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【ショートショート】 ときに水はあふれる


君は水色のような人だね。
彼から初めてそう言われた時、褒め言葉だと思った。

水色のように透明感があるってこと。
河の流れのように静かってこと。
海のように反射で色を変化できるってこと。


君は水のように味気ない人だ。
それからしばらく経ったある日、そう言われた。

水色、好きじゃなかった?

そう聞いた。
聞かずにはいられなかった。

君には自分の意思や好みってものがない。
なんでも賛成して、うなずいてくれる。
でもどこか物足りないよ。
水には色がないように、太陽や空がないと君は色もなく、コップがないと形すら作れないんだ。


ずいぶんな言いようではないかと思った。
仕事を変わってからあなたはストレスでいつも眉間に皺をよせていた。
違う考え方もあるんじゃない? と言えば睨むような視線。
聞き役に徹してあげていただけだったのに。

許容は能力だ。
私は水なんかじゃない。
本当は、水をいれることができる容器だった。
少しずつ大きくした容器に、あなたは気ままに水をいれたり出したりした。

気づいていないわけじゃない。
楽しんでいたわけじゃない。
水色のよさを分かってくれない人に、我慢していただけ。


さようなら。

突然の別れにあなたは慌てた顔をしたわね。

そんなつもりで言ったんじゃない。
今後少し気をつけてくれればいいんだ。

なにを?
私が気をつけなきゃいけないことなんて、なにもない。

水色は、色がないんじゃない。
変化が出来るだけなの。
それだけじゃない。
時間をかければ岩の形を変えることができるくらい、本当は強いの。

そんなことが分からない人に、私はもったいない。

じゃあね。

眼を見開く彼に、私は背を向けた。

<了>


本文669文字


最後まで読んでいただいてありがとうございました!

シロクマ文芸部さんの企画に参加させていただきました。
お題は「水色は」でした。

いつも楽しい企画とわくわくするお題提供をありがとうございます!

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