PCI前の患者でSASを軽くみたら大変なことに!!!
一過性のSpO₂低下でも「すぐ戻るから大丈夫」とは言えない理由
PCI前の患者さんで、SASのためにSpO₂が一時的に70%台まで下がることがあります。
でも、少しするとまた上がる。
そうなると、つい「戻っているから様子を見ようと考えたくなることがあります。
けれど、PCI前の患者さんでは、この『一過性だから大丈夫。』という見方は危ないことがあります。
なぜなら、その患者さん、低酸素状態にある可能性が高いからです。
冠動脈が狭くなっていたり詰まりかけていたりして、心筋に届く血液が足りていない。
そんな中でSpO₂まで下がると、もともと足りない酸素供給がさらに減ることになります。
心筋は、冠動脈から酸素をもらって動いています。
PCI前というのは、その“心臓の栄養血管”が十分に働けていない状態です。
つまり、もともと酸素が届きにくい心筋に対して、SASによる低酸素が重なると、胸痛や虚血の悪化、心筋梗塞の引き金になりうるということです。OSAでは反復する低酸素が冠動脈疾患や心筋虚血と関連し、PCI後の有害心イベントとも関係することが報告されています。
ここで大事なのは、
「SpO₂が戻った」=「心筋への負担がなかった」ではない
ということです。
一時的でも70%台まで落ちるということは、その間、体全体に届く酸素が減っていたということです。
しかもSASでは、この低酸素が何度も繰り返されやすく、交感神経の活性化、血圧変動、心拍数変動も起こりやすくなります。
それが虚血心筋にはさらに負担になります。
だからPCI前のSAS患者さんで看護師が大事にしたいのは、
「無呼吸があるか」だけではなく、いかに酸素化を保って、心筋に余計な負担をかけないか
という視点です。
まず持ちたい考え方
PCI前の看護では、
酸素化を保つこと=虚血心筋への酸素供給を守ること
です。
SpO₂低下がある時に、「また下がってるけど、すぐ戻るし…」で終わらせるのではなく、
その一回一回の低酸素が、虚血状態の心筋には重いかもしれない
と考えることが大切です。
特に注意したいのは、
眠るとSpO₂が落ちる
いびきが強い
無呼吸がある
仰向けで悪化する
うとうとすると急に下がる
肥満や心不全を合併している
こういう患者さんです。
SASやOSAがある患者は、鎮静や仰臥位で上気道閉塞や低酸素を起こしやすく、処置前後の呼吸リスクが高いとされています。
では、どこを観察するのか
1.SpO₂の数字だけで終わらない
まず見るのは当然SpO₂です。
でも、見るべきなのは単発の値だけではありません。
いつ下がるのか
どのくらいまで下がるのか
何秒くらい続くのか
声かけや体位変換で戻るのか
眠気と関係しているのか
こうした下がり方のパターンを見ることが大事です。
「一時的に70%まで低下、覚醒で改善」のような情報は、とても重要です。
SpO₂が戻ることより、下がる事実があることを軽く見ないのがポイントです。
2.胸痛や心電図変化がないか
虚血心筋に低酸素が重なると、胸痛や心筋虚血の悪化につながる可能性があります。
だから、SASによる低酸素がある患者さんでは、
胸痛の有無
胸部圧迫感
冷汗
顔色不良
ST変化
脈拍変動
不整脈
をいつも以上に気にして見ます。
PCI前の患者さんでは、症状が強く出ないサイレント虚血もあるため、モニターや全身状態も重要です。
3.呼吸状態と眠気
SAS患者さんでは、SpO₂が下がる前後に
いびき
無呼吸
努力呼吸
呼吸停止後の大きな呼吸
うとうとすると下がる
といった特徴が見られます。
だから、単に「眠っている」ではなく、眠ると呼吸がどう変わるかを見ることが大事です。
とくに夜間だけでなく、日中のうたた寝でも起こるなら要注意です。
4.無理をさせない
ここは看護としてすごく大事です。
虚血状態の心筋では、酸素需要を増やすことも避けたいです。
つまり、SASで酸素供給が落ちやすいなら、こちらは余計な酸素消費を増やさないようにしたい。
たとえば
不必要な歩行や移動を減らす
排泄や清潔ケアを無理のない範囲で行う
苦しさがある時に頑張らせすぎない
不安や疼痛を放置しない
体位を工夫して呼吸しやすくする
こうしたことです。
「今は心筋に酸素を届けたい時期だから、酸素化を落とさない・消費を増やしすぎない」という考え方が大切です。虚血は酸素供給と需要のアンバランスで起こるので、需要増加も避けたい視点です。
若手看護師に伝えたいこと
PCI前のSAS患者さんで、SpO₂が70%まで下がってもすぐ戻る。
その時に大事なのは、
「戻ったから大丈夫」ではなく、「虚血心筋にまた低酸素がかかったかもしれない」と考えられることです。
この視点があると、看護は変わります。
低酸素を軽く見ない
眠気や体位との関係を見る
胸痛や心電図変化につなげて考える
無理をさせない
早めに共有する
ここまでつながるようになります。
まとめ
PCI前の患者さんでSASがある時は、
SpO₂低下そのものが、虚血状態の心筋への酸素供給をさらに減らす可能性がある
と考えることが大切です。
だから看護では、
酸素化を保つこと
胸痛や虚血悪化を見逃さないこと
無理をさせず、酸素需要を増やしすぎないこと
が大事になります。
PCI前のSASは、ただの「寝たらSpO₂が下がる人」ではありません。
心筋に酸素を届けたい大事な時期に、酸素供給を不安定にしやすい患者さんとして見ていく。
その視点を持てると、観察もケアも深くなると思います。
