見出し画像

「また途中で終わった……。」

その時の彼女の落ち込んだ気持ちを言葉にするとすれば、

「今年も一冊も読み切れなかった。」

という言葉になるのだろうと思います。

これは、私どものビジネスセミナーの受講生が、セミナーで発表くださった話です。

彼女は31歳の女性会社員でした。

仕事ができる人になりたい。 もっと話の引き出しを増やしたい。

そう思って、毎月のように本を買っていました。

本屋へ行くと、つい何冊も手に取ってしまいます。

「この本を読めば変われるかもしれない。」

そう思うのです。

しかし、1週間後には本は机の上に置かれたまま。 気づけば、読みかけの本が10冊以上積み上がっていました。


ある日、会社の先輩と昼食を食べているときでした。

その先輩は仕事が早く、話も面白く、お客様からの信頼も厚い人でした。

彼女は思い切って聞きました。

「どうしたら、そんなにたくさん本を読めるんですか。」

すると先輩は笑いました。

「たくさん読んでないよ。」

意外な答えでした。

「毎日、5ページだけ。」

彼女は耳を疑いました。

「5ページだけですか?」

「うん。5ページ読めたら終わり。」

先輩は続けました。

「一冊読み切ろうと思うと、しんどくなる。でも5ページならできる。」


彼女は、自分との違いに気づきました。

自分はいつも、

「今月中に一冊読む。」 「年間50冊読む。」

そんな大きな目標ばかり立てていました。

だから、少し読めない日があるだけで、

「もうダメだ。」

となってしまうのです。

先輩は違いました。 毎日5ページ。 それだけを何年も続けていたのです。

彼女の本当の目標は、本を読むことではありませんでした。 成長したい。 仕事ができる人になりたい。 そのために読書をしたかったのです。

ここで、日本人の選択行動を考えてみましょう。

人は、知識をたくさん話す人を必ずしも信頼しません。 それよりも、 少しずつでも学び続けている人に安心します。

昨日も学んでいた。 今日も学んでいる。 来月もきっと学んでいる。

そう思える人に、人は仕事を任せたくなるのです。

恋愛でも同じです。 急に変わろうとする人より、 少しずつ成長している人のほうが安心できます。

人は、完璧な人を選んでいるのではありません。 続けられる人を選んでいるのです。


教訓は、

『人は安心できる人を選ぶ。』

ということでした。

その後、彼女は読書の目標を全部やめました。

年間何冊という数字も消しました。

代わりに、

「寝る前に2ページだけ読む。」

それだけを決めました。

2ページの日もありました。 10ページの日もありました。

でも、毎日、本を開くことだけは続きました。

1年後。

彼女の机の上から、読みかけの本はなくなっていました。

そして上司から、

「最近、話に深みが出てきたね。」

と言われたそうです。

毎日の積み重ねは、とても小さいものです。 けれど、その小さな積み重ねを続けられる人に、人は安心します。

その安心が、信頼になり、やがて選ばれる理由になっていくのだと思います。

この出来事は、私どものビジネスセミナーにおける、新しい改善ノウハウとして積み重ねられました。


いいなと思ったら応援しよう!