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なぜ卸と仲卸の二段階あるのか? 書籍「魚仲卸を天職にした男」を読んで考えた、漁業や水産業の未来

取材の打合せ中に教えてもらった書籍「魚仲卸を天職にした男: 京都市中央卸売市場で66年」(ふたば書房出版局)を読み終えた。


魚仲卸を天職にした男: 京都市中央卸売市場で66年

一般人が入れない京都市中央卸売市場の空気を肌で感じ取れるアツい内容となっている。帯のコピー「生まれ変わっても仲卸になる」もアツい。

文体は実直な著者の一人称で語られるからグイグイと読み進み、ぜんぜん違う分野だけど夏目漱石先生の「坊ちゃん」のようなリズムで気持ちいい。ちょっとさわりだけ読もうと思ったら半日で読了した。ぜんぜん業界を知らなくても面白い。

著者・池本周三さん

著者は市場で仲卸組合の理事長をされていた故人。子ども時代から理事長として活動する頃までの自伝になっている。ご自身にピンチが訪れたときの取り組みがどれもドラマチックでNHK朝の連続テレビ小説になりそうな話だった。

特に昭和48年の水銀汚染、続くPCB(ポリ塩化ビフェニル)汚染問題の風評被害に立ち向かったあたり、ストライキの先頭に立った話など興味深い内容だった。

僕の専門である情報発信や広報の視点で本書を読むと、すごいことがさらっと143頁に書いてあった。

選挙や何かの祝賀会があると聞けば鯛をもってかけつけるので「鯛のおっさん」で通っているらしい。次のページは首長と報道写真の中におさまって写真が紹介されている。マスコミは映え写真がほしいので、大きい鯛をもってめでたい顔をしている人を撮りたがる。ファインダー内に自分をいれてちゃんとおさまっている。これは簡単なようでしんどい。しんどいけれど少ない力で勝手に大きく見せることができる。

世界的に有名な建築家レム・コールハースを追いかけるドキュメント「行動主義レム・コールハースドキュメント」の言葉を借りると、これはメディアパラサイト作戦だ。メディアを利用して価値を高く見せる。行動主義者には注目が集まる。その点もドラマにしてほしい要素のひとつ。

勉強会・京都水産クラブ

昭和42年に若手有志の勉強会をされていた。業界のスキルの底上げになるし、なによりコミュニティが強固になるのですごいことをされていると思うけれどわりとさらっと書いてある。

なぜ中央市場には卸と仲卸の二段階あるのか?

書籍「魚仲卸を天職にした男」をだいぶ読み進んだ後半の231ページで気になっていたことが記載されていた。忘れそうなのでここにメモしておく。中央市場のホームページにあるPDFをもとに図にするとこうなる。

20年くらい前に大阪中央市場でセリをする側の卸売業者の方を取材したけれど、上記のような分類を自分は理解していたかどうかはあやしい。

ものを売り買いする仕事ととらえると見誤る

「なぜ卸と仲卸の二段階あるのか?」が気になっていた。著者によれば、

ものを売り買いする仕事ととらえると見誤る。卸と仲卸も民間企業だけど、公から許可を受けた企業であり、その目的は流通にある。より多く、より高い値段で販売することではない。卸は出荷者の味方、仲卸は消費者の味方。市場はその両者が相撲をとるための土俵。つまり公正さを守るために、出荷者と小売業者(消費者)の代理人として機能する必要がある。これが理解されにくいので、市場ではPRに力を入れている。

「魚仲卸を天職にした男: 京都市中央卸売市場で66年」231頁あたり

と記載されている。最近操作方法を覚えたGoogleのAIであるGeminiにも聞いてみた。

​​中央市場に卸売と仲卸の二段階があるのは、主に以下の理由からです。

**1. 大量集荷と効率的な分荷:**
* **卸売業者:** 全国各地や海外から大量の生鮮食品を集荷する役割を担っています。これにより、小売業者や飲食店は、自ら各地の生産者を探し、少量ずつ集める手間を省くことができます。
* **仲卸業者:** 卸売業者から大量に仕入れた商品を、小売店や飲食店などのニーズに合わせて**小分け**にしたり、**詰め合わせ**たり、**加工**したりする役割を担います。これにより、多様な規模やニーズを持つ買い手に対して、必要な量を必要な形で効率的に供給できます。

**2. 価格形成の円滑化と専門性の発揮:**
* **卸売業者:** 集荷された多様な商品を、セリや入札といった公開の場で販売することで、需要と供給に応じた**公正な価格形成**を促します。
* **仲卸業者:** 各品目の**目利き**としての専門知識や、市場の**相場**に関する情報を持っています。これにより、商品の価値を見極め、適正な価格で仕入れることができます。また、小売業者や飲食店のニーズを把握しているため、的確な情報提供やアドバイスを行うことができます。

**3. リスク分散と安定供給:**
* 卸売業者と仲卸業者がそれぞれ役割を分担することで、市場全体の**リスクを分散**できます。例えば、卸売業者は集荷のリスクを、仲卸業者は販売のリスクを主に負います。
* 二段階の流通を経ることで、産地からの**安定的な供給**と、消費者への**安定的な提供**が確保されやすくなります。

**4. 金融・決済機能の効率化:**
* 卸売業者が多数の生産者との取引を一括して行うことで、**決済業務**が効率化されます。
* 仲卸業者が多数の小売業者や飲食店との取引をまとめることで、さらに決済業務が効率化されます。
このように、卸売と仲卸の二段階を経ることで、大量の生鮮食品を効率的かつ安定的に、そして適正な価格で消費者に届ける仕組みが構築されているのです。それぞれの段階で専門的な機能を発揮することで、市場全体の効率性と機能性が高められています。

