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胎内めぐりとしての8番出口(映画感想文)

8番出口実写映画化のニュースを聞いた時は驚いた。
間違い探しゲームの実写映画化ってどうするんだろう。画面も変わり映えしないだろうし、自分で考えながらプレイするゲームや実況者の喋りが聞ける実況と違い、席に座って観てるだけの映画だと流石に途中で飽きちゃわないか?

話が変わってきたのは主演が二宮和也さんだと発表された時だ。
私は暗殺教室も推しの子も実写版をわりと評価しているので、どちらにも出演されていて、漫画のキャラクターを実在の人間に落とし込むニノの演技力を信頼していた。
8番出口の主人公(プレイヤーキャラ)にはキャラクター性はないのだが、スクリーンの中に目を惹くスターがいるかいないかはやっぱり重要だと思う。
これなら脚本が相当おかしくない限り大丈夫なのではと、そう期待して公開初日に観に行った。

※ここからはネタバレ満載の感想になりますので、映画を鑑賞後に読んで下さい。
※あまり情報入れずに観た方がいい映画だと思います。




上映が始まり、まず流れる音楽はボレロ。
予告でも流れていたが、8番出口という作品に同じ旋律と小さな変化の繰り返しの音楽であるボレロを選んだ時点でセンスがいい。

冒頭から巧いなあと思う演出が盛り込まれていて「当たり」を確信した。
ゲームと同じくプレイヤーキャラの視点から始まる電車内の映像。
窓ガラスに映る姿でこの視点の持ち主は二宮和也演じる「迷う男」だと分かり、この一瞬さえ後に伏線として回収されていく。
電車内で泣き出す赤ちゃんに、周囲に申し訳なさそうにする若いお母さんを怒鳴りつけるサラリーマン。
あまりにも気の毒なこの光景を見て見ぬふりをする乗客たちの一人に、迷う男もいる。

迷う男はどうやら派遣で働いていること、別れ話をした彼女の妊娠が発覚したこと、吸入器が手放せないことからどうやら喘息らしい?ということが次々判明していく。
まさに人生に迷い、追い詰められている。
そして8番出口の例の通路に迷い込む。
ニノに設定詰め込みすぎでは、とちょっと思ったが、後に父親を知らずに育ったことも判明する。名前も無いのに設定てんこ盛りだ。

ゲームと同じ異変探しのシーンは、観客には分かるだけにもどかしい。振り返って〜!上見て〜!!と応援上映では盛り上がること間違いなしだ。
前半はほぼ二宮和也の一人芝居なので、贅沢な使われ方だった。
荷物を投げ出し、床に倒れ込んで打ちのめされるシーンは本当に気の毒である。追い込まれる演技で輝く男、二宮和也。

歩く男の章では、河内大和さん演じるおじさんのいい人っぷりに泣けてきてしまった。
こんな訳が分からない状況なのに、喋らない謎の子どものことまで気遣っている。
迷う男と出会った際についていた頬の傷はキレたおじさんに殴られたのだろうか?と一瞬でも疑ってしまってすみませんとなった。
喋らない子どもに苛立っても何とか切り替えて、なるべく笑顔で接しようとする、その善性が素晴らしいよおじさん…。
怖いと思ってたあの笑顔、あれはギリギリの精神バランスで、それでも子どもに怒りを向けまい、不安な思いをさせまいとした精一杯の優しさで出来た笑顔だったんだね……。

叫んだセリフが上手く聞き取れなかったのだが、おじさんにとって「今日」は誰かに久しぶりに会える日だった?らしいので、彼もまた人生に迷っている内にここに入り込んでしまったのかもしれない。
女子高生っぽくない女子高生も恐らくおじさんと同じ経緯で取り込まれてしまったんだろうなと思う。

急に出てきた子どもは、迷う男の未来の子どもであるのは間違いない。
ただ現状、迷う男は彼女の妊娠にどう反応したらいいのか分からない、子どもの存在を受け止めきれない状態だ。

派遣で働いていて恐らく収入が不安定。吸入器が手放せない健康面の問題。
そして後に分かる、父親を知らないという彼の生い立ちの問題。

そんな状態の未来の父親と、未来の子どもが出口を探して歩く姿が、胎内めぐりを連想させた。
胎内めぐりとは清水寺などで体験出来る、菩薩の胎内に見立てた真っ暗な道を歩き、外に出ることで生まれ変わることが出来るというものだ。

一度だけ異変として現れた小松菜奈さん演じるある女(母親)は、自分のお腹に手をあてていた。
これは子どもが産まれるための物語であり、迷う男が父になるために生まれ変わる物語なのだ。

地下道を胎内に見立てているのなら、終盤に起きる洪水の異変は破水を意味していたのだろうか。
破水のあとに父子は離れ離れになり、子どもは水浸し(羊水?)のまま出口へと進んでいく。
その後、迷う男も無事に8番出口を出ることになるのだが、ここで引っ掛かるのが、子どもが父親を知らないと言っていたことだ。
途中にあった未来(幻想か夢かも?)の海のシーンでは親子三人でいたので、辻褄が合わない。

実は8番出口を出ても繰り返しは終わっていない。
迷う男は再び電車に乗り込み、泣き出す赤ちゃんと困るお母さん、そして怒鳴るサラリーマンとまたしても遭遇する。
映画のラストはイヤホンを外し、親子を助けに行く迷う男の「決断」で終わる。

恐らくここで彼が決断出来なかったら、また「迷う男」として8番出口に辿り着いていたのではないだろうか。
そしておじさんや女子高生と同じように異変として取り込まれ、彼女は子どもを一人で産んで育てることを決意するので、8番出口で出会った子どもは父親を知らなかった。

そういうこと…じゃないかな……?と考えているのだが、映画を観終わった後に勢いで書いているだけなので、小説版やパンフレットを読めば全然違う答えが書いてあるのかもしれない。

しかしホラー要素そんなに無いのでは?と軽く考えて行ったら結構怖かったので、迷う男は異変に気づいたら立ち止まってないで即引き返してくれと何度も思った。
巧みな構成と二宮和也さんの惹き込まれる演技で飽きることなく楽しめた映画8番出口。
いつまでも続くような夏の終わりに観る映画としてもピッタリでした。

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