宇宙☓お金のおはなし#1 。YouTubeの補足解説。
先日出演したYouTubeでは、宇宙ビジネスにおける資金調達として、補助金、投資、融資の性質の違いについて解説しました。
このYouTubeはシリーズ化されて今後も続けようと思ってますので、話足りないところは追々YouTubeでも話したりしながら段々と形になっていくのかなとも思いますが、それに並行して、ブログでも補足していこうと思ってます。
今回の動画では主に、それぞれのお金の出し手がどのようなアップサイドを期待しているかについてお話ししました。
補助金はリスクマネーとして技術開発を後押しし将来国をささえる大きなビジネスになることを期待して、民間からの投資は大きな成長を求め将来大きな額が戻ってくることに、融資は安定した事業拡大を支え、元利金の返済が確実になされることを期待します。宇宙産業は開発期間が長く、初期投資も大きいため、それぞれの資金をどう組み合わせるかが重要になります。YouTubeでの話をまとめるとこんな感じです。
一方で、資金にはその期待に応えられなかったときにどうなるのか?と言ったダウンサイドが必ず存在します。
YouTubeの中ではその点について触れられなかったので今回はその点を補足したいと思います。
投資
投資家はリターンを求めて資金を出しています。特にベンチャーキャピタルは、極めて高い成長率を期待して投資します。
つまり、期待された成長が実現しなければ、経営陣への評価につながります。
宇宙スタートアップの世界では、技術的に優れているだけでは十分ではありません。市場拡大、売上成長、次回資金調達などを継続的に実現できなければ、経営体制の変更という議論が起こり得ます。
これは一般企業でも同じですが、宇宙ビジネスは特に開発期間が長いため、投資家との時間軸の違いが問題になりやすい特徴があります。創業者は10年単位で技術成熟を考えていても、投資家は数年単位で成長を求めることがあります。
そして重要な点は、投資つまり出資とは会社の持ち分の一部を売るということです。投資家が会社の共同オーナーになるということです。会社法ではオーナー、すなわち株主の権利は厳密に定められていますので、なあなあにはできません。そして株主の権利は、出したお金を返してくれと言うことが出来ないかわりに、経営陣の交代や経営方針変更をすることができたりします。つまり投資のダウンサイドは自分が自分の会社を失うリスクがあるということになります。
融資
融資は投資とは異なり、原則として返済が前提となります。銀行はアップサイドを取りに行く存在ではありません。むしろ、ダウンサイドを避けることを重視します。つまり、事業がうまくいかなかった場合でも、返済できるかどうかが重要になります。
そのため、宇宙ビジネスは銀行融資と相性が難しい面があります。
ロケット開発や衛星開発は、多額の先行投資が必要であり、収益化まで長期間かかります。一方で銀行は、安定したキャッシュフローを重視します。結果として、十分な売上基盤がない宇宙スタートアップでは、融資が難しくなります。
そして、融資の最大のダウンサイドは、返済不能時に倒産へ直結し得る点です。
投資であれば、企業価値低下によって投資家が損失を負いますが、融資では返済義務が残ります。これは資金の性質として極めて大きな違いです。倒産の引き金は常に支払い義務の不履行によって起こります。
補助金
補助金は返済不要であり、投資のように経営権を求められることも通常はありません。その意味では、企業にとって非常に魅力的な資金です。
特に宇宙産業では、技術実証段階を支える重要な役割を果たしています。
しかし、補助金にも独特のダウンサイドが存在します。それは、常に国費の使い道として正当性を問われ続けることです。
補助金の不正使用はもちろん認められませんが、まじめにやってさえいればよいというものでもありません。宇宙分野に予算を投じるなら、福祉や教育、医療、防災など、他の政策に回すべきではないかという議論は常につきまといます。宇宙以外のものと比較されて税金を使う価値があるのか?という視点で見られます。つまり宇宙に興味がない人たちにその意義を伝えなければならないという難しいミッションでもあるのです。
特に宇宙ビジネスは、一般国民から成果が見えにくい場合もあるため、社会的説明責任が重要になります。そのためお金の使い方が制限されて使いにくい制度であると感じる人も多くなります。
また、日本の宇宙産業では、補助金が一種の信用補完として機能している現実もあります。国の支援が入っていることによって、民間投資家や金融機関が安心して資金を出せるケースが少なくありません。
逆に言えば、国の支援がなくなると、民間の投資や融資が急速に難しくなることもあります。特に補助金は原則後払いであるため(宇宙戦略基金など一部概算払にできるものもあります)、運転資金を融資で頼るなどすると、補助金が打ち切られたときに一気にその融資の返済が倒産危機を招くことにも繋がりかねません。
ただ最近はその問題意識から補助金の前払いを認めるようにしようという動きも以下の記事にあるように、高市政権の重点投資分野においてあるようです。この動きは要注目ですね。
まとめ
宇宙産業は巨大な設備投資と長期開発を必要とするため、完全な民間資金だけで成立させるのは容易ではありません。
その意味で、日本の宇宙ビジネスは現在も、官民の資金循環の上に成り立っていると言えます。補助金、投資、融資は、それぞれ単なる資金調達手段ではありません。そのお金を出す主体が、何を期待し、何を恐れているのか。その違いを理解することが、宇宙ビジネスを理解する上で非常に重要だと思います。
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