優しいときもあるから、余計につらい|臨床心理学者が教える、自分の感覚を取り戻す方法
友人に相談しようとして言葉が出てこなかったことはありませんか。
説明しようとするとたいしたことがないように聞こえてしまう。そのとき言われた言葉をそのまま伝えてもたぶん伝わらない。しかも彼は優しいときは本当に優しい。
だからこう思ってしまいます。私が大げさなだけかもしれない。
けれど、はっきりお伝えします。相談しようとして言葉に詰まること自体が大切なサインです。
本当に何も起きていない関係なら、説明に困りません。困るのは、あなたが受けている扱いが外から見えにくい形で行われているからです。
そして、優しいときがあることは問題がないことの証明にはなりません。むしろ、優しさと厳しさが交互に来る関係のほうが人はずっと抜け出しにくくなります。ずっと冷たい相手なら、心はすぐに離れます。けれど、ときどき本当に優しくされるとそのときの記憶がつらい記憶を打ち消してしまうのです。
ただ、この状況にいるとき、あなたの中にはいくつもの気持ちが渦巻きます。
「私が悪いのかもしれない」という疑い。「でもなんだかおかしい」という違和感。「優しいときは本当にいい人」という混乱。「私が我慢すればいい」という諦め。そして、自分の感じ方が正しいのかどうか、分からなくなっていく感覚。
この最後のものが、いちばん深刻です。何を言われたかよりも自分の感覚を信じられなくなることのほうがあなたを長く縛ります。
優しさと厳しさが交互に来ると人は抜け出せなくなる
この状況にいるとき、多くの女性が二つのどちらかを選びます。
ひとつは自分の受け取り方を直そうとすること。気にしすぎないようにしようもっと広い心を持とうと自分を調整する。もうひとつは優しいときの彼を思い出して、これでいいのだと納得することです。
けれど、どちらも状況を変えません。そして、どちらもあなたの中の違和感を押し込めるだけです。
ここで、大切な仕組みをお伝えします。
人はいつも同じ扱いをされる関係より、扱いが予測できない関係のほうに強く縛られます。冷たさが続けば心は離れます。優しさが続けば安心して落ち着きます。ところがその二つが交互に来ると人は次の優しさを待ち続けるようになります。
そして、優しさが来た瞬間それまでのつらさは記憶の中で薄まります。「やっぱりいい人なんだ」と思える。だからまた耐えられてしまう。この繰り返しが関係を長引かせます。
さらに、もうひとつ起きていることがあります。
あなたが違和感を伝えるたび、「気にしすぎだよ」「そんなつもりじゃない」「考えすぎ」と返されてきたのではないでしょうか。これが繰り返されると人は自分の感じ方そのものを疑うようになります。
何かがおかしいと感じている。けれど、それを言うと否定される。だから感じている自分のほうが間違っているのだろうと考えるようになる。
こうして、いちばん大切な判断材料である、あなた自身の感覚が使えなくなっていきます。
つまり、この状況で本当に危ういのは、彼の言動そのものより、あなたが自分を信じられなくなっていくことなのです。
今日、あなたにお伝えすること
今日お伝えするのは、外から見えにくい扱いをあなた自身の感覚で見極めるための方法です。そして、判断できるだけの材料を自分の手に取り戻す手順です。
次に、友人に説明しようとして言葉に詰まりそうになったとき。そのときにこの記事をもう一度開いてください。
申し遅れました。私は神崎叶と申します。臨床心理学者であり、現役の心理カウンセラーをしています。
大学院では臨床心理学を専攻し、人がどんな状況で自分の判断力を失っていくのかを研究してきました。繰り返し否定されると人は自分の感覚を信じられなくなる。この仕組みは私の専門が深く関わる領域です。
カウンセラーとして人の話を聴き、心の問題に向き合う仕事をしています。とくに自分の感じ方が正しいのか分からなくなった方がその感覚を取り戻していく過程に長く伴走してきました。この技術はカウンセリングに必要なスキルの一つであり、私自身が専門的な訓練を受けてきました。その技術を後進のカウンセラーに指導する立場でもあります。加えて、スピリチュアルカウンセラーとしても長年活動してきました。
これまで1,000件を超える恋愛や人間関係のご相談に向き合ってきました。その中でもこのテーマのご相談には共通する入り方があります。皆さん、まずこうおっしゃいます。「たいしたことじゃないんですけど」と。
たとえばこんな方がいました。彼から何度も「お前は考えが甘い」「そんなことも分からないのか」と言われていた彼女。それでも優しいときの彼を思い出しては自分が悪いのだと考えていました。相談に来たときも彼をかばう言葉から始まりました。
彼女が変わったのは、言われた言葉をその日のうちに書き留めるようになってからです。一か月後、その記録を読み返して、彼女は言いました。「文字にするとこんなに言われていたんですね」と。
頭の中の記憶は優しさで上書きされます。けれど、書いたものは書き換わりません。
だからこそこの記事でお伝えするのは、気休めの言葉ではありません。現場で多くの方の心に向き合ってきた経験と心理学の裏づけに基づいた、すぐに使える方法です。
