【読書感想文】ひと喰い介護
今回もタイトルに惹かれました。
「ひと喰い介護」なんて、タイトルだけで不穏さバッチリ。
どんな「ひと喰い」なのだろうと、ページを開いたのですが、
登場した高齢の男性。これがいるなぁ、と思うような人。
かつて町内会で役員をしたときに、会長をしていた男性にそっくり。
定年前は、会社でどんな役職だったのか知らないけど、
やたらと居丈高。
会社員時代と同じに、今も自分は偉いんだと思いこみ、
役員たちにげきを飛ばす。
まるでその人をモデルにしたかと思うような人物像。
はっきり言って、嫌いです。
この話、最初はお弁当の宅配から始まる。
美味しい弁当を運び、寂しい老人の話し相手になり、
結局、財産を持っている年寄りばかりを、
サロンと名付けて引き寄せ、最高の介護を保証しますと高額を請求。
口車にのせられた年寄りが、集うわけだが、そこはとんでもない魔窟。
王様のような生活は、ヘルパーがかしづき、
どんな要望にも応え、高血圧だろうと糖尿だろうと関係なく、
美食の限りを提供する。
しかも、運動らしい運動もせず、楽な生活だけの日々。
こんなことしていたら、体はどんどん弱っていく。
人間としての尊厳すら奪われる。
それに気が付いたときには、助けを求めることもできないほど弱り、
生き地獄。
こわ~。
高額財産を持っている高齢者がターゲットとなり、
とんでもない金額を請求されて、
1億なんてあっという間に消えていく。
でも、これがおかしいと気が付かない。
何せ口がうまく、人の心情を理解している女が管理職だ。
見事なまでの詐欺と、人を死に追いやるやり方。
だが、それは全て法律ギリギリラインの為、
摑まえることは難しい。
遺族が裁判を起こそうと考えるが、
管理職の女が恐ろしすぎて、証言台に立てる人がいない。
一般的に、立ち上がった人がいると、物事はご都合主義に動いていくものだ。
ところが本書は、全くそんな要素がない。
定年を迎えた銀行員が、特別待遇で天下りしてくるが、
悪事に気が付きなんとかしようと考えるんだけど、
これがバレて、裏目に出る。
えー、この男性が頑張って、悪事を暴くんじゃないの?!
と思うけど、これが本当の社会だよね。
そうそう都合よくはいかないし、力のないものは泣くしかない。
一箇所だけ、疑問に思ったところがあった。
それが、外出から戻った高齢男性。
トイレが間に合わなくて、玄関先でズボンを濡らしてしまう。
そこに、管理職の女が手を差し出し、尿を手で受け止める。
しかも飛沫が女の頭を濡らす。
ここ、頭が止まってしまった。
いつズボン脱いだんだろう?
玄関先にいるのに、そこでズボンもパンツも脱ぐわけない。
でも、手で受け止める……うーん。
なんか読み間違えてるのかなぁ?
それにしても、最悪な話だと思う。
思うけど、ありそう。
お金があると目を付けられやすい。
しかも、妻に先立たれ身寄りがない人は寂しいから、
その心の隙間にするりと入り込まれちゃう。
それで気が付けば財産を根こそぎ持ち去られてしまう。
ないとはいえないリアルさがある。
しかもこの男性、元気な時は居丈高だし、
自分が教えてやる的な超上からの物言い。
相手に対する敬意なんて全くない。
自分は大企業の部長だったんだ!
というプライドで生きている。
バカだな~、と思う。
寂しい人や、本当は小心者なのにそれなりの地位に就いた人って、
過去の栄光にすがりたがるもんだよね。
つくづく、貧乏で良かった~、と思った。
あ、いやいや。貧乏で良かったというのは言い過ぎ。
ひとまず食っていけるだけの金があれば、それでいいやねってこと。
ありすぎると、良くない。
全体的に、とっても丁寧に説明されている。
読者に理解を求めすぎて、何度も同じことを言い回しを変えて書いている。
そのため、「さっき言ってたよ」という流れが散見された。
こういう書き方もありなのかと思うけど、
やっぱりしつこく感じてしまう。
でも、ストーリーは大変面白くて、本書の世界観にすんなりと入ることができた。
タイトル:ひと喰い介護
著者:安田依央
出版:集英社
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