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恋文

若い頃の私は、今からは想像もつかないほど、高温で高圧で、暑苦しい存在だった。
密度が濃すぎて、光すら真っすぐに飛べなかった。
私は、電磁気力と戯れ、至る所で、若気の至りを産んだ。

そんな私も、昭和の枯れすすきとなった。
髪は流星として流れ去り、体は、やせ衰えて冷えた。
ときどき女を捕まえたヒッグス場も、もはや、ハエ取り紙の如し。

そんな時、君と云う、ごくごく弱い力に触れた。
私は、か弱さを見出し、優しき風に震えた。
君の本体を、必死に探した。

しかし、君はあまりに静かで、まるで本体は高次元にあるかのように、捉えがたい。
それなのに、君から染み出し、漏れ出す波は、何処に居ても、私に作用する。
君が、どれほど遠くにあり、姿は見えずとも、君は私の心を曲げる。

嗚呼、私は、貴女という穴に落ちた。
禿げた長兄は、それを『井戸』と云い、時に『イデ』と訛った。
私のイデアは、貴女という井戸に落ちた。

私は、今も心を貴女に捕らえられたまま。
私は、未だ可能性の獣に過ぎない。
今朝も、オールトの雲間に漂う。

貴女は、愛であり、慈悲であり、夢であり、
私は、貴女を重力と呼ぼう。
君を愛している。

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