【読書感想文】安楽死特区
つい先日、愛犬の安楽死を決断し
天国に送った自分
あの悲しみと苦しみを忘れられないのに
どうしてこんな本を手にしたのか?
たぶん、だからこそ、なんだと思う
本書は、動物に関しての安楽死ではないけどね
世の中には、末期癌に侵され、痛みと苦しみにもがいている人がいる
その他の病気でもそうだろうし
認知症に恐れを抱いて、まだ意識がはっきりしているうちに
自分の決断で死を選びたい人もいるだろう
本書はまさにそういう話だ
認知症になった作家や
癌に侵されて痛みと闘いながらも政治の場から抜けず
最後の仕事として「安楽死特区」を作ろうとしている政治家
恋人が病魔に侵され、動けなくなっていき
死にたいと繰り返し「安楽死特区」へと希望する
愛する人の死に抵抗する恋人
自分ならどうするのだろう?
以前読んだある作家の本に
「家族もいない、看取ってくれる人もいない。
安楽死が認められている国へ行き、
最後は自分の意思で死にたい」
と書かれていた
当時の私には、それがピンとこなかった
だが、今回本書を読み
もし一人だったら、悲しむ人がいなかったら?
安楽死というのは、生き抜いた人の権利なのではないかと思った
死ぬまで苦しみ続け
痛みと格闘するならば、まだ動けるうちに
安楽死を選びたい
癌の痛みというのは壮絶らしいし
人生の最後をベッドの中で痛みと闘いながらなんて
絶対にいやだからね
だが、私には家族がいる
「お母さん、100歳まで生きて!」
と、無理難題をのたまってくれる娘がいる
この娘を置いていくことはできないなぁ
だから、安楽死という選択肢は今の私にはない
ところで、この本の著者だが
長尾和宏氏は、医学博士で
長尾クリニックの院長であり、
一般社団法人日本尊厳死協会の副理事長でもある
その他にも肩書があるが、割愛させていただこう
言いたいのは「日本尊厳死協会」だ
尊厳死とは安楽死と違って、
「延命治療はしない!」と言っておけば
数多の管に繋がれ、苦しさの中、生かされることがない
それでも家族はきっと
一日でも長く生きてと願うだろうな
終わりが近いと本人が思っていても
家族の意向を無視できないだろう
そこで、生前に家族と十二分に話し合っておき
「尊厳死を希望します!」と明確にしておく
すると、自然な経過で死を迎えることができるという
一時は尊厳死でさえ、問題視されていたけど
日本も変わってきたんだな
本書が言いたいことは考えるまでもなく
安楽死は必要か否か、という問題提起だ
終盤までは、賛否両論だった
それでも、安楽死のできる特別区はあるべきだと語っている
しかし、安楽死を選んだ政治家の最後によって
安楽死特区の住人以外の人間が自殺し
死者が出たことで、もっと議論すべきだということになる
おかげで、安楽死特区はしばし休眠することになるのだが
その逆に、認知症などで苦しんでいる人の
安らぎの場を作ろうという動きが生まれる
末期癌患者だけが苦しんでいるわけではない
という、前向きな結末なのだが
さらにもう1つ
ぞっとしたのが、
安楽死特区に入る人は、高額を支払わねばならない
どうせ死ぬんだから、隣接されているカジノで
大金を落としていけという政府の下心
死に怯え、痛みに苦しんでいる人を
ハゲタカのようについばむ政府の策略だった
さて、これが現実だとして
あなたは「安楽死特区」に移住したいと思うだろうか?
私は……まだ生きる時間があるので、
答えが出なかった
タイトル:安楽死特区
著者:長尾和宏
出版:ブックマン社
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