【読書感想文】6days 遭難者たち
さぁ、今日は何を借りようか。
娘と2人で図書館内を歩き、帰ろうとしたその時、娘の目に飛び込んだのが本書。
冒頭を読んだ娘「これ、読みやすいよ」ということで借りてきました。
確かに読みやすい。
児童図書の棚にあったので、中学生向きなのかも?
しかし、内容は非常に濃い。
女子高生3人が登山をするのだが、途中で「まだ時間あるよね」と計画していた道をそれてしまいます。
「そんなことしたらダメだよ!」
親心で叫ぶ私は、結局遭難した三人に「ほら、そうなる~」と呟きます。
それもタイトルを知っているからのこと。
遭難しなければ、タイトルに合わなくなる。
楽し気に進む三人だけど、その背景はそれぞれ。
リーダーの美玖は、山岳警備隊だった祖父を亡くし苦しんでいた。
痴呆症の祖父に冷たいことばを投げてしまったために、ひとりで出かけて亡くなったのだと、自分のせいだと責めています。
お前のせいじゃないと言われても、それで納得できるはずもなく、祖父と霧ケ岳に登る約束を果たせなかったと嘆きます。
また、母が乳がんだと知り、母を失うのではないかと不安に苦しむ亜里沙は、母と二人家族。
母を失うことに恐怖し、なんとか人生を好転させたいと占いに頼ります。
そこで「登山」と「キラキラ光るもの」がラッキーアイテムだと知り、美玖に登山を提案します。
三人目が由真。
母が再婚し、再婚相手は大変良い人なのだけど、生まれてきた兄弟と両親の幸せそうな姿を見て、自分は強く優しい人であらねばならないと思いこみ、寂しさをひた隠しにしています。
そんな時の登山の話。
由真は同行することを決めます。
こうして登った山は気持ちがよく、すがすがしさが体の中を駆け巡ります。
ですが、遭難してしまい、帰ることができなくなる。
自分の手すら見えない暗闇がやってきて、泣き出す亜里沙。
それをなだめる由真。
苛立つ美玖。
時にぶつかり、時に涙し、食料も底をつき水すらなくなる。
下山したらダメだと、とにかく上っていき川を見つけ、ほっとしたのもつかの間。
由真の発熱。
亜里沙の怪我。
めそめそとなく亜里沙は幻覚を見ます。
自衛隊が助けに来てくれた。犬を連れている。
窮地に陥った時、自分が一番欲するものを見ると言います。
そこまで精神が追い込まれた状態でも、お互いを助け合う少女たち。
そんな時、美玖もまた幻覚を見ます。
それが幻覚なのか、それとも祖父が出て来てくれたのか。
「おまえが2人を助けるんだ」
そう言って消えていき、目が覚めたとき美玖は決意します。
崖を上れば、電波が届くところに行けるかもしれない!
二人を置いて崖を上ったはよかったが、そこに電波はなく、次に待っていたのは絶壁の崖を下りることでした。
これを下りれば、きっと電波が届く!
残り3%の充電が切れる前に、たどり着かなければ。
そう思って下りる崖。
しかし、強風にあおられ、叩きつけられるように落ちてしまいます。
美玖がそんなことになっているとは知らない二人は、救助隊がくると信じますが、やってきたと思っても、すぐに帰って行ってしまいます。
「美玖ちゃんは、救助隊に連絡できたんだよね」
もしかしたら、死んでしまったのかもしれないという不安を抱えながら、高熱にうなされる由真を支え耐える亜里沙。
骨折しているのかもしれないと思う亜里沙の足は、腫れあがりヒルに食いつかれ、それを剥しとる由真。
二人助け合いながら、隣にいる「死」を感じていました。
死ぬなら遺書を書きたい。
でも、遺書を書くためのペンも紙もない。
ならば死ねない。
最期にお母さんに言いたいことがある。
伝えたいことがある!
だから、死ねない!
究極の時に直面した亜里沙は、甘えてばかりの自分を捨てます。
熱を出しても自分を支えてくれる由真。
今度は自分が支えなくては。
自然と戦いながら、亜里沙の中に新たな自分が生まれます。
由真もまた、優しくて強くて頑張り屋だったけど、それが本当の自分じゃないと思うようになります。
聞き分けがいいだけが自分じゃないんだ。
本当はお母さんに甘えたかったんだ。
こうして弱い自分を見つめた由真と、本当の強さを手に入れた亜里沙は、救助を待ち続け、再びヘリコプターがやってきました。
亜里沙は鏡を手に、太陽の光を味方につけ、とうとう救助隊に気が付いてもらうことができました。
美玖もまた、倒れているところを民間救助隊の人に助けてもらい、一命をとりとめることができました。
と、長いあらすじになりましたが、これだけ書かないとならないのには、理由があります。
本書は、本当に素晴らしい内容なのですが、感性の鋭い人にはきつい話だと思います。
娘は自閉症スペクトラムのため、私なら「感動した~」で済む話でも、それだけでは終わりません。
人の生死による極限状態を読んだら、きっとメンタルが落ちることでしょう。
小説でそこまで落ちるなよというのは簡単ですが、それは本人にしかわからない感情でしょう。
だから「読まない方がいいよ」と提案したわけです。
娘「そっか~。じゃ、読まない。お母さんの感想文で我慢する」
というので、このようなあらすじタイプになったわけです。
さて、感想ですが。
感動したと、一言でいうのは簡単なこと。
どこに感動したのか?
と考えるに、感動というのとは違うと思いました。
極限状態で、友を気遣い、助けようと我が身を振り返ることなく突き進む美玖。
高熱で苦しいのに、亜里沙の足にたかるヒルを掴み、石を叩きつける由真。
泣き虫で、他人に頼ってばかりだった亜里沙は、そんな由真を見て強く成長していきます。
極限状態で人は変わると言いますが、そうなったら誰も頼れない。
頼る相手がいたとしても、頼ってばかりではいけない。
女子高生がそこまで考えることができたのも、死を意識したからではないか。
果たしてそうなったとき、自分はどうなのだろう。
恐怖し、泣き、諦めてしまうのではないだろうか。
あと1日遅ければ、誰も生きてはいなかった。
土壇場で、天が味方してくれたと私は思います(小説だけど)
生と死をテーマにした作品は多いですが、これほどまでにのめり込んだ作品は、初めてだったかもしれません。
タイトル:6days 遭難者たち
著者:安田夏菜
出版:講談社
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