系譜をムダに考える〜私的にupgrade
「upgrade」
という言葉を使うと、何やらパソコンやスマホの性能でも語りそうだけれど、僕が今回考えているのは、もっとどうでもいい身の回りの話である。
きっかけは、今使っている皮膚科で処方の二つの薬だった。
尿素クリームのチューブを見る。
……ラミネートチューブだ。
一方、もう一つの薬は金属チューブ。
そこで、ふと思った。
「そういえば、昔の歯磨き粉って金属のチューブだったよな」
そこから始まった。
また、どうでもいいことを考え始めた(笑)。
「最後まで絞り出す」が、ちょっと楽になった
子供の頃の歯磨き粉は、金属製のチューブだった。
使っていくうちに、だんだん潰れていく。
最後のほうになると、いかにして残った歯磨き粉を絞り出すか。
チューブを折ったり、丸めたり、端から押したり。
最後の一滴まで使い切ろうとする。
今のラミネートチューブは、あの頃に比べるとずいぶん扱いやすい。
もちろん、最後まで使い切ろうとすれば、それなりに格闘はする。
でも、以前よりは「絞り出す」という行為そのものが楽になった。
考えてみれば、こういう小さな改良は、生活のあちこちにある。
プルタブも、昔は「取れた」
缶飲料のプルタブ。
今では、開けるために引っ張った部分が、そのまま缶に残っている。
ステイオンタブというらしい。
当たり前すぎて、そんな名前があることすら意識していなかった。
でも昔は違った。
プルタブを引っ張って開ける。
そして、その小さな金属片を缶から外して捨てる。
場合によっては、外れたタブを落とす。
たいしたことではない。
でも、ちょっと面倒だった。
今では、その「ちょっと」がなくなっている。
これも、upgradeなのだと思う。
缶詰には、もっと大きなupgradeがあった
さらに遡ると、缶詰。
昔は缶切りが必要だった。
缶切りを持ってきて、缶の縁に引っ掛けて、ぐるぐる回す。
ところが、今ではイージーオープンタイプが普通になった。
缶詰を開けるために、「缶切りという道具そのものを用意する」必要がなくなった。
これはかなり大きな変化だ。
便利になったというより、
「缶詰を開ける」という行為から、いくつかの工程が消えた。
そう考えると、生活用品の進化って面白い。
レトルトカレーも「料理」ではなくなっていった
レトルトカレーもそうだ。
昔は袋を湯煎する。
鍋にお湯を沸かす。
袋を入れる。
しばらく待つ。
取り出す。
それが今では、商品によっては箱ごと電子レンジへ。
「レトルトカレーを温める」という行為が、どんどん簡単になっている。
もはやこれは料理というより、
「食べる前に温めるだけ」
に近づいている。
これも、考えてみればすごい。
そう考えると、「upgrade」って何だろう
ラミネートチューブ。
ステイオンタブ。
イージーオープン缶。
電子レンジ対応のレトルト食品。
どれも、生活を劇的に変える発明ではない。
でも、
「ちょっと面倒」
「ちょっと危ない」
「ちょっとイラッとする」
という小さなストレスを、一つずつ消している。
便利さというのは、こういうところに現れるのかもしれない。
昔の自分が当たり前だと思っていたことが、今の自分にとっては「わざわざそんなことをしていたの?」になる。
そう考えると、身の回りには「upgradeの系譜」がかなりある。
……と、ここまではいい。
問題は、自分自身のupgradeである。
デニム、ジーンズ、Gパン
僕は昔からジーンズを履いてきた。
いや。
昔は「Gパン」と呼んでいた。
いつの間にか「ジーンズ」になり、さらに「デニム」という言い方も普通になった。
呼び方までupgradeしている(笑)。
20代、30代の頃なら、EDWINやリーバイス501も普通に履けた。
「501、いけるじゃん」
という時代が、確かにあった。
数年前まではユニクロのマックスサイズ。
そして今は――
サカゼン一択(笑)。
……ここだけは、世の中のように順調なupgradeとはいかない。
モノはupgradeしている。では、僕は?
考えてみれば、僕が子供の頃から身の回りのものはずいぶん変わった。
歯磨き粉のチューブが変わった。
缶の開け方が変わった。
缶詰の開け方が変わった。
レトルト食品の温め方も変わった。
呼び方だって変わった。
そして、自分自身も変わった。
……いや、変わったというより、
変わらざるを得なかったところもある(笑)。
モノは、使う人の「ちょっと面倒」を見つけて、少しずつ改良されてきた。
だったら自分自身も、
「昔はこうだった」
だけで終わらせず、
「今の自分には、何をupgradeできるだろう?」
くらいは考えてみてもいいのかもしれない。
もちろん、デニムのサイズだけは順調にupgradeしてしまったけれど(笑)。
