なぜ、改善する人は強いのか。
「もう無理かもしれない……。」
その時の彼の落ち込んだ気持ちを言葉にするとすれば、
「何度やっても結果が変わらない。」
という言葉になるのだろうと思います。
これは、私どものビジネスセミナーの受講生が、セミナーで発表くださった話です。
彼は42歳の小さな印刷会社の経営者でした。
10年前から同じ商品を売り続けていました。 昔はよく売れました。
しかし最近は注文が減り続けています。
ホームページを新しくしました。 広告も出しました。 SNSも始めました。
それでも売上は戻りません。
ある日、古くからの取引先を訪ねたときのことです。
社長が、ぽつりと言いました。
「御社の商品、悪くないんですよ。でも、10年前と同じなんです。」
その言葉が胸に刺さりました。
帰りの車の中で、彼は何も話せませんでした。
自分は頑張ってきた。 誰よりも働いてきた。 それなのに、なぜうまくいかないのか。
数日後、彼はセミナーで隣に座った若い経営者と話をしました。
その人の会社は、毎年少しずつ売上を伸ばしていました。
「何か特別なことをしているんですか?」
そう聞くと、若い経営者は笑いながら答えました。
「特別なことはしていません。毎月、1つだけ変えています。」
商品説明を1行変える。 写真を1枚変える。 お客様への質問を1つ変える。
たったそれだけ。 でも、毎月必ず続けているというのです。
彼は驚きました。
自分は大きな改革ばかり考えていました。
新商品を作る。 広告を増やす。 一気に変える。
しかし、小さな改善を積み重ねたことはありませんでした。
彼の本当の目標は、会社を大きくすることではありません。 10年後もお客様から必要とされる会社であり続けることでした。
ここで、日本人の選択行動を考えてみましょう。
人は、今すごい会社を選んでいるようで、実は少し違います。 これからも良くなっていきそうな会社に安心するのです。
昨日と同じことを繰り返す人より、 少しずつでも良くしようとしている人に信頼を感じます。
改善する人が強いのは、能力が高いからではありません。 変化に合わせて自分を変えられるからです。
失敗しても、次は少し変える。 うまくいっても、さらに少し良くする。
その積み重ねが、周りに安心感を生みます。 そして、その安心感が、人を集め、仕事を集めていくのです。
教訓は、
『人は安心できる人を選ぶ。』
ということでした。
その後、彼は毎月1つだけ改善することを決めました。
商品の説明文を変える。 お客様への連絡方法を変える。 見積書の書き方を変える。
大きな改革はやめました。
1年後。
売上は急に伸びたわけではありません。 しかし、減り続けていたお客様が戻り始めました。 そして新しい紹介も増えました。
あるお客様から、こんな言葉をもらったそうです。
「御社って、来るたびに少しずつ良くなっていますよね。」
彼は、その言葉が何よりうれしかったと言います。
人は完璧だから選ばれるのではありません。 昨日より少しでも良くなろうとしている姿に安心し、その安心が信頼へ変わっていくのです。
この出来事は、私どものビジネスセミナーにおける、新しい改善ノウハウとして積み重ねられました。
