《官能小説》反抗期の息子を男にする方法/207
寝室のベッドの上で、自分の指先をあの美しい少年の猛々しい男根に見立てて狂おしく貪り、無音の絶頂を迎えてからというもの、私の身体はかえって制御の利かない不発の熱量を孕んで重たく疼き続けていた。
ヒロヤくんの、あの暴力的で太く、硬い本物の生の肉棒によって、最奥のきつい通路をみしみしと押し広げられ、お腹の底が焼け溶けるような受動の熱量に涙を流して絶頂を迎える、あの圧倒的な「本物の結合」への狂おしいほどの渇望。
けれど、いくら私の身体が少年の獰猛な牙を熱烈に懇願していようとも、都合よく彼を我が家へ呼び出すようなことはできない。彼には彼の生活があるし、そうそうバイト先に押しかけるわけにもいかない。悶々としながら過ごす一週間。私はその内の溜まりを散らすようにして、駅前のフィットネスクラブのプールへと通い詰めていた。
冷たい青い水に全身を沈め、肉体が疲れ果てるまで手足を動かして泳ぐ。水の中に身を置いている瞬間だけは、私の身体を支配するいやらしい疼きも、内に籠もる濁った熱も、すべてが水圧によって優しく押し潰されて洗い流されていくような気がした。けれど、そんな水底の平穏すら、私の肉体に刻まれた淫らな記憶を完全に消し去ることはできなかった。週の半ばの昼下がり。泳ぎ疲れて火照った身体をシャワーで流し、ロッカールームの近くにあるラウンジで冷たい水を飲んでいた時のことだった。
「あの……すみません。時々、プールでお見かけしていて……」
不意に、少し低めの、落ち着いた男性の声が頭上から降ってきた。 驚いて顔を上げると、そこには引き締まった体躯をシンプルなスポーツウェアに包んだ、爽やかな容貌の男性が立っていた。年齢は三十歳前後だろうか。すっきりと整った涼しげな目元。ジムでそれなりに鍛え上げられているらしく、ウェアの上からでも胸板の厚みや、しなやかな肩のラインがはっきりと見て取れた。あからさまなナンパという風な、下品で強引な気配は微塵もなかった。
「もし、今日この後、お時間があるようでしたら……少しお茶でもいかがですか?」
戸惑うような、けれど確かな好意を宿した瞳で私を見つめてくる。一瞬、私の胸の奥が、ドキンと甘く跳ね上がるのを感じた。三十前後の、若くて清潔感のある魅力的な男性から、一人の「女」として声をかけられたという事実。このまま、彼の誘いに乗って、夏の日の秘め事として新しい快楽に身を委ねてしまおうか――。そんな淫らな誘惑が頭をよぎり、私の秘所の奥がじわりと熱い蜜を滴らせる。 けれど、私の唇から滑り出たのは、上品な「主婦」としての、冷たい拒絶の言葉だった。
「ごめんなさい。私、結婚していて、大きな息子もおりますので……。お気持ちだけ、ありがたく頂いておきますね」
努めて穏やかに、けれど一線を画すように微笑んで断る。男性は、残念そうに少しだけ眉を下げたが、すぐに「そうでしたか。ぶしつけなことを言ってすみません」と、爽やかな笑顔を戻した。
「でも、もし気が変わるようなことがありましたら、いつでもお声がけください。それでは、失礼します」
それ以上しつこく食い下がることも、不快な視線を送ることもなく、彼はスマートにその場を去っていった。その、あまりにもあっさりとした引き際に、私はベンチに佇んだまま、心の中でぽつりと呟いていた。
(……もっと、粘り強く誘ってくれればいいのに……)
そんな我がままな不満を抱く一方で、私はすぐに、自嘲気味な、ひどく冷徹な自己分析に至っていた。彼のような、若くて容姿もスタイルも申し分ない男性にとって、少し声をかければ、大抵の女性は嬉々としてついていくのだろう。だからこそ、わざわざ四十を過ぎて結婚している、子持ちの私に狙いを絞って、しつこく追い回す必要などどこにもないのだ。
