【読書感想文】逃亡者
ある日突然、「殺人犯」として追われる身になったら
一体どうなるのだろう?
本書に登場する主人公、黒崎は将来有望な芸人
犬好きな彼は、犬の散歩中にジッポライターを拾ってしまう
高価なライターで、貧乏人の彼には買うことができない
そのため、届けたところで、とポケットに入れたのだが
そこから始まるのが逃亡劇だ
公安警察を名乗る男たちと
どう見てもヤクザだと思われる男たち
捕まればどんな目にあわされるか分からない
かといって、誰かに助けを求めたくても
自分の部屋には死体があり
殺人犯として指名手配されている
殺した記憶はない
しかし、自分が使っている包丁で殺害されている
テレビに流れるのは、黒崎の写真と犯人と断定された言葉
恋人に助けを求めたくても
そんなことをすれば恋人まで巻き込んでしまう
たった一人、自分を崇拝してくれる後輩に
犬の世話を頼み、この状況から逃げ延びるため
また走り出す
非常に分かりやすいストーリーだ
決してありえない話でもない
拾ったものが国家機密のデータが入ったチップ入りなんて
ないとはいえないだろう
最近では、手袋を拾ったらヤバイなんて話もネットに転がっている
さて、この黒崎
どうやって逃げ切るのか?
公安のやり方は、助けるようなそぶりを見せて
追い詰めていく
捕まった黒崎をうそ発見器に掛けたり
MDMAなる抗精神薬を飲ませたりして
チップのありかを探るわけだが
根っからの芸人の彼は
「これはドッキリだ」
と思いこみ、バカな言葉を発してしまう
何とか公安の手から逃げることができたが
またしても追手が迫ってくる
二度と捕まることは許されない
窮地に追い込まれた彼は
諦めが頭をもたげる
しかし!
恋人からの言葉で、このままやられてなるものかと
ある計画を思いつく
作り話しとはいえ、逃亡者の世界にのめり込める
一文自体は長くはなく
短い文章に、黒崎の焦りが見える
思わず、あー! また見つかった!
逃げろ! っと叫びたくなる
もし、私が黒崎だったらどうだろうか?
誰も助けてくれない状況で
ひとりで戦い逃げることができるのか?
いや、できないだろうなぁ
どこかに隠れて、捕まらないようにするのがオチだ
あるいは警察を頼ってしまうか
しかし公安は警察
結局は、助けを求めて飛び込んだ交番が命取りになる
ラストは嫌疑も晴れ、
国家機密の件も解決するのだが
良かったね、で終わったのではつまらない
さて、どんな着地をするのだろうと思っていたら
こんな終わり方もあるのかと思った
いってみれば普通の終わり方なのだが
黒崎の現在を、あんな形で見せたというのが
面白かった
全体的に面白くて、スラスラ読めるし
世界にどっぷりつかれるものなのだが
切り口を変えることによって
同じ結末でも、全くの別ものになるのだと
新たな技法(?)を見たような気がした
タイトル:逃亡者
著者:新堂冬樹
出版:角川春樹事務所
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