見出し画像

【読書感想文】ザ・ロイヤルファミリー

なかなか読み終わることのできなかった「ザ・ロイヤルファミリー」

つまらなくて進まなかったのか?
いえ、そんなことはありませんでしたよ
めちゃくちゃ面白かったです

主人公の何とも堅苦しい喋り方
また、そんな主人公が語り手であるため
金持ちのマネージャーとして、心の揺れが巧みに描かれている
なるほど、金持ちのマネージャーなら
この語り口がベストだろう

それにしても、さすが金持ち
表面的には嫌な爺さんだった
本心は、馬を思う寂しん坊だったが
その表と裏が見事

馬の生末を考え、馬に関わることの辛さ
嬉しさ、悲しさが丁寧に描かれている

主人公は雇い主の人生を横で見て行くわけだが
この爺さん、妻の他に愛人がいて
子供まで作っていた

なんつー、エロ爺だ!
とは思うものの、寂しさゆえの心の揺らぎだったのかも知れない
しかも、その息子が爺さんが弱ってきたころに
主人公によって会うことが出来て
それがために、息子の人生が大きく動き出す

主人公の人生は、なかなか動かないというのに
雇い主のことには必死になるあたり
人情味のある主人公だ
だからこそ、周りに人が集まるんだろうな

しかしながら、爺さんの息子は
爺さんそっくりで、なかなかの頑固者
知らない馬主の世界に飛び込みながら
とんでもない責任を背負いつつも頑張るわけだが

よくできてると思うのが
大人ばかりの世界では、話が合わない爺さんの息子は
若い馬主やジョッキーと友情をはぐくみ
次世代が広がっていく

ここで本作品の主軸となる『継承』というテーマに遭遇するわけだ

親から子へと受け継がれ
馬たちも父から子へと受け継がれていく
だからこそ、子供は親を乗り越え、その先へと進まなければならない
作者は、子供が親を乗り越えることを望んでいるのだろう

母である私も、そこは同じ思いだ
子供が、娘が、親を乗り越えて大きく育ってくれること
それが親の一番の望みかもしれない

健康であって欲しいが、健康なだけで
一人で生きていけないのでは、これまた不安だ
親から何かを受け継ぎ、その何かを乗り越えていく
そうあって欲しいと思う

だが、残念なところもある

というのが、本書の中に幾度となく登場する競馬のシーン
「ロイヤル」という冠を付けた「ロイヤルファミリー」という馬がいる
その父馬は「ロイヤルホープ」

この二頭の走るシーンは、競馬が好きな人なら感動する場面だろう
しかし、前回読んだ「ラスト・イン・ザ・ターフ」をしのぐことはなかった
もちろん、素晴らしいと拍手喝采する人は多数いると思う
だが、私には「あ、競馬シーンだ」くらいにしか思えなかった

多分、世界観が違い過ぎたのかもしれない
イン・ザ・ターフは私達読者とそこまで違わない生活水準だが
本書は、金持ちが馬主という異世界だ
そこで感情移入が出来なかったのかも……

だが、爺さんの息子が馬の余生を考え
ただ勝つことではなく、将来馬が殺されずに
穏やかに生きていけるように
そのために、勝つんだと決意している辺りは
いいな~、と思った

そこまで考える馬主なら、きっと幸せになれるのではないだろうか
そんな馬主ばかりがいてくれたら、競馬界も変わるのかもしれない

最後に思ったのが
いや~、長い作品だった、ということw
こんなに長い作品を書くって、すごいな~って
普通に考えて、爺さんが死んだところで終わりにしても
よさそうなものなのに、それが次世代まで書いちゃうんだから

その上、本書を書くにあたっての参考文献の多いこと
これ、全部読んだうえで書いてたのか、と思うと
早見和真氏は、よほどの精神力の持ち主なのだろうと思ったわけです

タイトル:ザ・ロイヤルファミリー
著者:早見和真
出版:新潮文庫


※かめママブログ書庫入り口



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集