なぜ、選ばれる人は返事が早いのか。
「終わった……。」
その時の彼の落ち込んだ気持ちを言葉にするとすれば、
「返信しなかっただけで、仕事を失ってしまった。」
という言葉になるのだろうと思います。
これは、私どものビジネスセミナーの受講生が、セミナーで発表くださった話です。
彼は29歳のフリーランスの動画クリエイターでした。
独立して3年目。 少しずつ仕事が増え始め、毎日忙しくなっていました。
ある金曜日の夜、1通のメールが届きました。
「来月のイベント動画の件で、一度お話できませんか。」
送り主は、以前から一緒に仕事をしたいと思っていた会社でした。
彼はメールを見ました。
しかし、その日は疲れていました。
「土日にゆっくり返事をしよう。」
そう思って閉じました。
土曜日は撮影。 日曜日は編集。
そして月曜日。 別の案件の締切に追われ、メールのことをすっかり忘れていました。
火曜日の朝、ようやく返信を送りました。
すると返ってきたのは、短い文章でした。
「今回は別の方にお願いすることになりました。」
彼は、意味が分かりませんでした。
まだ何も提案していません。 見積りも出していません。 断られる理由がありませんでした。
数日後、共通の知人から理由を聞くことができました。
「急ぎの案件だったみたいですよ。」 「返事が早かった人にお願いしたそうです。」
彼はしばらく言葉が出なかったそうです。
本当は、もっと仕事が欲しかった。 紹介だけで仕事が回る状態を作りたかった。 そのために技術を磨いてきました。
しかし、失った理由は技術ではありませんでした。 返事の遅さでした。
では、なぜこんなことが起きるのでしょうか。
日本人は、能力だけで人を選んでいません。
返事の速さを見て、
「この人はちゃんと対応してくれそうだ。」 「困ったときも動いてくれそうだ。」
そんな安心を感じています。
反対に、返事が遅いと、
「忙しそうだな。」 「頼んでも後回しにされるかもしれない。」 「連絡がつかなくなったら困る。」
そんな小さな不安が生まれます。
もちろん、すぐに答えを出せないこともあります。
ですが、
「確認してご連絡します。」 「明日の夕方までに返事します。」
たった1行でも返事があると、人は安心します。
つまり、返事の速さとは、仕事の速さではありません。 相手の不安を増やさないための行動なのです。
教訓は、
『人は安心できる人を選ぶ。』
ということでした。
その後、彼は1つだけ習慣を変えました。
内容が決まっていなくても、まず返事をする。 すぐに答えが出なくても、受け取ったことだけは伝える。
すると、不思議なことが起きました。
以前より紹介が増え始めたのです。
あるお客様から、
「返事が早いので、安心してお願いできます。」
と言われました。
彼は、その時ようやく気づいたそうです。
人は、作品の良さだけで選ばれているのではない。 この人なら大丈夫だと思える安心感で選ばれているのだと。
仕事も、営業も、採用も、恋愛も、人間関係も同じです。 最後に選ばれる人は、一番すごい人ではありません。 相手の不安を増やさない人なのです。
この出来事は、私どものビジネスセミナーにおける、新しい改善ノウハウとして積み重ねられました。
