「カッコーの巣の上で」鑑賞
※ネタバレあり
<感想>
鑑賞後涙が止まらず、しばらく友だちが寄り添ってくれた
残念ながら感動の涙ではなく、結末に対する「あんまりだ!」という悔しさや絶望の涙だった
なぜなら私にはこの結末が、結局支配構造の下の非情で無条理で非倫理的な現実には抗えなかった、というものに見えたからだ
映画版を観ていた友だちは、映画の結末はもう少し希望を感じる終わりかただったよと教えてくれた
そしてこの作品は登場人物の立場や心情もしっかり表現されていて、おもしろかったと言った
この作品の意図は私には分からない
でも悔し涙が出た理由は、どうしてもこの作品から「希望」を見出したかったからだと思う
松尾スズキ氏が公式コメント(Youtube)で言っていたように、この病院の支配構造が現代社会にも通じるような時代になってきた(ように思う)からこそ、それに抵抗することで希望を観たかったというのがひとつ
もちろんチーフが最後脱出することや、残された患者の心情の変化に希望を見出すことはできる
しかしそれに伴う犠牲(マクマーフィ、ビリー)がどれほど大きいことか
最初から抵抗などしなければ…という気持ちになる
この結末は私にとって希望あるものには思えなかった
また自分自身の入院経験が、この作品を異常に厳しく敏感に捉えてしまう原因だと思う
舞台と同じように精神病院の閉鎖病棟での入院を経験したからこそ、患者たちに希望ある終わりかたをしてほしいと強く願っていたのだろう
あくまでもこの舞台の病院における支配構造は、ひとつの分かりやすいメタファーだと思う
本質的なことは至極簡単に言うと、支配構造に抗い人間らしさを取り戻そうとする物語だと思っている
それでも舞台よりはるかに粗悪な環境での入院をいろいろ思い出してしまったことで過敏になり、舞台の本質を見失う原因になったのかもしれない
私のあの入院経験を今改めて考えると、医師や看護師の虐待は日常的にあったと言える
(もう10年前のことだが)
それでも帰る家がない人、社会復帰のサポートを受けられない人、その環境から出たくない人をたくさん見た
支配を甘んじて受け入れなければいけない、厳しい状況にある人たちがたくさんいたのだ
だからこそ、この舞台ではマクマーフィにはそんな現実を打ち破ってほしかった
ただ抗えないという現実だけを残して、舞台を終わらせてほしくなかったのだと思う
辛い舞台だった
でも今私は希望をもって現実を生きている
私の経験はもう過去のことだ
ただ、この舞台で感じたことを「忘れたくないこと」として心に残しておきたいと思う

