なぜ、運動が続かないのか。
「今年も続かなかった……。」
その時の彼の落ち込んだ気持ちを言葉にするとすれば、
「自分には根性がない。」
という言葉になるのだろうと思います。
これは、私どものビジネスセミナーの受講生が、セミナーで発表くださった話です。
彼は42歳の自営業の男性でした。
健康診断で医師から言われました。
「このままだと、少し気をつけたほうがいいですね。」
お腹も出てきました。 階段を上るだけで息が切れます。
そこで彼は決意しました。
毎日1時間、運動をしよう。
さっそく高価なスポーツウェアを買いました。 ランニングシューズも新調しました。
最初の日。 5キロ走りました。
2日目。 筋トレも始めました。
3日目。 足が痛くなりました。
4日目。 少し仕事が忙しくなりました。
「今日は休もう。」
5日目。 雨が降りました。
「明日からまた始めよう。」
それから1か月。
シューズは玄関に置かれたままでした。
彼は深く落ち込みました。
「自分は何をやっても続かない。」
そう思っていたのです。
ある日、取引先の社長と食事をする機会がありました。
その社長は60代でしたが、とても元気でした。 肌つやも良く、姿勢も若々しい。
彼は聞きました。
「毎日、何キロくらい走っているんですか。」
すると社長は笑いました。
「走ってないよ。」
意外な答えでした。
「毎朝、5分だけ歩いている。」
彼は驚きました。
「5分だけですか?」
「そう。5分なら、雨でもできるし、忙しくてもできる。」
さらに社長は言いました。
「大事なのは運動量じゃない。毎日やることなんだ。」
彼は言葉を失いました。
自分は、運動を始めるたびに、
「1時間やろう。」 「汗をかくまでやろう。」 「結果を出そう。」
そう考えていました。
だから少しできない日があると、全部やめてしまうのです。
社長は違いました。 毎日5分。 それを10年以上続けていたのです。
彼の本当の目標は、マラソン選手になることではありませんでした。 健康で長く働きたい。 元気な体を取り戻したい。 そのために運動をしたかったのです。
ここで、日本人の選択行動を考えてみましょう。
人は、一時的に頑張る人をあまり信用しません。
3日だけ熱心な人より、 毎日少しずつ続けている人に安心します。
仕事でも同じです。 恋愛でも同じです。
昨日もやっていた。 今日もやっている。 来月もきっと続けている。
そう思える人に、人は信頼を寄せるのです。
人は、強い意志を見て選んでいるのではありません。 続けられる姿を見て選んでいるのです。
教訓は、
『人は安心できる人を選ぶ。』
ということでした。
その後、彼は運動を変えました。
毎日1時間をやめました。
代わりに、
「朝、家の前を5分歩く。」
それだけにしたのです。
雨の日は玄関で足踏みをしました。 忙しい日も5分だけ歩きました。
半年後。
体重が少し減りました。 階段を上っても息が切れなくなりました。
何より、
「自分は続けられる。」
そう思えるようになったのです。
人は、大きな努力を見て安心するのではありません。 小さなことを続ける姿に安心します。
その安心が、信用になり、やがて選ばれる理由になっていくのだと思います。
この出来事は、私どものビジネスセミナーにおける、新しい改善ノウハウとして積み重ねられました。
