なぜ、毎日の積み重ねで差がつくのか。
「そんなに差がつくのか……。」
その時の彼の落ち込んだ気持ちを言葉にするとすれば、
「同じ一年を過ごしたはずなのに。」
という言葉になるのだろうと思います。
これは、私どものビジネスセミナーの受講生が、セミナーで発表くださった話です。
彼は35歳の営業マンでした。
入社して10年。 同期が3人いました。 4人とも同じ支店で働き、同じ商品を扱っていました。
ところが、ある年の人事発表で驚くことが起きました。
同期の一人が支店長に昇進したのです。
売上も高い。 部下からの信頼も厚い。 お客様からの紹介も多い。
彼は悔しくなりました。
「自分だって頑張ってきた。」
そう思っていたからです。
ある日、その同期と食事をする機会がありました。
彼は聞きました。
「何か特別なことをしているのか。」
すると同期は少し考えてから答えました。
「特別なことは何もしてないよ。」
そして笑いながら続けました。
「毎日、15分だけ前の日を振り返っている。」
彼は拍子抜けしました。
たった15分。 それだけでした。
「今日は何がうまくいったか。」 「何が失敗だったか。」 「明日は何を一つ変えるか。」
それをノートに書いているだけだと言うのです。
彼は、自分の一年を思い返しました。
毎日忙しかった。 朝から晩まで走り回っていました。
でも、一日を振り返ったことはほとんどありませんでした。
失敗しても、そのまま。 うまくいっても、そのまま。 昨日と同じことを、今日も続けていただけでした。
同期は違いました。 毎日ほんの少しだけ修正していたのです。
彼の本当の目標は、昇進することでした。 ですが、実際には、
「今日を乗り切る。」
ことだけに精一杯になっていました。
ここで、日本人の選択行動を考えてみましょう。
人は、急に大きく変わった人をあまり信用しません。 昨日まで何もしていなかった人が、突然すごいことを言い始めても、不安になります。
反対に、 毎日少しずつ成長している人には安心します。
「あの人は来年もきっと伸びる。」
そう思えるからです。
仕事でも、恋愛でも、人間関係でも同じです。
信用は、一回の大きな成果ではなく、小さな積み重ねから生まれます。
毎日の差は小さい。 一日ではほとんど分かりません。 でも、一年経つと驚くほど大きな差になります。
教訓は、
『人は安心できる人を選ぶ。』
ということでした。
その後、彼も習慣を変えました。
毎日寝る前に5分だけノートを書くことにしました。
「今日の失敗を一つ。」 「明日変えることを一つ。」
たったそれだけです。
半年後、営業成績が少し上がりました。 1年後には紹介のお客様が増えました。 2年後には後輩を指導する立場になりました。
そして彼は気づきました。
差をつくっていたのは、才能ではありませんでした。 毎日を少しだけ変える習慣だったのです。
人は、大きな一歩を見て信用するのではありません。 小さな一歩を続けている姿に安心するのです。
その安心が、やがて信頼になり、選ばれる理由になっていくのだと思います。
この出来事は、私どものビジネスセミナーにおける、新しい改善ノウハウとして積み重ねられました。