彼にとって、私はただの「ちょっと小綺麗な、プールで見かける人妻」という、数ある選択肢の端っこに過ぎない。その、自分の年齢と、女としての市場価値の限界を突きつけられたような残酷な現実に、私の胸の奥が、冷たい風が吹き抜けたように少しだけ悲しく、寂しくなった。もし、これがミカさんだったらどうしただろう。 あの妖艶で奔放なママ友なら、こんな魅力的な若い男からのアプローチに艶然とした微笑で応え、何のためらいもなくその日のうちにベッドへと連れ込んで、貪り尽くしていたに違いない。けれど。
(私は、ミカさんじゃないし――)
そう心の中で首を横に振り、私は虚しさを誤魔化すようにして、バッグを強く握りしめてジムを後にした。
家に帰ると、待っていたのは、驚くほどに上機嫌なタケルの姿だった。 鼻歌を歌いながらリビングを歩き、私の顔を見るなり「あ、母さん。今日も夕飯、俺が作るよ」などと、普段のぶっきらぼうな様子からは想像もつかないような、パッと花が開いたような笑顔を見せてくる。
どう考えても、サリナちゃんと完全に仲直りをしたのだ。
(本当に、ゲンキンなんだから)
目の前で嬉しそうにしている実の息子を見つめながら、私の胸の奥に、ぞくぞくとするような圧倒的な優越感と、昏い嘲笑がこみ上げてくるのを抑えられなかった。
(あなたがそんなに楽しみにしている、サリナちゃんの誰にも汚されていないはずの『初めて』はね……。もうとっくに、母親であるこの私が、全部ナカまでぐずぐずに汚して、奪い去ってしまったのよ――)
〇
そうこうしているうちに、週末がやってきた。土曜日の朝、タケルはいつも通り私に小遣いをせびり、髪を整えて家を出て行った。夫もまた、「ちょっとゴルフの練習に行ってくる」と言って、早々に車で出かけて行った。静まり返った、完全に一人きりになった我が家。私はリビングのソファーに横たわり、手持ち無沙汰な時間をどうにか潰そうとしていた。
また、プールへ行って泳いでこようかな。そう思った瞬間、私の脳裏に、あのジムのラウンジで声をかけてきた、三十前後の爽やかな男性の横顔が鮮烈によみがえった。もし、今日またプールへ行って、彼に遭遇してしまったら。 そして、あの時と同じように、静かなトーンで「お茶でもどうですか」と誘われたら――
(……断れる自信が、今の私にはないわ……)
内に溜まった濁った熱、そしてヒロヤくんへの満たされない渇望に身体の奥がじんじんと疼いている今の私は、これ以上ないほどに防御力が低下していた。もし彼に手を引かれたら、私は簡単に、日常のすべてをかなぐり捨てて、ホテルへとついていってしまうかもしれない。自分自身の底知れない淫らさと、理性の脆さが、たまらなく怖かった。
(うーん……大人しく、家で本でも読んでいようかな)
私がベッドの上で寝返りを打った、その時だった。枕元に置いていたスマートフォンが、短く、ブブッと震えた。画面を見ると、受信したメッセージの差出人は「アヤカ」となっていた。学生時代からの古い女友達だ。家も比較的近所に住んでいるのだが、しょっちゅう会ってランチをしたり、長電話をしたりするような騒がしい関係ではない。ただ、年に数回、何かの折にメッセージを交わし合い、細く、けれど途切れることなく長く続いている、どこか気安い、信頼できる友人だった。
『エリ、今、家にいる? ちょっと、直接会って話したいことがあるんだけど……』
何やら切実な響きを含んだメッセージ。私はちょうど暇を持て余していたし、家族も全員出払っていて、我が家には誰もいない。
『ええ、いるわよ。夜まで誰もいないから、うちに来る?』
