【読書感想文】ショートショート千夜一夜
ショートショートということで、興味が湧いた本書。
煌びやかな画像に、金魚が空中を泳いでいる表紙。
これだけで、どんな世界なのだろうと覗きたくなる。
しかし、ショートショートを集めたものなのだから、きっと本書の中の1つが表紙にまつわる話なのだろう。
そう思った。
ところが見事に違った。
本書の全ての作品が、多魔坂神社の祭りに現れる露店の話。
そこで売られているものが、日常の世界をほんの少し歪ませる。
ストライプのスーツが牢獄で、中には殺人者が収監されていたり。
「出せ! 出せ!」とあまりにうるさいから、スーツを裏返しにしたら、自分が収監される側になったなんて話もある。
また昔懐かしいひもくじ屋。
たくさんの紐の先には、子供が喜ぶおもちゃがぶら下がり、どれを引こうかと悩むものだ。
ところがこのひもくじ屋。
箱は真っ暗に囲われていて、全く中が見えない。
しかし、店主は望んだものが出てくるという。
もちろんハズレもあるのだが。
そこにヤクザがやってきて、やってろうじゃないかとヒモを引っ張るが、そこには大きなる邪心がある。
「札束!」と願うが出てきたものは?
という感じだ。
雪のドームというのはメジャーだが、雨が降るドームがあったり、射的の玉を鼻に詰めてどんどんうち落ちしていく男が現れたり。
よくぞこんなに夜店から話が膨らむものだと思った。
どれもこれも、どこかがねじれている世界。
そこで売る露天商たちは、ねじれたものを売っている。
あるいは、買い手がねじれている。
変な世界だが、次はどうなる?
どんな話なのだろうと、ついついページをめくりたくなる。
星新一のショートショートとは違い、こちら側の世界に近いのに、妙な隔たりを感じた。
ショートショートもいろいろなんだな。
そう思わせる作品だった。
タイトル:ショートショート千夜一夜
著者:田丸雅智
出版:小学館
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