マイナカードを讃えて
先日、歯医者の待合室でボーッと待ってると、一人の老人が入ってきた。
80は過ぎているだろう。こう言っては悪いが、一目で、ヨボヨボ、ボケボケな感じでね。
受付まで進んだところで、もうここに来た理由を忘れているようだった。
「診察券は?」
「ハア?」
「保険証は?」
「ハア?」
老人は、思い出したように、ポケット類を探り始めたが、
「ハア・・忘れた」
受付の人は困って、もう少し探してみるよう老人に言う。
待合室のわれわれも、固唾を飲んで見守っていた。
そしたら、老人はポケットで何かを探り当て、高々と宙に掲げた。
(マイナカードだ!)
私を含め、待合室の一同が安堵する。
「ああ、それがあったら大丈夫」
と、受付の人が言って、老人に顔認証を促した。
老人が嬉しそうに顔認証している様子を見ながら、
(マイナカードがあってよかったな)
と私は思ったのだ。
政府の回し者じゃないよ。
でも、私も最近、マイナカードの便利さを実感することが度々あった。
区役所でプール券をもらうのも、マイナのおかげでスムーズだった。
年金受給の手続きも、マイナカードとマイナポータルでできる(あまり使いこなせていないが・・)。
もともと、若い頃から、身分証明書の提示で困ることが多かった。
多くの人は、運転免許証を証明書にしていたと思うが、私は免許を持たない。
必要な場合は保険証やパスポートを持って行ったが、いつも携帯しているわけではない。
現役時代は、社員証が身分証の代わりをすることもあった。
しかし、退職して無職の老人になった今は、それもない。
マイナカードがあるのは、実にありがたい。
それなのに、マスコミや野党はマイナカードを目の敵にしていた。
つい最近まで立憲民主党は「マイナ保険証」に反対し、昨年の選挙後も、野田代表が「紙の保険証を残すのが優先政策」と言っていた。ほんの半年前の話だ。
紙の保険証を残せーーもう言わなくなってないですか。今は夫婦別姓ですか。
マイナカードでちょっとでもトラブルがあれば、マスコミは大喜びで報道するだろうが、それもあまり聞かないように思う。
マイナカードのようなものは、私がマスコミにいた約30年間、何度も試みられたが、マスコミと野党の反対で頓挫した。
反対したのは、左翼だけではなく、桜井よしこみたいな保守も含まれていた。
あれは何だったんだろう、と今でも思う。
3年ほど前、「日本の未来を潰したマスコミの5つの大罪」で、私はこう書いた。
国民総背番号制は、脱税を防いで税負担を公正化するとともに、行政の効率化、電子化のために必要だ(「背番号制」という言葉は、基本的に批判者側の言葉だが、ここでは中立に使う)。
背番号制が実施されていれば、コロナ給付金も早く実施されただろうし、今問題になっている給付金詐欺も防げただろう。
日本政府も、多くの国にある背番号制を導入しようとしたが、1980年代の「グリーンカード」、2000年前後の「住基ネット」と、一貫して反対してきたのがマスコミだった。
日本個人情報管理業協会の中島洋理事長は、
表に立って世論にグリーンカード中止を呼びかけたのは、「個人情報を政府に握られる危険」を訴える「人権派」だった。隠然と対抗してきたグループ(収入を捕捉されていなかった農業者、中小企業経営者、自営業者など)は、この動きを利用して(中略)グリーンカード中止に成功した。
と書いている。この「人権派」の先頭に立ったのがマスコミだった。
2002年と2003年、2年続けて日本新聞協会は、毎日新聞の同じ記者、似たような「特ダネ」に、新聞協会賞を与えた。それは、マイナンバーの前身である、住基ネットの情報漏洩に関する記事だった。(そして記事をもとに福島瑞穂が国会で政府を攻めた)
それほどまでしてマスコミは「背番号制は邪悪である」というイメージを国民に植え付けようとした。それは、現在のマイナンバー普及率の低さにも影響し、その結果、日本の行政の電子化は進まない。
なぜマスコミは、国民にこれほどの不便を強いて、平気なのだろうか。本当の理由は、正直、私にはわからない。
ただ、上記の中島理事長は、
「この論争は本質的に『政府を信じるか』『信じないか』という問題に帰着する」
と言っている。「背番号制反対」を通じて、マスコミは「政府を信じるな」と国民に吹き込みたいのであろう。国民はそういうイデオロギーの犠牲になっている。
「マイナ保険証化」を進めた河野太郎・デジタル大臣は、「ゴリ押しだ」とマスコミの非難をさんざん浴びて2022年に退任した。
その前に、河野氏は、コロナワクチン推進大臣になったせいで、いまだにあーだこーだ言われている。
「汚れ仕事」「憎まれ役」ばかりを押し付けられる河野太郎氏は気の毒だが、仕事を立派にやり遂げて偉い。
私は、次の総理大臣は、高市さんでもいいけど、河野太郎にやってもらいたいと思っている。
というと、みんな反対するけど、なんで? じゃあ小泉進次郎がいいのかよ。何も仕事してないじゃん。
(私は河野太郎の回し者でもないよ。大林ミカの件では私も河野を批判した)
それはともかく、マイナカードも、いいことばかりではないだろう。
たとえば、みなさんも感じたと思うが、更新の際の手続きは面倒だった。
そこが本人確認の要だから、そうならざるを得ないのはわかるが、役所の訪問をネットで予約する手続きは、老人にはハードルが高かった。
私が更新手続きをしたのはつい数カ月前だが、役所の会場で、
「予約が必要なんて、聞いてない!」
と係の人に食ってかかる人がいた。
公務員も大変だな、と思う。
でも、隠し財産も隠すべきプライバシーも何もない、ただの老人の私には、マイナカードはとても役立ってるし、これからますます便利になることを期待している。
こういうものが、もっと早くからあればよかったと思う。
ーーといった声がマスコミで紹介されることは少ないだろう。
それでは河野太郎や公務員のみなさんのご苦労も報われないから、今日はあえてマイナカードを讃える文章を書きました。
<参考>