そう返信を送ると、すぐに『ありがとう、すぐ行くわ』と返ってきた。 私はベッドから立ち上がり、台所へ向かって、お茶うけに、棚の奥のクッキー缶を探し始めた。
それからしばらくして、静かな我が家の玄関のインターホンが、ピンポーンと短く鳴り響いた。ドアを開けると、そこには、少し怯えたような、酷く顔色の悪いアヤカが立っていた。
「いらっしゃい。どうぞ、入って」
私は彼女をリビングへと招き入れながら、鏡越しに彼女の姿を盗み見た。 アヤカは、学生時代から全く変わらない、愛くるしい童顔の持ち主だった。同い年で、お互いに四十を過ぎているというのに、彼女の顔立ちや、柔らかそうな白い肌は、はたから見たら二十代前半と言われても誰も疑わないほどの若々しさを保っていた。
体型もスレンダーで、余分な脂肪など微塵もない。けれど、薄手のサマーセーターの奥には、出るところは出ている、主張の強い豊かな乳房の丸みが品よく際立っていて、いかにも男の人の目を惹きつけそうな、艶っぽいスタイルを維持していた。
(本当に、相変わらずね……。二十五歳くらいのところで、完全に時が止まっているみたいだわ)
我ながら、羨ましさを通り越して呆れるような感慨を抱きながら、私は彼女をリビングに通したあと、温かいハーブティーのカップをテーブルの上に置いた。
「突然ごめんね、エリ……。押し掛けちゃって」
「全然いいよ。ちょうど、暇を持て余していたところだから。……それで、どうしたの? なんだか、ずいぶん顔色が悪いけれど……」
アヤカは、差し出されたカップを両手で包み込むようにして持ち、その細い指先を微かに震わせながら、消え入りそうな声で呟いた。
「……もう、どうしたらいいか分からなくて。……エリしか、頼れる人がいないの……」
その、尋常ではない切迫した様子に、私はごくりと喉を鳴らした。 ただの夫の愚痴や、美容の相談などではないことは、彼女の怯えた瞳を見れば一目瞭然だった。私は姿勢を正し、彼女の言葉を真剣に聞くための姿勢を作った。
「何があったの? 聞かせて」
「……息子のことなんだけど……」
アヤカの口から漏れたのは、彼女の、一男一女のうちの、上の男の子のことだった。タケルやヒロヤくんの一学年下になっているはず。長い間会っていなかったけれど、最後に彼女の自宅で見た時には、アヤカにそっくりの、愛くるしい整った顔立ちをした、人懐っこい可愛らしい男の子だったのを、私は記憶の底から思い起こしていた。
「息子さん……? もしかして、反抗期とか? 口をきいてくれないとか、あるいは……暴力を振るわれたりしたの?」
アヤカのその怯え方からして、体格の良くなった息子から家庭内暴力でも受けているのではないかと、私は最悪のケースを想像して水を向けた。けれど、アヤカは、私のその推測に対して、力なく首を小さく横に振った。
「……もしかしたら、それなら、まだよかったかもしれないんだけど……。その方が、よっぽど精神的に楽だったかもしれないわ……」
ハーブティーの湯気の向こうで、アヤカの瞳が、恐怖と、そして言葉にできない羞恥のせいで、見る見るうちに真っ赤に染まっていく。彼女はカップをテーブルに戻すと、自らの両手で顔を覆い隠すようにして、ぽつりと、重い告白をこぼした。
「私……見ちゃったの」
「何を……?」
「あの子が……あの子が、私の寝室で……。私の下着を使ってオナニーしているところを……」
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400万字以上(10万字で1冊分だとカウントすると、40冊分以上)官能小説を書いてきましたが、なお書けるようです。ていうか、まだまだ書きたい。何でこんなに官能小説好きなのか、自分でもよく分かりません。