過食に体を鵡川得てしまう理由、並びに過食を抑えるための飲酒前の栄養戦略について見てきました。まだ読んでいない方はそちらもチェックしてみてください。

今回の記事ではさらに時間軸を一つ進めて、飲酒中に実践できる栄養戦略を考えていきます。


飲酒中にとれる対策 - 重要な3つのポイント

飲み会の最中に意識したいことは、大きく3つあります。

ひとつ目は、血糖値を乱高下させないこと
ふたつ目は、水分不足に陥らないこと
そして三つ目は、アルコールによるダメージを軽減することです。

この3つは、どれも飲酒後の過食と深く関係していきます。

前回の記事では飲酒をすることで体に起こる4つの要素とそれらがなぜ体を過食に向かわせてしまうのかを見ていきました。

しかし、飲酒をする機会とは友人との会合であったり会食であったりと自分で自由に食事や行動を管理できるものではありません。この記事では現実的に実行可能な範囲で、上記の3要素をカバーする方法について提言していきます。

この目的のため、私の記事の中では珍しくサプリメントの議論は含まれていません。あくまで、アルコール込みの食事中に実施可能なものを臨床ベースで具体的に議論していきます。

それでは早速、飲酒後に過食に走らないために重要な飲酒中の3要素とその対応策について見ていきましょう。


血糖値を乱高下させない - 飲酒後の糖分欲求を抑える

まず見ていきたいのが、血糖値です。

飲酒中に糖質の多い食事や甘いお酒を多く摂ると、血糖値が上がりやすくなります。その後、インスリンの働きによって血糖値が下がると、体はエネルギー不足のような状態を感じやすくなります。

また前回記事でも紹介した通り、アルコール摂取中は糖新生が起こりにくい体になっています。これにより飲酒中は体内の血糖値がよりコントロールしにく状態になってしまっています。

そのため、飲酒中の食べ方で重要なのは、単にカロリーを抑えることではありません。血糖値をできるだけ安定させることです。

では、具体的にどうすればよいのか。

まずは基本から、できる限り野菜やタンパク質を優先して食べることをおすすめします。最初から炭水化物や甘いお酒に偏るのではなく、まずは体の土台を作るような食べ方をするイメージです。

たとえば、飲み会の前半では以下のようなものを選ぶとよいと思います。

  • サラダ、海藻、きのこ、枝豆などの野菜・食物繊維系

  • 焼き鳥、刺身、卵、豆腐、魚、肉などのタンパク質

この「食べる順番」については、臨床研究でも一定の根拠があります

Shuklaら(Shukla et al., 2015)の研究では、2型糖尿病の成人を対象に、同じ食事を「炭水化物から先に食べる場合」と「野菜・タンパク質を先に食べ、炭水化物を後に食べる場合」で比較しました。

その結果、野菜・タンパク質を先に食べた場合、食後血糖は炭水化物を先に食べた場合と比べて、30分後で28.6%、60分後で36.7%、120分後で16.8%低下していました。また、食後血糖の上昇全体を示すiAUCも73%低下していました。

同じ食事内容でも、食べる順番を変えるだけで、食後の血糖反応がここまで変わる可能性があるということを示しています。この結果だけでも、食べる順番を調整することには大きな意義があると言えます。

また、Imaiら(Imai et al., 2013)の研究でも、2型糖尿病の人と耐糖能が正常な人を対象に、野菜を炭水化物より先に食べる方法が検討されています。この研究でも、野菜を先に食べることで、食後血糖の変動や血糖上昇のピークが有意に低くなることが示されました。

ここで重要なのは、これらの研究が「飲酒後のラーメン欲求」を直接調べたものではない、という点です。

飲酒中の基本は、野菜とタンパク質を先に入れ、炭水化物は最後に軽く。

これは、厳しい糖質制限をするという話ではありません。

飲み会の場で、炭水化物を完全に抜く必要はありませんし、それでは楽しさも続きません。今回紹介して見えてきたことは、食べる順番を考えるだけで大きく血糖値の変動を減らせるということです。

