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大田神社の紫のカキツバタ

上賀茂神社から大田神社までの道のり、私の好きな散歩コースのひとつです。

上賀茂神社を出て東へ行くと、神社境内のならの小川に端を発する清明な明神川が流れ、その川に沿って上賀茂伝統的建造物群保存地区に選定されている「社家町」が続きます。

明神川の水の流れは清く、上賀茂神社から大田神社に向かう途中、歴史的な街並みを眺めながらの朝の散歩は清々しい気持ちになります。

大田神社の起源は上賀茂神社よりもさらに古く上賀茂では最古の神社と言われています。大田神社は上賀茂神社の東約500mのところに位置しており、大田神社からさらに東に進むと国の天然記念物に指定された「深泥池生物群集」が生存する深泥池があります。また、神社背後の小山には、「大田の小径」と言う散策路が続いていて、展望所まで行くと京都市内を眺めることができます。

上賀茂神社からの道を辿り、大田神社に着いて参道からすぐ右手にある大田ノ沢に向かうと、カキツバタの群生が目に入ります。

このカキツバタの自生している大田ノ沢は、古代の京都盆地が湖であった頃の面影を残すものとして、昭和14年に国の天然記念物に指定されています。また、日本三大カキツバタ自生地にも数えられています。私は5月中旬から下旬にかけての雅な色を放つ大田ノ沢の紫のカキツバタがお気に入りです。

平安時代から名所とされ、尾形光琳の『燕子花(かきつばた)図』のモチーフになったとの言い伝えもあるほどです。

平安時代からずっと続いている原色のかきつばたの彩は、思わず息をのむほどの色彩です。その美しさは『小倉百人一首』を撰じた、藤原定家の父の藤原俊成の古歌にも詠まれています。

「神山や 大田の沢の かきつばた ふかきたのみは 色にみゆらむ」

歌の意味は「神山(上賀茂神社の北に見える賀茂別雷命の降臨地と言われている山)の近くにある大田神社のかきつばたに、深くお願いする色事は、かきつばたの色のように美しいのだろうか。」です。

かきつばたの花言葉は、幸運が必ず来る、幸せはあなたのもの、贈り物、音信などです。良い言葉が並んでいます。

また、かきつばたにまつわる言葉として、「いずれあやめかかきつばた」という言葉もあります。意味は「どちらも優れていて優劣をつけがたく選択に迷う」ことです。あやめとかきつばたは非常に似ており区別が難しいですが、あやめは、花弁の付け根が黄色で紫色の網目模様になっているのに対して、かきつばたは、花弁の付け根に網目はなく、白い目型模様があるのが特徴です。

京都のすばらしさは、歴史だけでなく環境も大切にしているところだと思います。大田ノ沢はその代表例と言ってもいいでしょう。

近年は初夏になると二条大橋近辺の禊川でホタルを見ることができます。市内中心部でありながら、夜の闇の中に幻想的に流れる光の糸が見る人を魅了しています。

このように街中や、そのすぐ近くに豊かな自然が残っていることは、京都の子供たちにとて貴重な財産だと思います。

自然に触れ、感じることで、豊かな感性が育まれる。大田ノ沢のカキツバタを見るたびに、子供たちのためにも、自然を守っていくのが我々大人の役割なんだろうと考えます。

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