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【読書感想文】十字架のカルテ

内科医である知念実希人氏だが、
精神的な病気を題材に選んでいることが多い。
この作品も、同じように精神病院の話だ。

主人公は、精神鑑定医になりたいと望み、
病医院長の元修行を積む。
病院には、軽度の精神疾患の人もいれば、
重度の人もいる。

そこで主人公は犯罪者の鑑定をするわけだ。
つまり、犯罪が精神病によるものなのか、
それとも、精神病であることを偽り、罪から逃れようとしているのか、
そこを判断するために奔走する。

とはいえ、相手は犯罪者だ。
何をするか分からないという恐怖がある。

主人公が、ひとりで犯人と面接すると言い出した時などは
さすがに「いいのか?」と思ってしまった。
何せ、主人公は若き女性だ。
相手は、人を殺した犯罪者。

しかし、精神障害により心神喪失状態であれば無罪
または、不起訴となる。
それを判定するためには必要なこと。

そうはいっても、何があるか分からない。
そんな状態の人を相手に、一対一というのは、
読んでいるこちらとしてもハラハラする。

主人公がやっているのだから、最悪の事態になるはずはないとは思う。
それは水戸黄門が絶対に助かるのと同じで、
いざとなったら助けがくる。
それは分かるが、未知なる世界の恐怖は、
シッカリと読者の心臓を鷲掴みする。

そこは、知念氏の筆のすばらしさなのだろう。
主人公の恐怖心や、犯罪者の変貌。
それが手に取るように分かるのだから、
思わず知らず、吸い込まれて行くのも頷ける。

この主人公、どうして鑑定医になりたかったのか?
こんなに危険な仕事に自ら飛び込むなんて、
普通に考えたら無謀としか言いようがない。

そこには、なるほどと思うような理由があった。
それは、親友が犯罪者によって殺されているから。
その犯人は、心神喪失ということで不起訴となった。
それに納得がいかない主人公は、犯人の闇を知るべく
精神医療の世界に飛び込んだのだが。
なんと、鑑定医として修業を積みだし、
4か月ほどしたある時。
親友を殺した犯人が、またも同じ犯罪を犯し、自分の前に現れた。

怒りや憎しみ、悲しみなど、あらゆる感情につぶれそうになりながら
主人公は精神鑑定に挑んでいく。
しかし、すんなりとはいかず、上司の怒りをかい
一時は職務から解かれてしまう。

そりゃそうなるよな。
とは思うものの、この先どうなるのだろうと、
読む手は止まらなかった。

元々、病院ものが好きで、さらには精神病的な題材が好きな私だけに
精神疾患という闇を主人公と共に見続けて行った。
こうして医院長の鑑定医としての思想などに触れながら
鑑定医の大変さと怖さを垣間見ることができた。

精神疾患と一言で言われるものの、そこにはあらゆる症状があり
あらゆる原因がある。
物語としても大変興味深かったが、それ以上に環境によって
壊れてしまう人間のはかなさと、病気の皮を被り
犯罪から逃れようとする狡猾さ。

また、それに立ち向かう医師がいることを知り、
大変勉強になる話だった。


タイトル:十字架のカルテ
著者:知念実希人
出版:小学館


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