HAMLET 2 #026 姉妹に起きたこと
■二人きりになったジムとフランシス、喧嘩中
●ジムの煮え切らない態度に、フランシスがキレた。
「なによ!……結局、ジムくんは嫌われたくないだけじゃないのっ!?」
「そ、そりゃあ、嫌われたくないですよ。毎日顔合わせているんですから」
「あっさり認めたわね!……結局、そういうことなのね!?
あなたって、みんなに良い顔して、求められたら後先考えずに応えて。
それで誰かが傷ついているなんて、想像もしていないのよ!」
「あ、あのっ……フランシスさんを傷つけたんなら、謝ります。
だから、そんなに声を荒げないでくださいよ」
「他に誰も居ないんだから、別にいいでしょう!?」
「そ、それは、そうですけど……」(おどおど)
「そんな、怯えた小動物みたいな顔しないで!
こっちが悪いみたいじゃない!」
「すっ、すみません……」
●怒りを通り越して、悲しくなったフランシス
「ジムくんからしたら、私なんてチョロいものよね。
思わせぶりなこと言って、ちょっとその気にさせたら、母親の代わりにもなって、家政婦にもなって、便利なものよね……」
「そ、そんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どんなつもりよ!」
「……」(頭をかく)
「私、嬉しかったんだから……」
「えっ??」
「ジムくんの役に立てて、嬉しかったんだから……。
だから、ジムくんの言葉、本気にしちゃった。馬鹿よね、私……」
「ふ、フランシスさん……」
●泣きそうなフランシスを見て、罪悪感を感じているジム。
※グリフォンの推進音が、近づいてくる。
●グリフォンの帰還に気づいたジム
●バツの悪さから逃げ出したくて、音の方へ向かう
「!!……グリフォンが帰ってきたんだ!!」
「あっ、ジ、ジムくんっ!!」
●ジムを追いかけるフランシス
■ジムたちのコンテナのところに戻ったグリフォン
●スピーカーで、メアリーのことを伝えるメデューサ
「二人とも、メアリーを連れて帰った!」
●グリフォンに駆け寄るジムとフランシス
「メアリー!!」(二人、声を揃えて)
●眠っているメアリーを背負ったメデューサ。
●詰め寄るフランシス、メアリーの状況を説明するメデューサ
「妹は、大丈夫なの??」
「話は後だ。今は薬で眠っている。ハイポスプレーで応急処置はした。
グリフォンのパイロットチェッカーでは、全身の打撲と複数の骨折、脚部の裂傷。正直、自分が見つけた時に話せたのが、不思議なくらいだ」
「そんな怪我、ここでは治療出来ない……」
「とりあえず、安静にさせておくくらいしかない。
あとは、祈ることしか……」
「……」
●悲しそうなメデューサの言葉に、沈痛なフランシス。
●フランシスの手を、そっと握るジム
「ジムくん……」
「不安だよね。でも、俺たちにできるのは、メアリーを信じることだけだ。
メアリーは、地球に来てから、頑張って自分の足で歩けるようになった。
今度のケガだって、きっと……」
●無言のまま、ジムの手を、強く握り返すフランシス。
■ベッドで眠ったままのメアリー。フランシスが見守っている。
●フランシスがメアリーの状況を問いかけ、AIのKIDが説明する。
「今のメアリーの状況は?」
「検出可能なメアリーのバイタルは、不思議なほどに安定しています。
イギリスでのドクターの治験記録と、ナカモト様が行った施術の内容を基に、状況を推察してみます」
「頼むわ」
「今回、こちらに戻ってきた際のメアリーのバイタルと、以前にメデューサと闘った際、パイロットシートで検出したものとを比較して、明らかな違いが、体温と骨密度です」
「どういうこと??」
「体温は40度近くに上がり、骨密度が異常に上がっています」
「もっと詳しく」
「メアリーの体内で、急速に骨が成長しています。イギリスでの治療の際に見せたものと、極めて似ています」
「イギリスでは、あの子が歩けるように、運動野の刺激と骨形成を進めた。
それと同じ事が、今のあの子の体の中で、自然に起きていると言うの?」
「そう推察されます。恐らくは、思春期に起きる成長痛と同じことが起き、発熱に繋がっているのでしょう」
