1000円のブラームス 定年後の日本人の世界一の楽園(川崎市麻生区)
佐藤優の新刊『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』は、タイトルを初めて見た時、「これは売れる!」と思った。
そういうところは、まだ元出版人の勘が働く。
実際、売れてるらしいけどね。
実際、定年後の日本人は、世界一の楽園を生きられる。
カネさえあれば。
カネさえあれば、あるいは、モノが安くさえあれば、日本は世界一の楽園ですよ。
俺はカネがないから、佐藤優の本なんか、たとえ新書でも、買わないけどね。
でも、昨日は、「世界一の楽園」を味わえた日曜でした。
前から楽しみにしてた、麻生フィルハーモニー管弦楽団演奏会の日。

ワーグナーの「タンホイザー」序曲
ベートーヴェンの「第1」
そして、ブラームスの「第1」
これで1000円ですよ。普通は、安くても、その10倍するんですよ。
高くてふだんは聴けない生のオーケストラ、しかもこのプログラムを、1000円で聴けるというので、ずっと楽しみにしてたんですね。
貧乏の何がつらいって、贅沢ができないことですね。クラシックのコンサートに行くとか。
定年後、毎日コンサート三昧、みたいなのが理想の老後だなあ。それこそ楽園でしょう。
毎日1000円ならありがたい。
愚痴はともかく、昨日の新百合ヶ丘は、駅前でフリーマーケットなんかやっていて、みんな楽しそうで、「楽園」度が高かった。
コンサートが始まるまで、私もフリマをひやかして楽しんだ。

ときどき雨粒が落ちてくる、不安定な天気ではあったけど。
このあいだの柿祭りといい、土日のイベントで最近雨にたたられるのは、神奈川新聞のせいだと思うんですけどね。
あの偏向新聞への神の怒りだと思う。
でも、昨日はなんとか、本格的な雨にならずに1日もった。これは、川崎市民の普段の心がけのおかげだと思う。
で、開場時間の13:30少し前に、会場の麻生市民館ホールに行くと、すでに長い行列ができていました。

麻生フィルを聴くのは、これで2回目です。
前回は2年前、オネゲルの「パシフィック231」の無料コンサートを、やはり市民ホールに聴きに行った。
無料か、1000円の時しか聴かないのは、誠に申し訳ないけどね。
前回、思ったんですけど、麻生フィルは、低弦セクションが強力です。
稲川会の組員みたいな屈強な連中が、そろって黒服着てダブルベース弾いてるんです。
低音がビンビンにホールに響いて、魅了されました。
あの低音ビンビンでブラームスを聴きたい!というのが、実は今回の楽しみの大部分です。
開演前のホール内はこんな感じ。

ホールの定員は約1000人。
最終的には、8割5分くらいの入りでした。
市民オーケストラということで、子供の入場を歓迎していて、1000円という料金設定も、親子連れを呼び込むためと思われます。
だから半分近くはファミリーで来てる感じで、子供率が高い。
でも、老人も多かったですよ。4割くらい老人じゃなかったかな。
中には金持ちもいるんだろうが、大半は、私みたいなビンボーな老人だと思う。
ファミリー層が多く、子供が多いから、まあドレスコードとかもあんまりうるさくないだろう、と気楽でいい。
都会にクラシック聴きに行くとなると、服装とかも考えなくちゃ、で気が重いじゃないですか。麻生フィルなら、裸で行っても大丈夫でしょう(それは失礼)。
で、いよいよワーグナーが始まると、冒頭の菅のピッチが怪しくて、早くもトリのブラームスの終楽章が心配になるレベル。
でも、弦楽セクションが入ってくると、その柔らかい響きに魅了されました。
やっぱり、生オケを聴く楽しみの一つは、弦楽セクションの音だなあ。これは、録音ではなかなか伝わらないからね。
そして、私の期待の稲川組員による低弦セクションが、今回もビンビンに効いていて、ブラームスへの期待が高まります。
指揮は中島章博さん。早稲田の理工、東大院を出て、ウィーンに留学した人で、音響工学の学位を持っている。
冒頭では不安だったけど、次第に演奏は落ち着いてきて、しっかりワーグナーになっていました。
ワーグナーを聴くと、やっぱり、ファシズムやりてえー、と思う。そういう、危ない異次元に連れていかれる感じを、味わうことができました。
でも、木管はいいんだけど、金管のピッチがずーっと気になる。頑張ってはいたと思うんだけど。俺の耳なんか、あてにはならないけどね。
結果、私にとっては、金管があまり関与しない、ベートーヴェンの第1が、いちばん出来がよかった。
これは名演でしたね。テンポも絶妙で、ベートーヴェンのチャーミングな音楽の、心地よさにひたりました。
で、20分の休憩後、いよいよブラームスですよ。
私にとってブラームスは、愛憎半ばする作曲家です。
好きなとこはすごく好きだけど、嫌いなとこはすごく嫌い。
第1交響曲は、嫌いなところがあまりないので、好きです。
とくに第2楽章は、全クラシック音楽の中でも、ベスト5に入るくらい好き。
俺の葬式の時に流してほしい曲リストの、トップ近くにランキングしています。
ブラームスは順調に始まりました。
とくに第1楽章は力演で、フライング拍手が起こりそうになったほど。
でも、ここで別の不安が。
隣の席に座っていたガキんちょたちが、むずがり始めた。
前回、2年前の麻生フィルのコンサートでも、そういえば子供がうるさかったけど、曲が騒音みたいな「パシフィック231」だったから、あんまり気にならなかった。
今回は、ここまで子供たちは行儀よかった。でも、そろそろ限界か。
ブラ1なんて、名曲中の名曲で、ド定番だとは思うけど、子供にとっては、やっぱり渋いんだと思う。
期待の第2楽章が始まっても、子供たちが気になって集中できない。
でも、例のバイオリンソロが始まると、ちょっと子供たちの関心が持ち直した。
ここでも、バイオリンよりむしろ低弦セクションが素晴らしくて、私は堪能しました。
でも、なんというか、2楽章の後半あたりから、オケの集中力が途切れてきたようで、3楽章にかけて、音楽が粗くなっていきました。
隣の子供の集中力も、ますますなくなって、ほとんど椅子からずり落ちそうになっている。
私の集中力も、ステージ上の演奏より、どちらかという隣に並んでいる子供セクションの方に向いていました。
「もう少し我慢しろ。4楽章でいいやつ来るから」
と、心の中で子供たちを励ましていました。
で、期待と不安の終楽章。
ここまで不安だった管セクションも、さすがにここはミスれないと気合が入って、立派に立ち直ってくれました。
そして、弦楽セクションが、例のわかりやすーい、ベートーヴェンのパクリみたいな旋律を奏で始めると、ずり落ちかけていた隣の子供たちも、座り直して耳を傾けている。
やっぱり、子供には、はっきりしたメロディ、というかフシがないと、耐えられないんだろうな。わかるよ。おじいちゃんも子供のころはそうだったから。
コーダに向かって、指揮の中島さんがテンポを上げると、崩壊か、というところまで演奏が乱れたけど、なんとかごまかして、フィニッシュ!
コンサートは、大喝采で終わりました。
演奏もよかったけど、私は、ここまで騒がずに聴いた子供たちに拍手を送りたい気分でした。
アンコールはなし。
楽園だったなあ、と幸福をかみしめて、会場を後にしました。

<参考>
