【読書感想文】黄金旅程
直木賞受賞作の『黄金旅程』
著者は、馳星周氏だ
またしても、馬物語だが
今回は視点が違う
北海道で馬の脚に蹄鉄を付ける、装蹄師をしている主人公と
その幼馴染で、天才ジョッキーと謳われながら
薬物に手を出し、出所してきた幼馴染
本作品は、この2人を通して
友情とは何か、馬と人間の友情をも問いかけている
主人公が、馬の幸せな老後をおもんばかり
金にならない養老牧場を経営するところから始まり
私欲の強い幼馴染にバカだと言われるのだが
この幼馴染、根っからのクズだったのか
それとも、ジョッキーという地位によって人間が狂ったのか
だいぶ人間が狂っている
そのため、ヤクザから借金して
そのヤクザに借金の肩代わりをするのが主人公だ
しかも、自分の牧場を担保にしてまで
それもこれも、日高という土地の馬のため
と言ってるけど、それだけじゃないだろうなぁw
これで幼馴染が主人公を裏切ったら
読んでる方ははらわたが煮えくり返るところだ
最後はどうなるか、そこは書かないことにする
さて、何とかヤクザ問題が解決したかと思いきや
新たなヤクザが登場
別組織の底辺ヤクザだが、主人公は馬や彼女を助けるために
奮闘するのだが詰めが甘く
なんとヤクザに追い詰められ、ボコ殴りにあったうえに
大事な手を叩き潰されてしまう
きっと誰かが助けに来るはず!
読んでる方はそう思うが、物語だというのに
誰も助け来ねーじゃんかー!
となるw
ところが、ここがすごい
なんと、まさかの大震災
それによって、悪い奴は死んじゃうんだけど
主人公は何とか助かる
え? そんな助け方なわけ?
新しいパターンだな……
だが、主人公の方は馬が心配で
少しでも動かせば痛い手で運転し
競馬場へと走るんだなぁ
馬の為に我が身を顧みないその姿に
なんていい奴なんだよ、と思うわけだ
ところが彼女に「なにやってんのよ! 病院に行きなさい!」
と怒られて、結局入院することになった
彼女には逆らえないってところがリアルだ
この話は、競馬の話でもあるんだけど
レースの場面は最後にほんの少しだけで
人間の関わりに焦点が当てられている
ストーリー的には、競馬に興味がない人でも
十分すぎる人情ストーリーということで
かなり楽しめるのだけど
ちょっと気になったところがある
それが前半に頻繁に使われていた
「私は言った」「彼女が言った」というワードだ
これって、初心者がよく使うやつ
私も以前は使っていたし、気を許すと使ってしまう
それを作者も使っているわけだから
プロでも使うのか~
と思っていたが、どうも引っかかる
違和感を感じながら読み進めていくと
後半に入ったところで、そのワードが消えた
なんだ、なんだ、なんだ?
急に使わなくなったじゃないか
やっぱり同じ言葉が頻繁にでてくるよりは
ずっと読みやすい
流れも良くなって、これぞ馳星周だぜ!
という文章になっていく
すると読んでいるこっちも、スラスラと読めて
場面も脳内に入りやすくなり
読むスピードも速くなる
こうなると、面白さも倍増され
気が付いたころには終盤だ
ところが、主役の馬、エゴンウレアが重賞レースに勝って
よかったね~で終わるかとおもいきやその後も話が続き、
ちょっとラストがこれでもかって感じだったな
きっと作者は「これで、みんな幸せになったんだよ」ということを
読者に伝えたかったのだろう
競馬に焦点を当てるのではなく、馬の周りにいる人間の話だったが
とても面白かった
タイトル:黄金旅程
著者:馳星周
出版:集英社
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