「妹も、もう大人よ。いまさら成長痛だなんて……」
「肉体の防衛反応、いや、一種の適応反応なのかもしれません。
メデューサが言っていたように、メアリーが木から落ちてケガをしたなら、体が反応して、一気に骨密度を上げ、骨折を早く直そうとしている」
「そんなことが、どうして……」
「ドクターも、ナカモト様も、メアリーの骨や筋肉、脳に働きかけました。
その影響が、骨折や打撲に対する、防衛反応を起こしたのかもしれません」
「それは、あくまで仮説よね??」
「ここには、治療の為の設備も、調査の為の設備も、ありません。
ですから、はっきりしたことは、申し上げられません。
しかし、イギリスでの治療の結果が、今のメアリーに良い影響を与えているのは、確かでしょう」
「あの子は今、ドクターとナカモトさんに救われているのね」
「そうなります。もちろん、皆さんの祈りも効いていると思いますよ」
「AIが、祈りの効果を口にするなんて……」
「フランシス、あなたは少し、信仰心を身につけたほうが良いのでは?」
「クスッ……」
●AIのKIDの言葉に、思わず苦笑するフランシス。
※以下、フランシスのモノローグ
結局メアリーは、それから丸二日、眠り続けた。
ジムくんも、メデューサも、自分のことは脇に置いて、
必死に、妹のことを祈ってくれた。
それが、とても心強くて、嬉しかった。
私も、こんな時だけ、神様を信じてみようと思った。
そんな時、私の頭の中に浮かんだのは、あの人の姿だった。
いいえ、頭の中に浮かんだ、なんてものじゃない。
あの人が、私に語り掛けてきてくれた。
■祈る中、まどろみ、メイビル博士の幻と対峙するフランシス。
●HAMLETで、彼女の師でありパートナーだったメイビル博士そのままの姿。
●懐かしさの中で、メイビル博士にすがるフランシス
「博士!?……メイビル博士!?……貴方なの??」
「フランシス君、やっと、君と会話できるようになったか……」
「私、きっと気がふれてしまったのね。いまさら、博士の幻を見るなんて」
「幻か……確かに私は、もう肉体は持たない。
だが、こうして意思の疎通は出来ている」
「フフッ……ありえない。怪物としてイギリスに現れたのも不思議だったけど、こうしてまた現れて、今度は人間の姿で、私と話しているなんて……」
「私にも、何故かは説明出来ない。
だが、こうして話しているのは、事実だ。受け入れてくれ」
●声の優しさに心を動かされながら、この状況を信じられないフランシス。
「では博士……あなたは私を、迎えに来てくれたのですか?
地獄で、貴方のお傍に置いてくださるの??」
「確かに、私は地獄に居る。この星の中心に捕らえられ、常に高温高圧の中で押しつぶされ、焼き続けられている」
「そ、そんな……」
「ここは煉獄だ。永遠に続く煉獄だ。
私のような罪人にとって、相応しい場所だ」
「私も罪人です。あなたと同じ罪を犯しました。
私も、あなたと一緒に焼かれるべきです」
「それは駄目だ。そんなことは、私は求めていない!」
「なら、なぜ私の前に姿を現したのです??
……私を苦しめるなら、せめて傍に置いてください」
「苦しめる為ではない。詫びる為だ。
すまない、メアリーが木に登るのを、止められなかった」
「博士、貴方は、メアリーを見守ってくださったの??」
「ああ……彼女はまだ若い。誰かが守らねば、巻き込まれて苦しむ」
「それで、イギリスでも、妹を守ってくださったのね」
「君たち姉妹は、私にとって、家族のようなものだ。
ひと時たりとも、目を離したりは、しない」
「今回も、妹を守ろうとしてくださった……」
「ああ、自分では手を下せないので、動物たちに頼み込んでね。
でも、まさか、あの木に登るとは、思わなかった」
「妹は、物怖じしませんの」
「そこは、姉妹で似ているよ」
「……」
●はにかむフランシス
※ジムがフランシスを呼ぶ声が響く
「フランシスさんっ、メアリーの意識が戻った!!」
■現実に引き戻されたフランシス、目を覚ます
「!!」
●メアリーの元へ急ぐフランシス
-フェードアウト
#026 姉妹に起きたこと、了。

※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。