会食のような制約の多い場にあっても実践できる、現実的な解決策であると思います。


水分不足に陥らない - アルコールは液体だが水分補給になりにくい

次に、水分不足です。

酒は、たしかに液体です。ビールもハイボールもワインも、飲んだ瞬間には口が潤いますし、胃にも液体が入ります。

そのため、感覚としては「水分を摂っている」ように感じます。

ただし、体内の水分バランスという視点で見ると、話は少し変わります。アルコールには利尿作用があり、尿として水分を外に出しやすくする方向に働くからです。

ここで関わるのが、バソプレシンというホルモンです。バソプレシンは、体内の水分を保つために、腎臓での水分の再吸収を助けるホルモンです。簡単に言えば、「水分を体に残しておこう」とする働きを持っています。

ところが、アルコールを摂取すると、このバソプレシンの働きが抑えられます。

バソプレシンが抑えられる

腎臓で水分を再吸収しにくくなる

尿量が増える

体内の水分が抜けやすくなる

つまり、お酒を飲んでいるときは、液体を入れている一方で、体は水分を外に出しやすい状態になっています。

お酒は“液体”だが、“水分補給”できるわけではない。

口や胃の感覚としては、たしかに液体が入ってきています。だから、脳は「何かを飲んでいる」と認識します。しかし、体内ではアルコールの利尿作用によって、水分を保持しにくい状態が起きています。

このズレがあるため、飲んでいる最中はあまり喉の渇きを感じていなくても、帰宅後や寝る前、翌朝になって強い口渇やだるさを感じることにつながります。

そして、この水分不足の感覚は、飲酒後の食欲にもつながります。水分不足に塩分不足やアルコールによる判断力の低下が伴うと、汁物が欲しくなります。

この流れを考えると、飲酒後のラーメン欲求は、単なる食欲だけでは説明できません。体は水分や電解質を求めているのに、本人の感覚としては「何か食べたい」に変換されている可能性があります。

この構造を見ていくと、飲酒中に水分を摂取する重要性が見えてきます。水を飲む目的は、単に喉を潤すことではありません。

アルコールによって崩れやすい体内の水分バランスを、できるだけ大きく崩さないために、水分の摂取は非常に重要。

では、どのくらい水を飲めばよいのでしょうか。

実践的には、純アルコール20gあたり、水250〜350mlをひとつの目安にすると良いと思います。

純アルコール20gは、だいたい以下の量に相当します。

  • ビール5%なら500ml

  • ハイボール7%なら350ml前後

  • ワイン12%なら200ml前後

  • 日本酒15%なら170ml前後

このくらいのアルコールを飲むごとに、コップ1杯の水を挟むイメージです。

もちろん、水を飲めば二日酔いが完全に防げるわけではありません。二日酔いは、脱水だけでなく、アセトアルデヒド、炎症反応、睡眠の質の低下など、複数の要因で起こります。

ただし、飲酒中に水を挟むことで、少なくとも「液体を飲んでいるのに、体内では水分が足りなくなっていく」というズレを小さくできます。

飲酒中の水分補給は、“喉の渇き対策”ではなく、“体内の勘違いを補正する対策”


アルコールによるダメージを軽減する - 食事、特にたんぱく食を摂取する

三つ目は、アルコールによるダメージをできるだけ軽減することです。

ここでいうダメージとは、肝臓への負担だけを指しているわけではありません。血中アルコール濃度の急上昇、判断力の低下、睡眠の質の低下、翌日のだるさ、そして飲酒後の食欲の暴走まで含めた、広い意味での体への負担です。

このダメージを完全にゼロにすることはできません。アルコールを摂取する以上、体には一定の負担がかかります。

ただし、飲み方によって、その負担を大きくしすぎないことはできます。ここで重要なのが、空腹のまま飲まないことです。

アルコールのダメージを軽くするためには、アルコールの吸収を抑えることが重要

お腹が空いた状態でアルコールを入れると、アルコールの吸収が速くなり、血中アルコール濃度が上がりやすくなります。その結果、酔いが回りやすくなり、判断力も落ちやすくなります。

判断力が落ちると、食欲のブレーキも効きにくくなります。普段なら選ばないような高カロリーな食べ物や、締めのラーメンに向かいやすくなるのは、この影響もあります。

食事の有無によるアルコール吸収率の違いは体感ではなく、臨床試験でも検証されています。

Jonesら(Jones et al., 1997)の研究では、健康成人男性を対象に、空腹時と、食事を摂った後で、アルコール摂取後の血中アルコール濃度が比較されました。食事は、高脂質食、高炭水化物食、高タンパク質食に分けて検討されています。

