読了。マンガ「日本三國①」松木いっか著:小学館刊~アニメを観て、原作を手にした理由(ネタバレあり)
アニメ「日本三國」を1シーズンを一気見して、一気に好きになりました。
アニメ「日本三國」第一シーズンは、聖夷総帥・輪島桜虎の暗殺という衝撃的な場面で幕を閉じます。
あの終わり方は見事でした。
理想を掲げ、多くの人々を惹きつけた英雄が倒れ、
その裏では平殿器内務卿が、あの腹立たしいピースサインを浮かべている、視聴者として怒りと悔しさをこれでもかと煽る演出でした。
そして「主人公・三角青輝がどう動くのか」という期待も残されています。
けれど自分にとって、輪島桜虎という人物の魅力があまりにも大きかったせいか、「ここで終わっても、一つの作品として十分に成立している」とも感じました。
もしこのアニメが第一シーズンで終了するとしても、それはそれで納得できます。
そう思えるほど、輪島桜虎という人物は魅力的な大きな柱だったのです。
では、そんな自分がなぜマンガ原作を買ったのか。
それは主人公・三角青輝の活躍が見たかったからではありません。
輪島桜虎の死後が知りたかったからでもありません。
もっと個人的で、もっとくだらない理由です。
「愛知県は、この先どうなるんだろう。」
たった、それだけでした。
「日本三國」の魅力は、戦争や政治だけではありません。
世界設定がとてもよくできています。
日本が「大和」「聖夷」「武凰」の三国に分裂し、それぞれが覇権を争うという設定ですが、地図を見るだけで物語が始まります。
初めて勢力図を見たとき、真っ先に目が止まったのが愛知県でした。
「えっ……愛知県、こんな位置なの?」
一応、大和に属しています。
しかし三重県の長島付近で、細くつながっているだけにも見えます。
飛び地ではないけれど、ほとんど飛び地のような立地です。

歴史好きなら、この瞬間にいろいろ想像されるのではないでしょうか。
補給は大丈夫なのか。
守り切れるのか。
敵に切り離されたらどうなるのか。
作品はまだ何も語っていないのに、地図だけで勝手に戦略を考え始めてしまいます。
第一巻で「長篠の戦い」が描かれます。
名前を聞けば、多くの人は織田・徳川連合軍と武田軍の鉄砲三段撃ちを思い浮かべるでしょう。
ところが「日本三國」は違います。
読んでみると、どちらかといえば「桶狭間の戦い」のような展開になっています。
武凰軍二万八千。
対する大和軍八千。
しかも戦場は新東名高速道路。
現代日本の道路網を戦場に置き換えるという発想だけでもワクワクします。
さらに武凰軍は勝利を確信し、どこか浮かれた空気を漂わせています。
近年の歴史研究では、「桶狭間の戦い」の際、今川軍は祝宴を開いていた可能性が指摘されています。
「日本三國」を読んでいると、そのイメージが自然と重なりました。
そして辺境将軍・龍門光秀率いる大和軍が奇襲を敢行します。
アニメでは、新東名高速道路の高架を兵士を足場代わりによじ登る場面まで描かれていました。
「いや、それは無茶だろう。」
歴史小説や歴史漫画は、結末を知っています。
本能寺の変も、関ヶ原も、坂本龍馬の最期も。
だからこそ「どう描くか」が作品の勝負になります。
ところが「日本三國」は違います。
歴史モノを下敷きにしながら、その未来は誰にも分かりません。
桶狭間を思わせる戦いがあっても、そこで織田信長が現れるわけではありません。
長篠を思わせる地名があっても、武田勝頼が敗れるわけでもありません。
歴史の知識がヒントにはなる。でも答えにはならない。
だから次の展開が読めないのです。
この絶妙な距離感が、おもしろくも思います。
その「長篠の戦い」が終わり、愛知県は引き続き大和領となります。
しかし自分は、その後が気になって仕方ありません。
主人公・三角青輝は日本統一を目指して進んでいきます。
一方で自分は「愛知県はこの先、どう扱われるのだろう」と考え続けていました。
冷静に地図を見ると、あまり楽観視はできません。
武凰が岐阜を押さえていて、愛知県は非常に苦しい立場にあります。
大和から見ても、防衛線を築くなら木曽川・長良川・揖斐川という天然の要害を活用した方が合理的です。
わざわざ愛知県へ兵力を送り続ける必要があるのでしょうか。
太平洋沿岸を東へ攻める拠点にするつもりなのでしょうか。
それとも、いずれ切り離される運命なのでしょうか。
地元愛知県民としては、あまり考えたくないことばかりです。
好きな故郷を、自分で「戦略的価値が微妙かもしれない」と分析してしまっています。
何とも複雑な気分です。
でも、それだけ作品世界に入り込んでいるということなのでしょうか。
歴史シミュレーションゲームが好きな人なら分かると思います。
地図を眺めているだけで、一時間くらい過ぎてしまうことがあります。
「ここに城を築けば」
「この川を渡るのは難しい」
「補給線はどうなる」
そんなことばかり考えてしまうのです。
「ここなら攻めにくい。」
「ここは守りやすい。」
そんな想像が容易にできるでしょう。
世界設定が現実と地続きだからこそ、読者自身も戦略を考える楽しさを味わえると思います。
もちろん「日本三國」には魅力的な人物が数多く登場します。
輪島桜虎のカリスマ性。
三角青輝の成長。
平殿器の底知れない不気味さ。
それらは間違いなく作品を支える大きな魅力です。
けれど自分がページをめくった最大の理由は、もっと単純でした。
「愛知県は、この世界でどういう運命をたどるのか。」
ただ、それが知りたかったのです。
壮大な天下統一の物語の中で、たった一つの県の行く末が気になってしまっています。
そんな読み方も許されるのではないでしょうか。
そして気づけば、アニメの続きを知りたくなり、マンガ原作を手に取っていました。
これから、二巻三巻と読み進めたいと思います。
話しに聞くと、作者の松木いっかさんは体調を崩された様子で、不定期連載?の形になったようです。
松木いっかさんには体調を維持されながら、無理をなさらず、それでも最後まで(できれば愛知県を)描き続けてほしいと思います。
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