【Netflix】「グレンフェル・タワーの悲劇」高層ビル火災で生死を分けた「原則」
【概要】
グレンフェル・タワーの悲劇: 焼失した高層住宅とくすぶる火種
GRENFELL : UNCOVERED
2025
13+
ドキュメンタリー
ロンドンの高層住宅ビルをのみ込んだ大火災は、多くの命を奪い、深い傷跡を残した。生存者、目撃者、専門家の証言をもとに惨事の全貌、そして火災後に行われた調査の軌跡を追う。
(Netflix公式サイトより)
【評価】
6月20日に世界公開されたイギリス産Netflixオリジナルドキュメンタリー。
2017年、ロンドン西部の24階建て高層集合住宅「グレンフェル・タワー」で起こった火災の背景を追う。
この火事では、72人が亡くなり、うち18人は子供でした。
100点満点で80点。優れた啓発ドキュメンタリー(約1時間半)。
このドキュメンタリーを見ても、世界中の高層ビルで、けっこう火災が起きている。
でも、日本は、地震についてはうるさいが、火事のことはあんまり考えていないように見えますね。
高層ビルに住んでる人は、これを見ると、不安になるでしょう。
イギリスでは、高層ビル火災における「待機原則(stay put policy)」というのがあり、火事のさいは、退避の指示がない限り、室内待機が原則らしい。
この火事の場合も、夜中に4階の台所から出火して、すぐ消防が出動したので、住人は「室内待機」の原則を守っていた。
4階の火事自体は、すぐ消火された。しかし、火は外壁を伝わって1時間でビル最上階にまで達し、結果全焼してしまった。
下の階から煙に煽られるように上階に逃げ、最上階の室内に集まって亡くなった人が多いようだ。
もし4階の火事と同時に住人が退避を指示されていたら、多くの人が助かっただろう。
日本の場合は、どのような「原則」がもうけられているんですかね。
地震の場合、いったん待機で、安全が確認されて外に出る、という指導ではなかろうか。
火事の場合も同様?
しかし、1時間で最上階まで燃え広がる映像を見ていると(まさに「タワーリング・インフェルノ」状態)、「待機原則」は危険としか思えない。
でも、この「グレンフェル・タワー」の場合は特殊事情があって、どうも外壁に、燃えやすいアルミ複合材が使われていた。
ポリエチレンが入ったアルミ複合材の危険性は指摘され、多くの国で使用禁止だったが、イギリスでは使用可能だった。
イギリスは保守党政権時に「規制緩和」を進めていたため、ヨーロッパでいちばん規制が緩かった。
それで、アルミ会社は、危険で売れにくかったアルミ複合材を、イギリスで安くさばいていたようだ。
グレンフェル・タワーは、1970年代の建築で古ぼけて見え、周囲から「地価を下げている」と苦情を言われていた。
だから、安いアルミ材で、外側をおおって、新しく見せていた。
それが、このビルを「マッチ箱」のような状態にしていたという。
つまり、背景には、イギリス政府の無責任、企業の貪欲、管理組合の怠慢など、政治的・社会的要因がある。
しかし、それは、悲劇が起こったから分かったことで、普通はビル改修時の素材まで、厳しくチェックしていないのではないか。
火災のさいの「原則」の曖昧さや、消防の指揮系統の複雑さなど、いざというときに住人を混乱させるに違いない要素がたくさんある。
日本の高層ビルは、耐震性ばかりを売り物にするが、火事には備えているのだろうか。地震と同時に火事になる場合も多いだろう。
潜在的には、「グレンフェル」の悲劇は、いつどこでも起こりうる。
政府や企業は、どこも無責任で、そんな先のことまで心配してくれない。
高層ビルに住む人たちは、備えてください。

