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【読書感想文】しろひげ在宅診療所

本書を手にしたのは、毎度おなじみタイトルだ。
「しろひげ」と見て「あかひび」を思い出し、そういう感じの内容かなと想像した。
実のところ「在宅診療所」というワードは頭に入ってこなかったのだ。
医療関係のストーリーだな、くらいだった。

読み進むうちに疑問を持った。
医者が出てきて安定のストーリーを感じていると、新宿歌舞伎町へと話が飛び、キャバクラのスカウトシーンになる。

え? おまえ、誰?
とは思うが、きっとこの人が患者になるんだろう。
このシーンはきっとそのための伏線。

そう思ったら違かった。
なんと、医者。
お金がなくて、大学を休んで金儲けの為にスカウト業をしていた。
どうしてもその話を書きたかったんだろうな。
次のシーンでは医者になっているw

つなぎが欲しかったな。
急にシーンがかわって、医者です! と言われても、なかなか頭が追い付かないんだよね。

ところで、本書って小説だよね?
タイトルのトップにわざわざ「小説」と印鑑のように印刷されている。
事実じゃないよ、物語だからね。と言いたいのだろう。

だが、プロフィールを見てみると、医学部に入ってる時にキャバクラのスカウトで活躍したとある。
その後、ケニアでエイズプロジェクトを立ち上げたり、県議会選に立って当選。2年後には市長選にでて勝利している。

県議の方が立場は上だろうに、なんで市長になるんだ?

現在は江戸川区の「しろひげ在宅診療所」で院長として頑張っているわけだけど、本書と同じなんだなぁ、流れがさ。

だから、たぶんこれ、実話だろうな。
少しは盛ってるかもしれないけど、いや、作られてる部分もあるかもだけど。
きっと実話だと思うw

実話だと思うと話はさらに深く刺さってくる。
80歳で一人住まいの女性。
この方は心臓弁膜症で苦しみ、毎日、毎朝しろひげ先生に電話して「苦しいの。本当に苦しいの、つらいの」と言ってくる。

だが、駆けつけたときには苦しさも落ち着き、ケロッとしている。
普通の医者なら、深夜3時半に電話が来てそんなことを言われたら

「薬飲んで、30分は様子を見てください。
それでもダメなら救急車を呼んでください」

と言われてしまうだろう。
だが、しろひげ先生は違う。かけつけるのだ。
そのために、風呂にも入らず着替えもせず、ベッドに横になることもない。
多分かかってくるであろう電話の為に、ソファーに転がりうとうとするだけ。

かけつけても、結局はケロッとしている婦人がにこっと笑顔なのだが。
こんなことなら来なければよかった。
そう思うのが人間だと思う。
だが彼は言う。

「50回呼ばれようと、そのうちの1回、行かなかったために後悔することになるなら、行く!」

これが在宅医療の本髄なんだろうな。

また、全身に転移した末期ガンの男性。
彼は若い頃にヤンチャをしたことが分かるほど、刺青があり小指がない。
口が悪く居丈高で、取り付く島もない。
人工肛門からは糞が流れ出て、布団を汚し、トイレに行くこともできず、尿瓶に入れるはずの尿が布団をぬらしている。

そのため室内は異様なにおいが立ち込め、普通なら部屋に入ることもはばかられる。
だが、献身的な介護のおかげと、先生の優しい言葉と本音で麻薬を服用し痛みを緩和する。

彼は言う。「ギリギリ人間でいたい」

人間でいるってどういうことだろう?
痛みを感じることもなく、何とか平和に生きている私には、その意味がわからない。
だが、痛みと戦い、いつ最期を迎えるかと恐怖していたらどうだろうか。

人間の尊厳。
人間としての日常。
そのありがたみが分かるのかもしれない。

患者を思い、いつ何時でもかけつける先生は「優しい」と患者は言う。
確かに、こんな先生がいたらいいなと思う。
もし、私が末期となったら、こんな先生に診てもらいたいし、在宅医療を受けたいと思う。
だが、そこには家族の負担がある。

結局ホスピスに入院するか、病院に入院するかになるのだろうね。
できることなら……と思うけど、そうなったら弱っていく私を見て、娘は苦しむだろう。
だから――健康でいなくちゃ!

話しがそれたけど、この先生、優しいばかりではない。
ちゃんと自分の情けないところも書いている。
それは女性問題だ。

7年も付き合い、結婚適齢期を迎えた彼女を放置してケニアに乗り込んでいる。
そんな彼の帰りを待っていた彼女を見事に振り、年上の女性と結婚しているのだ。
これだけを聞くと、なんて奴だ!
と言いたくなるが、きっとそこには人には言えない何かがあるのだろう。

でも、7年付き合って振るか?
彼女の7年返せよ!

と思ったことは秘密にしておこうw


タイトル:小説 しろひげ在宅診療所
著者:山中光茂
出版:KADOKAWA


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