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「成功」からの卒業

ずっと「成功者」になりたかった。

かっこいい実業家。自分でデザインした大理石の床の家に住む。


どうしたら金持ちになるんだろう。今すぐに。
YouTubeの動画をみあさる。


ずっとずっと意味もよくわかってない「成功」を夢想していた。


自分のいちばん欲しい物がわからず、

だけどなにかが猛烈に欲しくて

いつもジタバタジタバタ思考が忙しい。



あるとき突然、目の前の娘ふたりを見たときに気がついた。


雷に打たれたみたいに。
血の気がサーっと引いた。


あれ。思い出した。


もう"これ以上ほしいものない毎日"の中にいたわ。


今すぐ死んでも後悔ないくらいの幸せの中にいた。


娘との何気ない時間。
なにげない会話。3人でドライブする時間。
ケンカするとき。
変なダンスを一生懸命見せてくる。

小さなふたりがいっちょまえにコソコソなにかを話し合ったりしている。

当たり前すぎた日常。

待って待って。


あたしなにを探してたんだろう。


大馬鹿者だった。


その瞬間、
人生で一番くらいに泣いた。

悲しみが痛い。愛が痛い。


ごめんごめんごめんごめんごめん。


ごめん。


ごめん。なにも見えてなかった。
ほんとにごめん。


この子たちが大人になったら、いまこの瞬間に戻りたくて悲しくて痛くて泣くんだろうな。もう戻ってこない時間を思い出して泣いてるんだろうな。と思う


大人になってから何度も思った。子供のころに戻ってお母さんとギューってただただ抱きついていたい。

なにも心配のない、この世でいちばんの天国。

何度も泣いた。この歳ではもうできない。変でしょ。やり方もわからない。


子供のころ
「おかあちゃんの、せかいでいちばん大事な子」
って言って毎晩寝る前にギューって抱きしめる母。ずっと離さなかった。

「やめて」って言っても離さなかった。


声色も話し方もその時みたいに思い出せる。


当たり前だけどもう何年も母からあの声を聞いてない。


私が子供を抱きしめるとき、もう戻ってこない時間も一緒に抱きしめてる。


母も同じように大人になって子供を持って泣いたのかなぁ。


こうやって愛はつづいていくのか。

なにも語らず、ただただそれを感じてきたのか、人類みんな。

なんにもわかってなかったな、自分は。


愛するって痛い。悲しい。

大事すぎるのってつらい。


なんにも変わってほしくない。

ぜんぶずっとそのままでいてほしい。


人生でいちばん大切なものにドカーンと気がついた瞬間、フッと焦りや不安が消失した。


もうこれ以上のない幸せの中にいる。

なんでもいいや。もう明日死んでもいいくらい幸せだった。


それに気がついた私はやっと「成功」っていう幻想から卒業することができた。


夢想していた大金持ちの自分よりもずっと幸せだった。



これに数ヶ月前に気がつき、

いま、依然わたしは金持ちや成功を夢想している。

大金持ちになり大理石の床に住みたい。

カネはある方がいいに決まってる。




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