【読書感想文】海の中の観覧車
読後、即座にパソコンに向かい
記憶が薄れぬうちに、記事にしたくなるような話でした
幸島(さちのしま)という、小さな島で起こったガス爆発
それによって、島の住民が10年間苦しめられ
企業は、ことを見まい金程度で黙らせようとする
ざっくり言うとこれだけなんだけど
思い出すのは、遠い昔
私がまだ子供だった頃、こういった話は結構あった
企業側は住民を使うけど、その危険性を何も教えない
有毒ガスが発生したり、爆発が起こったり
事故がおこり、それでも企業は悪くないというスタンス
読みながら、あの頃の事故の話だなっと思った
だが、これだけだと「難しいんだろうな」と
本書を手にしたくなくなるだろう
そこで、もう少し詳しく言うと
登場するのは、中学三年の男の子
家は母と男の子(主人公)の二人暮らし
離婚理由は分からないけど、父親は会社の社長
しかも、事故を起こした企業側だ
少年は、ある日届いた差出人不明の封書を手にする
それを捨てることが出来ず中を見てみると
小さなビニール袋に入った黒い砂
意味も分からず引き出しに入れると
それを母親が見つけて、ことは広がっていく
この辺で、この砂、何かあるな
と、読んでいる方は気が付くけど
まだなんなのかは分からない
母親は、その日からメンタル最悪となり
とうとう息子を置いて入院してしまう
いくら中学三年とはいっても、強い子だなぁと思う
私の娘なら、絶対に一人残してなんて無理だ
さて、ひとり留守番となった少年は
夢の中で見た景色が気になる
優しい魔法使い、遊園地、双子の子ども、クマの着ぐるみ
あれは何だったんだろう?
そこから物語は深い闇へと入って行くのだが
少年がたどり着くのは、父親の企業人としての考え
そして、父親でありながら冷たい視線
さらには、島で遊んだ双子の兄弟
そこにあるのは、憎しみ
企業によって、生活を潰され
金で全てをうやむやにされてたまるかという怒り
企業側の思惑と、被害者の悲しみと怒り
二つの思いの中で、多感な少年は心を揺さぶられる
なんとも悲しくも辛い話だが、
作り話だと一蹴することはできない
なにせ、そういった話が多々あった時代があるのだから
それを知らずに過ごしていいものではないし
忘れていいものでもない
私がそういった事件を聞いたのは
あまりに幼く、親が話していることが
記憶に残っている程度だが、今回本書を読んだことで
あの頃の親が言っていたことは、これだったのかと
記憶がよみがえった
だが、その記憶があるからって
一瞬にして、生活の全てを奪われ
家族を奪われた人たちの気持ちを分かることは出来ない
また、簡単に分かった気になるのも危険なことだ
主人公も、同じように
「分かった」とは言う必要はないと述べている
そこにたどり着ける中学三年生が
やたらと大人だなと思う反面
これだけ重く深い題材を読みやすく書ききった作者は
私達読者に、何を問うているのだろうか?
出来ることなら、一読していただきたいと思う
タイトル:海のなかの観覧車
著者:菅野雪虫
出版:KODANSHA
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