なぜ、都合のいい人になるのか。
「またか……。」
その時の彼女の落ち込んだ気持ちを言葉にするとすれば、
「私は、好きな人の一番になれない。」
という言葉になるのだろうと思います。
これは、私どものビジネスセミナーの受講生が、セミナーで発表くださった話です。
彼女は29歳の女性でした。
好きな男性がいました。
その男性から連絡が来るのは、決まって夜でした。
「今日、少し会えない?」 「相談したいことがある。」
彼女は、どんなに疲れていても会いに行きました。
仕事の予定を変えたこともあります。 友達との約束を断ったこともあります。
相手が困っているなら力になりたい。 そう思っていたのです。
食事代を多めに払ったこともありました。 引っ越しの手伝いもしました。 悩みも何時間も聞きました。
でも、不思議なことがありました。
誕生日は会えない。 休日の予定はいつも曖昧。 将来の話になると、話題を変えられる。
そして、ある日。
彼女は勇気を出して聞きました。
「私たちって、付き合っているのかな?」
すると相手は少し困った顔をして言いました。
「今はそういうの、考えられないんだ。」
頭の中が真っ白になりました。
これだけ尽くしたのに。 これだけ相手を優先したのに。 どうして私は恋人になれないのだろう。
彼女の本当の目標は、ただ付き合うことではありませんでした。 お互いに大切にし合える関係を作りたかったのです。 一緒にいて安心できる人になりたかったのです。
そこで、一緒に原因を探しました。
優しさが足りなかったのでしょうか。 愛情が少なかったのでしょうか。
違いました。
実は彼女は、相手の望むことを全部受け入れていたのです。
嫌われたくなかった。 離れてほしくなかった。
だから、自分の予定も、自分の気持ちも後回しにしていました。
すると相手から見ると、
「いつでも頼れる人」
にはなりました。
でも、
「失いたくない人」
にはなっていなかったのです。
日本人は恋愛でも同じです。 安心できる人を選びます。
ただし、その安心とは、 何をしても受け入れてくれる人、 という意味ではありません。
自分も相手も大切にできる人。 無理をしない人。 自分の生活を持っている人。
そんな人に、安心を感じます。
何でも合わせてくれる人には、感謝はしても、対等な関係を想像しにくいのです。 だから、都合のいい人になってしまうことがあります。
教訓は、
「自分を大切にする人が選ばれる。」
でした。
その後、彼女は変わりました。
急な呼び出しには、
「その日は予定があるよ。」
と言うようになりました。
会いたい時は、自分から希望を伝えるようになりました。 無理をしてまで好かれようとすることをやめました。
すると不思議なことが起きました。
以前の男性とは自然に距離ができました。
その代わり、新しく出会った男性から、
「いつも自分の時間を楽しんでいるよね。」
と言われるようになったのです。
そして、その人とは少しずつ対等な関係を築いていきました。
彼女はその時、ようやく分かりました。
愛されるために、自分を小さくする必要はなかったのだと。
人は、自分を大切にしている人に安心を感じる。 恋愛もまた、同じ原理で動いていたのです。
この出来事は、私どものビジネスセミナーにおける、新しい改善ノウハウとして積み重ねられていきました。
