【詩】私たちのぬか床と管理人【寓話】
私たちは、その場所で
毎日ぬか床をかき混ぜていた。
それぞれ好みの食材で
それぞれ好みの漬物を。
ある日
管理人が、部屋の空気を入れ替えた。
いつも通りに漬物を作ったら
いつもの全然違う味。
苦くて甘い、刺激的で不快な味。
何が変わったのか分からずたじろぐ私たち。
いつもよりも気をつけて
丁寧に混ぜても
材料を変えても、
何度でも失敗してしまう。
自分の腕を疑った。
レシピを見直した。
もう一度材料を見直した
けれど、結果は変わらない。
管理人が、新しいぬか床を配っても結果は同じ。
実は、あの日管理人が入れ替えたあの空気。
そこに、変な菌が混じっていた。
ぬか床によっては、菌と強く結びつく性質が強く出て
その人の漬物は、
一口舐めても、あまりの苦さに顔をしかめてしまうくらい。
管理人は、慌てて空気清浄機を設置した。
新しいぬか床も配った。
けれども結果は変わらない。
新しく配られたたぬか床にも、しっかりと菌ははいりこんでいた。
唯一見つけた道は、
かつて頻繁に漬けて、美味しい漬物が出来やすかった食材一個に絞って漬けること。
久々に、
食べられる味に
少しだけ安堵した私たち。
しばらく経って、
ふと気づく私。
普通に新規の人を受け入れる管理人に、
新しいぬか床をもらう。
かつてより、少し小さい入れ物に入った少ないそのぬか床。
その新しい漬けた漬物は、普通に食べられる漬物だった。
もう空気にも、新しいぬか床にもあの菌はいなかった。
それなのに
今まで使っていたぬか床は、
もう菌が入り込んでいてしまって、
どんなに新しいぬか床を足しても
どんなに違う食材を入れても
どうにも元に戻せないことに。
大切にかき混ぜ続けた毎日が頭をよぎる。
その消えない菌に、ただ涙が流れる。
残された道は
この、苦くて甘い漬物を食べ続けるか
諦めて捨てて新しく作るかだ。
あの日、空気を入れ替えた管理人は
あの時混ざったものを把握しながら
空気清浄機が作動していることと
今のぬか床が正常なことをだけ確認して
私たちが、大事に混ぜてきたこのぬか床を
横目で見ながら
手放すことを望んでいるんだろうな
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