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用意された対象ばかり相手にしていては良いものを生み出せない。三菱トレディア(1982年)

 企画展や自動車メーカーの出展だけでなく、今年の「オートモビルカウンシル」はショップの展示でも眼を見張るクルマがありました。

 そのうちの1台が、埼玉の「DUPRO」のブースに並べられていた三菱トレディア(1982年)です。価格180万円。

 いやぁ~、懐かしい。

 とは言っても、これに乗っていた人を取材したこともなければ、街で走っている姿を最後に見たのがいつだったか思い出せないし、そもそも意識したこともないクルマでした。だから、“懐かしい”という感情は正確ではありません。でも、ブースに歩いて近付いていく途中で、「あれはトレディアじゃないのか!?」と気持ちが高ぶったわけです。

 なぜ、トレディアだとすぐに思い出せたのかというと、三菱のクルマにしては意外にあっさりとクリーンな3ボックススタイルをしているからでしょう。フロントフェイスも初代ミラージュを思い出させるものですし、側面も潔い。

 店の人から勧められて運転席に座ると、車内もスッキリです。高級車ではないのに、シート、ダッシュボードやドアパネル、各部の樹脂パーツなどがすべてボディカラーとコーディネイトして濃淡のブラウン系でまとめられているのはお洒落です。最近のクルマは何も考えずに黒一色ですからね。昔の余裕でしょうか。


 シフトレバーが2本生えています。トレディアや初代ミラージュなど、この頃の三菱のクルマは乗用車としては珍しい副変速機を備えていました。

「クラッチを踏んで、手前のレバーを奥に押してみてください」

  メーターパネル中央左に“POWER”と表示されました。

「ローレンジでの1速になるので、発進加速が鋭くなります」

 ローレンジがPOWERで、ハイレンジがECONOMY。もう一本のシフトレバーが4速の主変速機のシフトレバーなので、4x2で8速も使えるという寸法です。三菱では、これを「SUPER SHIFT」と名付けました。

 おそらく、発進にはローレンジで1速を使い、その後は副変速機をECONOMYつまりハイレンジ側に戻して、2-3-4と切り替えていくのだと思います。パフォーマンスと燃費を両立できると目論んだのです。副変速機じたいには三菱はジープで長年の経験を積んでいまするから馴染みがあったのでしょう。しかし、その後は聞かれなくなってしまいました。

 あいにくと、僕はトレディアもSUPER SHIFT付きのクルマも運転したことがないのですよ。それでも、トレディアの存在を忘れないでいて、引き寄せられてしまいました。

 それにしても、たった4万9000kmしか走っていない43年前のクルマを良く見付けてきたものです。

「見付ける魔法があるわけではありません。強いて言えば、“つねにアンテナを張っている”ということでしょうか」

 その感覚は僕も良くわかります。「10年10万kmストーリー」などの取材相手を探すためのアンテナはいつも張っているつもりだからです。用意された対象ばかりを相手にしていては良いものを生み出せないのは分野が違っても変わらないようですね。


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