その結果、空腹時のピーク血中アルコール濃度は30.8 mg/dLでした。一方で、食事を摂った後では、高脂質食で16.6 mg/dL、高炭水化物食で17.7 mg/dL、高タンパク質食で13.3 mg/dLまで低下していました。

つまり、空腹時と比べると、ピーク血中アルコール濃度は、高脂質食で約46%低下、高炭水化物食で約43%低下、高タンパク質食で約57%低下していたことになります。

さらに、血中アルコール濃度の時間的な総量を示すAUCも、空腹時の3210 mg/dL・minに対して、高脂質食後で1767 mg/dL・min、高炭水化物食後で1619 mg/dL・min、高タンパク質食後で1270 mg/dL・minでした。

これは空腹時と比べて、AUCが約45〜60%低下していたことを意味します。

この研究から言えるのは、飲酒時には「何を食べるか」だけでなく、お腹に何かを入れてから飲むこと自体が重要だということです。

特にタンパクを多く含む食事を摂取していた群では血中アルコール量の低減幅が大きいことも特筆すべき観察結果です。飲み会での魚や焼き鳥などを冒頭に摂取しておくことでアルコール吸収を阻害できる可能性を示唆しています。

これらを飲み会の早い段階で入れておくことで、アルコールの吸収が急激になりにくく、血糖値や食欲の乱れも起こりにくくなります。


まとめ - 飲酒中の小さい対策が大きな効果を生む

ここまで、飲酒中に意識したい3つのポイントを見てきました。

ひとつ目は、血糖値を乱高下させないこと。
ふたつ目は、水分不足に陥らないこと。
三つ目は、アルコールによるダメージを軽減することです。

飲酒後にラーメンや甘いものが欲しくなると、「また意思が弱かった」と感じてしまう人もいるかもしれません。しかし、体の中で起きていることを見ていくと、これは単なる精神論では説明できません。

血糖値が乱れる。
水分と電解質が不足する。
アルコールの吸収が速くなり、判断力が落ちる。

こうした要素が重なることで、飲酒後の体は「糖質が欲しい」「汁物が欲しい」「今なら食べてもいいか」と判断しやすい状態に傾いていきます。

つまり、飲酒後の過食は、飲んだ後に急に起こる問題ではありません。飲んでいる最中の食べ方、飲み方、水分の取り方によって、かなり前段階から方向づけられていると考えられます。

飲酒中の対策として、まず意識したいのは食べる順番です。飲み会の前半で、野菜や食物繊維、タンパク質を先に入れる。炭水化物は最後に軽くとる。この順番にすることで、血糖値の急な変動を抑えやすくなります。

次に、水分補給です。お酒は液体ですが、アルコールには利尿作用があるため、水分補給としては不完全です。飲んでいる感覚はあっても、体内では水分を保持しにくい状態になっています。だからこそ、純アルコール20gあたり水250〜350mlを目安に、水を挟むことが重要になります。

そして、空腹で飲まないこと。これはアルコールの吸収を急がせないための基本です。Jonesらの研究でも、食事を摂った後では、空腹時と比べてピーク血中アルコール濃度やAUCが大きく低下することが示されています。特にタンパク質を含む食事では低下幅が大きく、飲み会の前半に魚、肉、卵、豆腐、枝豆などを入れておくことには、十分な意味があります。

飲酒中の対策は、野菜とタンパク質を先に食べ、水を挟み、空腹で飲まないこと。

これは、飲み会を我慢の場にするという話ではありません。むしろ、飲み会を楽しみながら、その後の体調と食欲の暴走をできるだけ抑えるための現実的な設計と言えるのではないでしょうか。

前回の記事では、飲酒前に体を整える栄養戦略について整理しました。今回の記事では、飲酒中にできる対策として、血糖値、水分、アルコール吸収という3つの観点から見てきました。

次の記事では、飲酒後にできる対策について整理していきます。すでに飲んだ後の体に対して、何をすれば過食に向かいにくくなるのか。水分、電解質、睡眠の質といった観点から、実践的に考えていきたいと思います。

このnoteでは、臨床試験の結果や作用機序をベースに、
プロフェッショナルが安定して高いパフォーマンスを発揮するための栄養戦略を発信しています。ご興味のある方は是非フォローお願いします。

それでは皆様、ご健康に✋


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