時代によって仕組みは変化している

こちらの方のnoteにも似たことが書いてあった。

メモ

中央卸売市場ができた当初は小さな小売店を相手にすることが想定されており、仲卸業者は買受人への分荷公正な評価が主たる役割だったので透明性の高いセリ取引の原則や、流通を乱すような仲卸業者による卸売業者以外からの仕入れは禁止とされていましたが、事前に価格や数量を決める契約販売での取引を行うスーパーでは、取引時に価格が決まるセリ取引や、入荷先・量を制限されてしまう卸売業者以外からの仕入れの禁止は時代遅れとなり改正されてきました。

メモ


漁業や水産業の未来

上記を読んでから漁業や水産業の未来について語られている記事をいくつか読んでみた。以下は脈略のないメモたち。

漁師ファースト

メモ「漁業って昔から残っている商習慣の元で行われていて、外部の人にとっては漁業のどんな情報を持っていればそこでどんな事業が成り立つのかわかりづらいんですよね。」

メモ「昔は、漁業って命の危険などそれなりにリスクがあるけど、その分儲かる仕事だったんです。しかし、今は魚の相場が下がっているために、リスクもあるし儲からないから誰もやりたがらないという状況に陥っています。」

約30年で漁獲量が3分の1になり、一方で世界全体の漁獲量は増加

以下の記事によれば約30年で漁獲量が3分の1になり、一方で世界全体の漁獲量は増加しているらしい。


農林水産省 物流2024年問題と卸売市場の今後について

農林水産省 物流2024年問題と卸売市場の今度についての4(1) 近年の環境変化を政策、経済、社会、技術の視点で整理を必要な部分だけ抽出。

政策
・卸売市場法と食品流通構造改善促進法の改正

経済
・卸売市場経由率の低下、契約取引の増加、買付集荷の増加、輸出機会の増大
・ドライバー不足、人手不足

社会
・消費者の人口動態と消費の変化

技術
・卸売市場における情報通信技術の遅れと新技術の登場
・サプライチェーンにおける情報の断絶問題

ほかにも気になった情報

大阪府中央卸売市場の将来のあり方検討について/大阪府

全国5万店あった鮮魚専門店はもう1万店を切った 激変する日本の水産流通、街から消える「魚屋」 | 最新の週刊東洋経済 | 東洋経済オンライン
・産地と消費者の2大市場がある
・鮮魚店が客に魚の知識を伝えていた

ここでまとめに入るつもりだったけれど、以下の記念誌を見つけたので追記。

大阪中央卸売市場 70周年記念誌

大阪中央卸売市場 70周年記念誌(平成13年・2001年)156-170頁「これからの水産物流通と卸売市場の未来」の気になったキーワードをメモしておく。

200海里問題

NHKの当時の放送「200海里 漁業日本を直撃|ニュース|NHKアーカイブス」が映像で視聴できた。

例の200海里問題以降、海洋法ができてから、海洋漁業がどんどん200海里から締め出されて、それが輸入に切り替わったという状態です。

後継者不足

魚価の低迷、漁獲高の減少、

輸入増加

ある段階まで海外で加工されてくると、卸売市場を通らないというのか、そのまま直で大手スーパーなどに入ってしまうことが考えられます。輸入が増えてくることは、中央卸売市場にとっては、今までの営業態度でいくと危ないのかなという気がするのですが、この点はどう思われますか?

おっしゃる通りです。〜いろんなものを人件費の安い東南アジアや中国へもっていってHACCP(ハサップ)ISOをクリアしたような工場で政策されているものを、中国で私もみてきました。

納品の形態

昔は頭付き鱗付きが大半、今は逆に8割が切り身やフィレ→すぐに食べられるように。

市場外流通対策と低温管理に課題

生の鮮魚は多品種でたくさんの産地から入荷するので、どうしても中央卸売市場を通さないと非効率です。一方、加工品、冷凍物、いわゆる塩干物(えんかぶつ)も含めて、これは市場外流通へどんどんウエイトが高まっていくのではないでしょうか。その理由としては、大阪の本場で、これから一番のネックになるかなと思うのは温度管理だと思います。

安全

大手量販店に衛生管理室というのがありまして、そこからチェックは年に何度か来られます。そしてホテルからも時々、料理長以下、ある日突然そういうチェックする方を連れていっしょにこられたりですね。

メモ/検査は自治体の保健局の職員だけがすると思っていた

法改正と卸おより仲卸の統廃合

昭和46年に中央卸売市場だけではなくて、地方卸売市場も対象にした、より広い法律をつくるという意味で、「卸売市場法」に改正された。

店を譲渡して辞めていく。あるいは、将来辞めたいというような方は増えてきています。

まとめ

日本全体で見るならば、魚も野菜も総じて卸売業者で年商が200億円を切ったところは軒並み赤字経営になって危ないと言われています。

だから通常は10人以上の経営にするのが望ましい。統廃合もそういう考え方に沿ったもの。

現在の第七次卸売市場整備基本方針からいくと、やがては卸売業者と仲卸業者の垣根もとれていく。仲卸業者が卸をしても構わない、卸が仲卸をしても構わない、そういう場面になっていくのではないでしょうか。

終わりに

漁業や水産業の未来については奥深く、知らないことが多すぎるので調べ物が終わらないです。いま書籍「魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養」(クロスメディア・パブリッシング)を読み始めていて、これを読み終えたらまた見え方が変わるかもしれません。


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