サンダーストーム 〜「虹伝説」の思い出:高中正義
▼PROLOGUE - 高中正義
雷とともに夏本番の季節に入りました。
まだまだ暑い夏が続きますね。熱中症には気をつけてください。
今回も続いて「虹」に関係する音楽で行きたいと思います。
さて、1970年代後半、家庭用ビデオが普及し始めました。
私の父親は新しもの好きだったので、いち早くビデオデッキを購入しました。当時ビデオテープの規格には「VHS」と「ベータ」の2つがあり、ソニー好きだった父親はソニー規格の「ベータ」を選択。私もテレビの音楽番組を録画する際によく使わせていただきました。
この頃(1980年以降)から音楽は「音」だけでなく「映像と合わせて楽しむ」時代に入り、ミュージシャンも新曲リリースに合わせてミュージック・ビデオ(MV)を作成するようになりました。今に続くMTV時代の幕開けです!
▼ONCE UPON A SONG - 高中正義
また、1980年前後に「動画が観られるレコード」として登場したのがレーザーディスクです。レーザーディスクはLPレコードとほぼ同じ直径30cmのアナログ映像用光ディスクで、当時の技術としては圧倒的な高画質を誇りました。しかし録画機能がなく、再生中にディスクを裏返す(AB面仕様)必要があったため、よりコンパクトで機能的なDVDの普及(1990年代後半)とともに姿を消していくことになります。
流行した期間はほんの10年強ですが、渋谷や六本木のバーで最新のジュークボックスとして設置しているお店がありました。映像付きのレーザーディスクカラオケのラインナップも多く、当時の最新アイテムとして、カラオケスナックなどにも設置されていました。私が行っていた足立区竹ノ塚のスナックにも置いてあり、ママさんが凄く自慢していたことを覚えています。
この短い期間におよそ数万タイトル(諸説ありますが3〜5万タイトルとも言われています)のソフトが販売され、映画、音楽、カラオケなど幅広いジャンルに対応していました。
▼SEVEN GOBLINS - 高中正義
■「サンダーストーム」と石丸電気の思い出
レーザーディスクで思い出すのが、秋葉原にあった「石丸電気 レコード館」の店頭です。そこでは高中正義さんの「虹伝説」のレーザーディスクのライヴ映像がいつも流れていました。私たちバンドのメンバーは学校帰りに立ち寄り、ほぼ毎日のようにそのライヴ映像を観に行っていました。お店の方も「また来たよ」という視線を送ってきていたので、相当嫌がられていたと思います。
高中さんの曲自体は以前から知っていて、中学生の頃には「BLUE LAGOON」や「READY TO FLY」などを一人アコースティック・ギターでコピーしていました。高校で初めてバンドを組み、最初に演奏したインスト曲が高中さんの楽曲——アルバム『虹伝説』(1981年)に収録されている「サンダーストーム」でした。
その後も『虹伝説』から数曲コピーしたり、他の曲もバンドで演奏したりしましたが、「サンダーストーム」は初めてバンドでインストに挑戦した曲ということもあり、特に思い出深い一曲です。
▼THUNDERSTORM - 高中正義
当時、この曲は全日本プロレスの天龍源一郎選手の入場テーマ曲としても使われていました。全日本プロレスはよく観に行っていたので、天龍選手が登場すると個人的にもかなりテンションが上がったのを覚えています。ちなみに選手としてはブルーザー・ブロディ、ジミー・スヌーカ、スタン・ハンセンが好きでした……これは余談です。
■名盤『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』
アルバム『虹伝説』は大好きな名盤で、何度も繰り返し聴きました。
高中さんは6枚目のオリジナル・アルバム『T-WAVE』(1980年)をリリースしたあと、楽曲制作に行詰まりを感じていたそうです。気分転換にグアムを訪れた際、偶然イタリアの画家ウル・デ・リコの絵本『THE RAINBOW GOBLINS(邦題:虹伝説)』に出会い、そこから強いインスピレーションを得て制作されたのがこのアルバムでした。
絵本の内容は虹を食べる7匹の小鬼の物語です。
鬼たちは世界中の全ての虹を吸いつくそうと計画を立てます。そして虹が生まれるという秘密の谷へ忍び込み、待ち伏せをします。しかし、生き物や植物など大自然の仲間たちが一致団結して鬼たちの悪巧みを阻止。激しい報復を受けた鬼たちはことごとく滅ぼされ、自然界に再び美しい平和が戻る様子を幻想的な絵画とともに描いた寓話です。高中さんが全12枚の絵一つ一つに曲を付け作品にしました。もちろん私も絵本を買いました。
2枚組のコンセプト・アルバムで、作編曲を高中さんが、ストリングス・アレンジを、キティレコードの音楽プロデューサーであり、盟友である星勝さんが手掛けています。作品全体を通底する印象的なメロディが「PROLOGUE」で提示され、最後に高中さんのギターで回収される構造が素晴らしいです。
とにかく全曲素晴らしいです。一度「サンダーストーム」は置いておくとして、個人的には「SEVEN GOBLINS」「THE MOON ROSE」「PLUMED BIRD」「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」が好きです。
「THE SUNSET VALLEY」(アコギの箇所)と「THE MOON ROSE」はギターのメロディが大好きで、バンドではベースを担当していたにもかかわらず、密かに一人でギターを練習していました。
▼THE MOON ROSE - 高中正義
参加ミュージシャンも豪華です。ドラムスには高中さんの盟友・宮崎まさひろさんや村上“ポンタ”秀一さん。ベースには日本におけるスラップ・ベースの第一人者であり、初期の山下達郎さんの作品やライブでも活躍した田中章弘さん。後にさだまさしさんのサポートなどでも知られるキーボードの石川清澄さん、パーカッションの木村“キムチ”誠さんらが名を連ねています。
その後、1997年に続編として『虹伝説II THE WHITE GOBLIN』がリリースされましたが、私はやはり最初の『虹伝説』が思い出も込め、断然好きです。オリコンのアルバムチャートで最高3位を記録し、「第23回日本レコード大賞」で企画賞を受賞した、まさに日本のフュージョン・ポップス史に残る金字塔だと思います。
▼PLUMED BIRD - 高中正義
そういえば、レーザーディスク「虹伝説」のライヴのメンバーは、メインの高中正義さん(Guitar)に加え、宮崎まさひろさん(Drums)、田中章弘さん(Bass)、小林泉美さん・石川清澄さん(Keyboard)、菅原裕紀さん・木村“キムチ”誠さん(Percussion)、薩摩光二さん(Sax)の8人です。バックの7人は絵本の小鬼の人数に合わせたのでしょうか……。
メンバーの中にパーカッションが二人いるのは、高中さんらしいチョイスですね。
高中さんは愛用ギター・YAMAHA-SG 2000を虹色にペインティングして弾いていたのが印象的です(噂ですと御茶ノ水の「石橋楽器」でペインティングしたようです)。「サンダーストーム」では8人で小鬼の被り物をかぶって演奏するというパフォーマンスに釘付けになったのを覚えています。よくあれで演奏できるな……やっぱりプロはすごいな!
しかし高中さんのハムバッカーの音とリミッターが利いている特徴的な音は本当に良いですね!
▼YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE - 高中正義
