【読書感想文】スピン
人はどうして犯罪だと知りつつも、犯してしまうのか?
そこには、犯罪にかかわってしまう影がある。
この話は、そんな裏事情を明かしていると思いました。
登場するのは、15歳の少年と高校生。
高校生には暗くて辛い過去があり、麻薬に手を染めてしまう。
その他の子どもたちも、いじめにあっていたり、
大人からバカにされたりと、心がねじ曲がっている。
そんな苦しみを分かち合えたのが、ネットで知り合った仲間。
自分の苦しみを話しているうちに、コイツラこそが真の友だ。
と、思ってしまうわけです。
確かに、同じような境遇だと、
痛みを分かち合うことができるし、よき理解者に見えます。
しかし、そこで『社会に一矢報いてやろうぜ!』
となると話が違ってくる。
これは犯罪だからやめよう。
そう言って止めてくれるのが本当の友。
ですが、傷がある彼らは同調してしまう。
こうして、おのおのがバスジャックして東京タワーで合おう!
という目的を持ってしまいます。
それが間違った目的だと気が付かずに発進してしまった彼らは、
乗客を人質にしてひたすらバスを走らせます。
中には、乗客を殺してしまう少年がいたり。
幼い子供まで巻き添えになったり。
4台のバスが、あらゆる恐怖にさいなまれながら進みます。
この作者、山田悠介氏らしからぬストーリーだな、
と思いつつ読み進めたのですが、
ラストは、やっぱり山田ワールドだ!
というオチがありました。
言いませんけどねw
でも、バスの中でのやり取りはさすがです。
運転手の恐怖に歪む心境や、
空腹を訴えた時に女性がサンドイッチを差し出したり。
あるだろうなぁ、と思いました。
犯罪者で、バスジャック犯とはいっても、
相手は15歳程度の少年ですから。
大人だったら、つい出しちゃうよね。
という、その心理。
そして、バスは警察に追われながらも東京タワーを目にします。
見上げるタワーの高さ。
ライトアップされている状況。
まさに、目に浮かびました。
彼らは、目的だったタワーを目にして、
もうすぐ仲間に会えると心躍る。
その逆に、乗客の女性に恋心を抱き、
タワーが見えた途端に、別れを意識する少年がいたり。
女性の方も、助けてあげたいと切に思ってしまったり。
これがつり橋効果か。
と、読みながら納得しました。
しかし、東京タワーに集まった彼らはどうなるんだ?
この先、捕まるだけじゃないのか?
一体どういうラストにするつもりなのだろう?
さすがに山田ワールドですから、簡単じゃないだろうな。
そう思ったら、やっぱりのどんでん返しです。
そうくるかー!w
それにしても、読む手が止まらない作品でした。
一台ずつのバスが、最後はタワーに集まる。
そこまでの展開が、すごいな~と思いました。
だってね、考えてもみてくださいよ。
バスという狭い空間で、どんな人間ドラマが考えられます?
しかも、犯罪者は少年。
どの子も、いじめだのバカにされただのという恨みを抱えての行動です。
それで長編を回していくなんて、すごいとしか言いようがない。
しかも、ストーリーに破綻がない。
どのシーンを読んでも面白い。
ただ、ちょっとだけ残念なところがありました。
それは犯人たちが捕まったシーン。
連行されたと書かれているのに、また同じ様なシーンの重複。
これ、いらなくないか?
と、つい思ってしまった。
きっと、山田氏からしたら、そこで悲しい感動を呼びたかったのでしょう。
けど、計算しすぎちゃった感じがしますね。
ラストは、もう少しアッサリの方が、
より感情移入出来たような気がします。
とはいっても、大好きな山田ワールドです。
次はどんな『裏切られ方』をするのか、とっても楽しみですw
タイトル:スピン
著者:山田悠介
出版:KADOKAWA
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