【ショートショート】 お題 アイデア
『タイトル』 アイデアがいくら良くても
「あの二人、本当にいつか結婚するかも」
階下のリビングルームからママの声が聞こえた。
私は宿題をしていた手を止めて、思わずため息をついた。
勉強の邪魔をしないで欲しい。
高校生にもなると忙しいんだから。
「小陽ちゃんなら大歓迎。あんないい子滅多にいないもの」
今度は陽大のママの柔らかい声。
スタイル抜群の美人。
母親似の陽大がイケメンで、女子たちに大人気なのも納得だ。
もっとも私のママだって負けていない。
うちのママと陽大のママが並ぶと雑誌の撮影しているみたい、って近所の人が噂しているのを聞いたことがある。
問題は、私がパパ似なこと。
優しいパパだけど、誰が見たってイケメンじゃない。
学生時代からの親友だったママたちが、同時期に結婚してすぐ妊娠。
それぞれ男の子と女の子を授かって、名前まで似たようなのつけた。
—— 陽大と小陽がいつか結婚したら素敵じゃない?
どちらが言いだしたのかは、知らない。
ママたちの、善意によるただのアイデアだ。
でも善意って怖い。
だって善意の行為する人って、自分を疑わないもの。
陽大には好きな人がいる。
相手は親友の悠馬くん。
陽大と悠馬くんはうちの高校の二大イケメンだ。
同じ時代に二人が生きていることが奇跡だって女子たちは騒いでる。
誰も陽大の気持ちには気づいていない。
陽大も気づかれたくないって思ってる。
自分の気持ちを隠すため、ママたちのアイデアを使ってもいいか、って陽大に聞かれた私は嫌だって言えなかった。
子どもの頃からずっと好きだった陽大のお願いだ。
断れるはずがない。
私は陽大の「いいなずけ」として今やすっかり有名人。
その噂を聞いたママたちが、以前よりも盛り上がってしまったのも無理はない。
善意のアイデアにわたしは乗っかった。
少しだけの悪意を心の底に隠して。
「いいなずけ」の座を誰にもあげたくなかったし、悠馬くんへの想いに悩んで涙を流す陽大の姿を他の誰にも見せたくなかった。
「あの子たち本当にお似合いだよね!」
ママの声が聞こえる。
私の気持ちも知らないで。
ママのばか。
この想いは、アイデアで始まってアイデアだけで終わる恋なのに。
もう何も聞きたくない。
私はヘッドホンを耳に入れて大きな音で音楽をかけた。
<了>
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最後まで読んで下さってありがとうございました!
片想い文芸部さん企画参加作品です。
お題は「アイデア」。
片想い文芸部さん、素敵な企画ありがとうございます!
