なぜ、選ばれる人は不安を増やさないのか。
「まずい……。」
その時の彼の落ち込んだ気持ちを言葉にするとすれば、
「もう信用されないかもしれない。」
という言葉になるのだろうと思います。
これは、私どものビジネスセミナーの受講生が、セミナーで発表くださった話です。
彼は33歳の会社員でした。
ある日、大きな取引先から1本の電話が入りました。
納品予定の商品が、1日遅れることになったのです。
原因は配送会社のトラブルでした。 彼の責任ではありません。
しかし、彼は連絡するのをためらいました。
「もしかしたら今日中に届くかもしれない。」 「まだ確定じゃない。」
そう思って、連絡を先送りにしました。
結局、夕方になっても商品は届きませんでした。
慌てて取引先へ電話を入れると、相手の声が少し冷たくなっていました。
「もっと早く分かっていたんですよね?」
その一言で、彼の心臓がドキッとしました。
翌週。
その会社からの追加注文はありませんでした。
彼は上司から叱られました。
「遅れたことじゃない。先に伝えなかったことだ。」
家に帰っても、その言葉が頭から離れませんでした。
彼の本当の目標は、大きな契約を取ることではありません。 お客様から、
「何かあっても、この人なら大丈夫。」
そう思われる営業マンになることでした。
では、なぜ信頼を失ってしまったのでしょうか。
商品が悪かったのでしょうか。 配送会社のせいでしょうか。
違います。
増やさなくてもいい不安を増やしてしまったからです。
日本人は、完璧な人を選んでいるわけではありません。 失敗しない会社を選んでいるわけでもありません。
何かあったときに、安心できる人を選んでいるのです。
遅れるなら、早く教えてくれる。 問題が起きたら、隠さず伝えてくれる。 分からないことは、分からないと言ってくれる。
そういう人に、人は安心します。
逆に、
何を考えているか分からない。 連絡が遅い。 急に話が変わる。
これらは小さなことのようでいて、大きな不安になります。
そして日本人は、その不安をとても嫌います。
だから、能力の差よりも、 安心できるかどうかで選ぶのです。
教訓は、
『人は安心できる人を選ぶ。』
ということでした。
その後、彼は1つの習慣を決めました。
悪い知らせほど早く伝える。 分からないことほど先に共有する。 小さな違和感でも、その日のうちに連絡する。
すると不思議なことが起きました。
以前よりも、お客様から相談されることが増えたのです。
ある取引先からは、
「何かあっても、先に教えてくれるから安心です。」
と言われました。
彼は、その時ようやく気づいたそうです。
人は、問題が起きない人を信用するのではない。 問題が起きても、不安を増やさない人を信用するのだと。
仕事も、営業も、恋愛も、人間関係も同じです。 最後に選ばれるのは、相手を安心させられる人です。
この出来事は、私どものビジネスセミナーにおける、新しい改善ノウハウとして積み重ねられました。
