【感想文】夜行観覧車
湊かなえさんはどんな作品を書く作家なのか?
ここのところ、そんな思いが浮かんできていた。
そこで図書館を歩き、「湊かなえ」の書棚から本書を見つけた。
「夜行観覧車」
なんだろう?
どういう話なんだろう?
こうして手に取った世界は、読み終わって「うわぁ、やだなぁ」という思いが残った。
湊かなえさんといったらミステリー作家と聞いていたから、事件が起きて警察が介入して……と一般的な物語を描いていたのだけど、そうでもない。
事件は起こるけど、人間を掘り下げている気がする。
お金があっても、大きな家に住んでいても、そこには家族の問題がある。
一般的な生活水準の人が、金持ちばかりの土地で暮せば、そこにひずみが生まれたりする。
昔を思い出したんだけど。
娘が小学生の頃、オンボロの町営住宅に住んでいた。
まさに貧民街。
イヤ、貧民住宅。
娘は大きな一軒家を見て、「いいな~。二階建てのおうち」と言っていた。
その時私は
「どんなお家にもいろいろあるものだよ。
大事なのは、そこに笑顔があるかどうかなんだよ」
と諭したけど、そういう我が家だっていろいろあった。
本書はまさにそれだ。
金持ちばかりの住宅街に一般レベルの家族が家を建てた。
自分たちでは最高の家という思いだが、周りからしたら「小さな家」。
そのために主人公の娘は肩身が狭い思いをして、友達からバカにされたり。
おかげで癇癪ばかりを起こす。
母親は小学受験をするけど、受験に失敗。
積み重なるひずみによって、もう子供に向き合うことすら諦めてしまう。
頻繁に近所に聞こえる声は「クソババア」などの娘の怒鳴り声と、物を投げる音。
隣家の息子は、いい学校に進学して、礼儀正しくて羨ましい。
しかし、そんな隣家にも問題があって、ある日母親が父親を殺害してしまう。
羨ましいと思っていた家族が、一夜にして見下す相手へと変貌する。
人間ってこんなもんだよなぁ。
読んでいながらそんな思いが浮かんでくる。
だが、当の母娘も娘の癇癪にとうとうぶちぎれて、我を忘れて殺しそうになる。
それを近所のオバサンが止めに入るんだけど。
いるよねぇ、こういう人。
おかげで殺人とまではいかなかった。
これで娘も少しは分かるかな?
と、思ったらこれまた変わらない。
いや、1ミリくらいは変わったのか。
家を出るの、親子を辞めるのとなったけど、いつもは逃げてばかりの父親も「今日を乗り越えられれば、明日も乗り越えられるよ」という一言をつぶやく。
娘は中学生だ。
まだまだ先は長いけど、確かに今日を乗り越えれば、明日も乗り越えられるだろう。
では隣は?
こっちは、父親は亡くなり母親は捕まって、残るは三人の兄弟だけ。
どうやって生きていくのか、どうなるのかは全く分からない。
こっちもこれから苦しい現実がのしかかるのだろう。
ラストにおせっかいおばさんだが。
お金はある。
息子も結婚して家を出ている。
夫は働き者。
何も問題がなさそうに見えるが、ここにも問題がある。
それは息子が寄り付かないことだ。
だからおせっかいなのか、自分の寂しさを紛らわすために、目を外に向けているのか?
見事なまでに、イヤな感じの人間模様だった。
湊かなえさんって人は、人間を書くのがうまい作家なんだな、としみじみ思った。
ところでタイトルの「夜行観覧車」だが。
所々で、この言葉が出てくる。
海と山が見渡せる場所に大きな、日本一といわれる観覧車ができるという。
息子に電話するたびに「いつ帰ってくるの?」と聞いていたオバサンだけど、「再来年に観覧車が出来たら、帰ってくると良い」と言葉を変えている。
さらに「一周回っておりたときには、同じ景色が少し変わって見える」とも。
なるほど、観覧車を人生になぞっているのか。
問題が起こっていろいろあって、ぐるりと一周。
すると考え方も変わるってことか。
だから、主人公の娘も1ミリだけでも変わったってことかな?
作者がどんな意図で書いているのか。
そこははっきりとはつかめない。
だが、深いなぁと思った。
思春期の子供がいる家庭って、本当に大変だものね。
いやいや、大変じゃない家も多いけどさ。
それでも、何かはあるってことだよね。
タイトル:夜行観覧車
著者:湊かなえ
出版:双葉社
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