カーフキックは強い。でも、ONEキックボクシングとして面白いか?
先日、元K-1の卜部弘嵩さんがXで、カーフキックについて
「禁止にしていい技だと思う」
「武道としては理解できるが、競技としては疑問が残る」
と投稿していました。この投稿をきっかけに、カーフキックを巡る議論が一気に広がっています。
この話、内容そのものもそうなんですが、個人的には「誰が言ったか」が結構大事だと思っています。卜部さんは、空手ベースでローやカーフを使って試合を組み立ててきた側の選手です。いわばカーフを使う側の系譜にいる人。その延長線上に、今ONEで活躍している野杁正明や与座優貴がいると思います。
だからこそ、この発言は外からの批判というより、中にいた人の感覚に近い気がしました。
私はONEのファンなので、どうしてもONEキックボクシング目線になります。正直に言うと、カーフ主体の試合を見ていて、あまりワクワクしないことが多いです。
野杁も与座も、技術は本当にすごいと思います。ガードを固めて前に出て、間合いを潰し、カーフで足を削る。相手が下を意識したところでボディやフックを当てる。勝つための組み立てとしては、かなり完成された戦い方です。
ただ、見ている側としては、キックボクシングというより手押し相撲を見せられている感覚になる瞬間があります。与座優貴のONE初戦、与座優貴 vs オスマノフでは、オスマノフも距離を取って戦おうとしていましたが、初めて対峙するレベルの「カーフ使い」を前に足を効かされ惜敗しました。試合後、脚を引きずりながら泣いていた姿は、今でも印象に残っています。
与座優貴 vs スーパーレックの試合も、私にはMMAでコーナーに押さえつけられている展開をずっと見せられているような感覚に近かった、というのが正直な印象です。
この感覚、ムエタイの首相撲を見た時と少し似ているなとも思いました。例えば、年末のRWSで行われたジャルンスック vs 大崎一貴の試合。あの試合は、ムエタイファンから見れば「これぞ首相撲」という展開でしたが、ムエタイを普段あまり見ない人からすると、2ラウンド以降は首相撲から肘や膝を打たれ続ける時間が長く、何が起きているのか分かりにくいと感じた人もいたんじゃないかと思います。
技としては正しい。伝統でもある。
でも、見る側が置いていかれる瞬間がある。
この構造が、今のカーフ主体の試合と重なって見えてしまいます。
じゃあ「そのうち対策が進めば面白くなるのか」と言われると、そこも少し疑問です。
実際、卜部さんの投稿に対して、Xで「堀口恭二がカーフの対処法を説明していた」と、その記事を貼っている人を見かけました。正直、ちょっと笑ってしまいました。
そもそも、MMAとキックボクシングは別競技です。スタンスも距離も、リスク管理も違う。しかも、卜部さんほどのキャリアのある選手が、それくらい分かっていないはずがない。 分かった上で、「競技としてどうなのか」を投げかけているはずです。
今回の話は、「どう対処するか」ではなく、その技が競技をどこに連れて行くのかという話だと思っています。
おそらく、カーフを警戒する側が進化すれば、ジャブで距離を取り、無理に踏み込まず、リスクを取らないアウトボクシングが増えていく。技術的には高度かもしれませんが、ONEが売りにしている分かりやすい倒し合いとは、少し違う方向に進んでいく気がします。
野杁正明vsシッティチャイのように。

だから個人的には、ONEキックボクシングに限って言えば、カーフは「禁止の方向でもいいのかな」と思っています。カーフそのものが悪いとか、使う選手がどうこうという話ではありません。ムエタイの首相撲と同じで、技としての価値があることも理解しています。ただ、キックボクシング全体の話ではなく、普段見ているのがONE中心なので、分かる団体に話を限定しています。
ONEという団体は、これまでも「試合を分かりやすくする」「テンポを良くする」ために、ルールやレフェリングを調整してきました。首相撲を早めに切るのも、その流れです。そう考えると、カーフキックも「技術的には正しいが、ONEキックボクシングの方向性とは合わない」と判断されても、不思議じゃない気がします。
禁止以外の方法も、頭では考えます。例えば、ガードを高くしてノシノシ前に出る展開が続き、近づきすぎて手が出なくなったら、早めにブレイクして「もっと打ち合おう」と促す。ただ、これは正直、現実的にはかなり難しそうです。
殴る蹴るをしている以上、危険な技がゼロになることはありません。だからこの話は、「危ないからダメ」という単純な話じゃない。強くて勝てる技が、必ずしも面白い競技を作るわけじゃない。 そのズレをどう考えるか、という話なんだと思っています。
卜部さんの投稿は、正解を提示したというより、
「このまま進んでいった先、どうなると思う?」
と問いを投げてきた感じがしました。
カーフキックの是非は、ONEキックボクシングがこれから何を見せたいのかを考える上で、一度ちゃんと向き合ってもいいテーマだと思っています。
私は、正直、対策が出てくるのを見るの楽しみにも期待をしてしまいます。
野杁や与座に、タワンチャイやその他選手がどう向き合うのかっていう。
でもその一方で、「その対策で距離ばっかり測る試合が増えたら嫌だな」とも思ってしまう。
なので、カーフ反対論としては、60~70%賛成です。
