トランプの敵は「米国の覇権」そのものだ。
ドナルド・トランプ米大統領は「アメリカ製ではないすべての自動車に25%の関税を課す」と述べた。輸入される自動車とエンジンなど関連の部品にに25%の追加関税を課すと正式に表明し、通商拡大法232条に基づく文書に署名した。
まあ、第二次トランプ政権が誕生したことで、「想定の範囲内」の1つだったとはいえ、ほんとにやるんだということですねえ。大切な同盟国(笑)の日本車は外れるという淡い期待は見事に裏切られた(笑)。
いろいろな方が論じておられますが、一言でいうと、「誰も得をしない」ということに尽きるんじゃないかな。
当の米国の自動車メーカーの株価まで下落してることが、それを端的に示してますな。
米ゼネラルモーターズ(GM)の株価は約3%下落。フォードを含む他の自動車メーカーの株価も軒並み下がっている。
「自動車関税」は、米国内の主要な自動車生産の一時停止、価格の上昇、そして同盟国との関係悪化を招く可能性が高いと指摘されている。
米自動車産業は、輸入部品に大きく依存している。新たな自動車関税は、価格上昇により、消費者にとって数千ドルのコスト高となる。消費者の選択肢も奪う。新車販売に打撃を与え、雇用喪失にもつながる。
輸入される自動車に高関税を課せば、米国に自動車を輸出する国は報復関税をかけてくる。米国車は海外でさらに売れなくなる。
国内市場はといえば、輸入部品に大きく依存している。関税で外国車が高くなるだけでなく、米国車も高くなる。どちらも売れなくなり、買い控えが起こる。米国の消費者はトランプ政権が終わるまで新車を買わないだろう。消費も大きく冷え込むことになる。
すでに鉄鋼・アルミ関税など「トランプ関税」が発動されている。NY株価は下落し、イーロン・マスク、ジェフ・ベソス、マーク・ザッカーバーグなど米国のスーパービリオネア5人は合計2090億ドル(約31兆円)の純資産を失ったという。
「トランプ・リセッション」(トランプ不況)はすでに起こっている。
しかし、トランプ大統領は、
「クルマに高関税を課せばアメリカにクルマを輸出している国は、仕方なく工場をアメリカに移して現地生産に切り替える。また、アメリカの消費者は関税で高くなった輸入車からメイドインUSA車に乗り換える。こうしてアメリカのクルマ産業は復活し、ラストベルトは繁栄を取り戻す」
と、非常に楽天的だ(笑)。本気でそう信じているのか、うまくいかなければ、また「あいつが悪い、こいつが悪い」と新たに「敵」をつくって押し付けて、軍事力をちらつかせ、経済力を思い切り使って制裁し、言うことを聞かせればいいと考えているのかもしれない。
問題は、トランプの「敵」とは誰なのかということだ。先に結論からいえば、
「米国の覇権」
そのものじゃないかと思う。そう考えると、わかりやすくなると思うのだ。
そう、トランプ大統領は、「同盟国」により冷たい扱いをする。さらに、大統領は、こういう決定もした。
「解放の日」
だというのだ。米国は、貿易相手が課す水準まで関税を上げる相互関税を、日本時間の3日に発表した。日本には、24%の関税が課された。個別の関税率を示していないすべての国や地域を対象に一律で10%の関税を課すこともあわせて発表した。トランプ大統領は、その日を「解放の日」だというのだ。
では、なにからの「解放」なのか。大統領は言う。
「多くの国々が何十年にもわたって我々から搾取してきた。その規模は誰も想像すらしなかったほどだ。それは終わらせなければならない」
なるほど。それはまさしく「米国の覇権」から米国を解放することに他ならない。
トランプ大統領は「搾取」というが、それは元々、米国が望んだことだ。
東西冷戦時、共産主義の拡大を防ぐため、米国は地政学的な拠点を同盟国として、基地を置いてその国の安全保障を肩代わりした。
それと同時に、同盟国の「米国市場」への自由なアクセスを許した。端的にいえば、同盟国からの輸入をどんどん受け入れて、同盟国を経済成長させた。
また、経済成長に不可欠な石油などしげんを同盟国が安全に輸入できるように、米海軍が展開し、シーレーンを守った。
同盟国が貧しいままでは、共産主義が蔓延する危険性があったからだ。たとえ、米軍基地を置いても、国の内側から崩れてしまう。それを防ぐために、米国は、事実上「米国の国家戦略」として、同盟国を豊かにしたのだ。
確かに、同盟国は豊かになった後も、米国に甘え続けた。それで、「日米貿易摩擦」のような問題も起こった。また、東西冷戦が終わった後も、米国は「世界の市場」を続け、同盟国のみならず、かつて共産主義陣営にあり、敵であったロシアや中国などにも市場へのアクセスを許し、米国市場で豊かになることを許した。
その間、主要産業は製造業から、IT、デジタルに変わったが、米国経済は拡大を続けた。世界中からヒト、モノ、カネが集まり、米国消費者は多大なる恩恵を受けた。のは間違いない。ただ、一部、米国の繁栄の陰で、その恩恵を受けられない人たちがいた。
トランプ氏は、その人たちの支持を得て、大統領になった。
そして、そまさに、「敵よりも友のほうがひどい」と嘆きたくなる状態になった。
トランプ大統領は、同盟関係の歴史も現在もわかっていない。搾取なんてあんまりだと言いたくなる。だが、それは従来の「覇権国家・米国」という「常識」に凝り固まった考えなのかもしれない。
そもそも、トランプ大統領が「米国の覇権」そのものを否定し、敵視していると考えたらどうだろうか。大統領の行動は、わかりやすくなってくる。
例えばだが、かつて東西冷戦期の東ドイツに「トラバント」という国民車があった。鉄が不足し、ボディの材質は紙に近い素材だった。スピードも100キロでなかった。小さくて、小回りが利き、国民に愛された。

東ドイツ国民は、隣の西ドイツではポルシェやBMW、ベンツがアウトバーンを高速で走っていることなど知らなかった。それでもトラバントに乗って幸せだった。

例えが悪いかもしれないけど(笑)、米国はこんな国になるのかもしれない。でも、トランプ大統領は、すべてメイドインアメリカで、偉大な国に戻ったと勝ち誇るのだろう(笑)。
あるいは、よその国で米国を上回るテクノロジーや製品が売れていれば、情報統制をするかもしれないよね。フェイクニュースだと(笑)。
ともかく、我々は「米国はもうないもの」という発想を持つことが大事かもしれない。今まで、米国に依存し過ぎてきた。今までの平和や豊かさは、米国によってもたらされた「幻想」を理解し、自立することが必要だということだろう。
もちろん、次の大統領はトランプ大統領と真逆の考えの人になるかもしれない。そうであっても、それまで待つというのではなく、米国に頼ることなく生きていく道を探ることが重要だ。