見えにくい扱いが現れる、4つの場面
まず、外から見えにくい扱いはどんな形で現れるのか。相談の現場で見てきたものを4つに整理します。
一つ目は「会話の場面」です。意見を言うと内容ではなく、あなたの人格や能力の話にすり替わる。「そういう考え方だから」「頭が悪い」。話し合いのはずがいつのまにか、あなたが評価される場になっています。
二つ目は「感情の場面」です。あなたが傷ついたと伝えるとその感じ方のほうが否定される。「気にしすぎ」「冗談も通じないのか」。傷ついた事実より、傷ついたあなたの側に問題があることになります。
三つ目は「決定の場面」です。二人で決めるはずのことがいつも彼の希望に落ち着く。反対すると機嫌が悪くなるか、長い説得が始まる。だんだん、意見を言わないほうが楽になっていきます。
四つ目は「関係の場面」です。友人や家族と会うことにいい顔をされない。予定を入れると不機嫌になる。あからさまに禁止されるわけではないので、あなたが自分から遠慮するようになります。
大切なのは、この四つのどれもひとつひとつを取り出すと小さく見えるということです。だから説明しても伝わらない。けれど、毎日積み重なるとその影響は大きくなります。
そして、これらの場面に共通しているのは、あなたが自分の感じ方や意見をだんだん出さなくなっていくことです。
あなたの感覚はどうなっているか
自分の状態を知るために次の問いを静かに自分に向けてみてください。彼を評価する問いではなく、あなたの状態を見る問いです。
彼といるとき、言葉を選ぶ時間が以前より長くなっていませんか。
自分の意見を言う前に彼の機嫌を確かめる習慣がついていませんか。
友人と会う回数はこの一年で減っていませんか。
自分の感じたことをあとから「気のせいかも」と打ち消すことが増えていませんか。
そして、いちばん大切な問いです。彼と過ごしたあとあなたは元気になっているでしょうか。それとも疲れているでしょうか。
最後の問いはいちばん正直な指標です。関係の良し悪しは何が起きたかより、そのあとのあなたの状態に表れます。
これらは頭の中だけで考えると彼をかばう気持ちに押されてゆがみます。紙に書き出してみてください。
この状況でやってしまいがちな3つのこと
状態が見えてきても動き方を間違えるとあなたの感覚はさらに鈍っていきます。相談の現場でいちばん多く見てきたものを3つお伝えします。
一つ目は自分の受け取り方を直そうとすることです。もっと寛容になろう気にしないようにしようと自分を調整する。けれど、違和感はあなたを守るために鳴っている信号です。信号を止めても危険が消えるわけではありません。
二つ目はその場で言い返そうとすることです。会話が人格の話にすり替わっている状況では議論はまず成立しません。話せば話すほど、あなたの言葉が材料にされ、疲れ果てるだけです。
三つ目は優しいときの彼を本当の彼だと考えることです。優しい彼も厳しい彼もどちらも同じ人です。片方だけを本当だと決めると判断ができなくなります。見るべきなのは、どちらが本物かではなく、両方を含めた全体です。
これらに共通するのは、あなたが自分の感覚より、彼の言い分を優先していることです。取り戻すべきなのは、あなたの側の判断材料です。
この先のすべてに共通する、3つの原則
これからお伝えする方法は次の3つの原則の上に立っています。
一つ目は記憶ではなく、記録で判断するということです。頭の中の記憶は優しさで上書きされます。書いたものは、書き換わりません。
二つ目は彼を変えようとしないということです。この段階でやるべきなのは、あなたが正確に現状を把握することです。
三つ目は一人で判断しないということです。閉じた関係の中では比較対象がなくなります。外の視点が必ず要ります。
この先であなたが手にできること
ここまでで優しさと厳しさが交互に来る関係の仕組みと見えにくい扱いが現れる4つの場面、そして、すべての土台になる3つの原則をお伝えしました。この先では実際にどう動くのかを順を追ってお伝えします。
この先であなたが手にできるのは、こういうものです。
自分の感覚を取り戻すための記録の取り方。会話が人格の話にすり替わったときの切り抜け方。何が起きているかを外の人に伝わる形で説明する方法。この関係を続けるかどうかを判断するためのはっきりした基準。そして、あなたの安全を最優先に考えるべき場面の見分け方です。
この記事は単品(4,980円)でお読みいただけます。ただ、正直にお伝えしておきたいことがあります。この記事を含むすべての記事が読み放題になるメンバーシップ(月額3,000円)なら、この記事を1本だけ読みたいという方でも単品で購入するより安くすみます。退会はいつでもできますので、まず入ってこの記事を読む、という選び方もできます。
また次に自分の感じ方を疑って、違和感を飲み込んでしまう前に。あなたの感覚を取り戻す道すじを手元に置いていただければと思います。
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