評価経済社会と北尾吉孝氏提唱のデジタルスペース革命がもたらす社会変革
1. 評価経済社会とは何か?
岡田斗司夫氏が提唱する「評価経済社会」とは、簡潔に言えば「貨幣の代わりに評価が流通する社会」のことです。従来の貨幣経済社会では、モノやサービスの交換において最優先される価値はお金でした。しかし評価経済社会では、人々からの「印象」や「影響力」といった評価こそが最大の価値となり、お金にとって代わると考えられています。
つまり自分が他者からどう思われているか(評価)が通貨のように機能し、社会を巡る仕組みです。
伝統的な貨幣経済と評価経済社会の違いは、その価値の媒介にあります。貨幣経済では「お金」を仲介にモノ・サービスを交換しますが、評価経済では「評価」を仲介にモノ・サービス、さらにはお金さえも交換可能になると岡田氏は述べています。例えば昔であれば、できるだけ安い商品を探して購入するのが普通でしたが、現代ではまずAmazonの★評価や口コミなど「評価の高いもの」を探し、その中から価格に見合うものを選ぶようになっています。この消費行動の変化は、評価が貨幣より重視され始めている兆候であり、評価経済社会の現れだと岡田氏は指摘しています。
評価が貨幣価値に変わるメカニズムについて、岡田氏は具体例で説明しています。たとえば賃貸住宅では、貨幣経済が浸透する以前は「知り合いだから貸してもらえる」といった縁故が物を言いましたが、貨幣経済ではお金さえ払えば誰でも部屋を借りられるようになり、「お金」が万能の力を持ちました。一方、評価経済社会になると、部屋を汚したりゴミ出しを怠ったりする人には誰も部屋を貸さなくなるといいます。 個人の評価がオープンに可視化・共有されることで、「評判の悪い借り手」は高い家賃を要求され、「評判の悪い貸し手」は家賃を下げざるをえなくなるでしょう。ウーバータクシーに乗った乗客もまたドライバーからの評価を受け、「評判の悪い乗客」は高い運賃でも乗せてもらえない。
このように人々の信用や行動履歴に基づく評価が取引の条件を左右する状態が、評価経済社会の第一段階として訪れると岡田氏は述べています。
では評価経済社会になるとお金は不要になるのでしょうか?岡田氏は、評価経済が到来しても貨幣経済そのものが消滅するわけではなく、「評価経済が貨幣経済の上に乗っかるだけ」だと指摘しています。
ちょうど、貨幣経済になっても縁故社会が残存したように、評価経済になってもお金の仕組み自体は残るということです。しかし評価と貨幣の優越関係は逆転するとされます。すなわち「お金で評価は買えないけれど、評価があればお金はいらなくなる」という関係であり、評価を持つ者がより大きな力を持つ社会になるのです。
このように、評価経済社会では人々の信頼や共感といった無形の価値が経済活動の中心的な軸となります。
2. 評価経済社会の台頭とYouTube・TikTokの影響
現代ではYouTubeやTikTokに代表されるSNSプラットフォーム上で、多くのインフルエンサー(YouTuberやTikToker)が活躍し、彼らの人気・評価がそのまま経済的な価値(収益)につながる現象が一般化しています。
実際、YouTuberやTikTokerといった職業は評価経済社会が生み出した新しい職種とも言われます。彼らは動画再生数やフォロワー数といった“評価”を獲得することで広告収入やタイアップ報酬を得ています。つまり、「人気=お金」に直結する仕組みがデジタル空間で確立されつつあるのです。
この流れは特に顕著で、例えば中国ではTikTok(抖音)やライブコマースによってインフルエンサーが商品販売を行う巨大ビジネスが生まれています。
評価経済社会の理論が、SNS上で実際に経済活動として具現化した一例と言えるでしょう。
YouTubeやTikTokといったSNSは、人々の評価を数値化(いいね数、フォロワー数、視聴回数など)し可視化する評価システムを発展させました。この発展によって、個人が発信力を持ち影響力を競う時代が到来しています。
電子ネットは、これまでマスメディアの特権であった影響・評価システムを一般市民に開放」し、誰もが情報発信し他者に影響を与えうる評価競争の場としてSNSが機能していると指摘しています。
その結果、商品選択において口コミ評価が価格以上に重視されるなど、人々の行動原理にも変化が現れています。
Amazonのレビューや食べログの評価点を真っ先に参考にする消費者行動は、「まず評価を選び、それから価格を見る」という傾向が広まったことを示しています。これは評価経済社会の片鱗が日常生活にも浸透しつつある証拠でしょう。
しかし、現状のSNSだけでは社会全体の経済基盤を評価経済に一気に移行させることはできないと考えられています。その理由の一つが、評価のスケールや互換性の問題です。岡田氏は現在の状況について、「VALUやTimeBankなど評価を可視化して売買できるサービスも出てきたが、それらは“そこでしか使えない通貨”が無限に生まれているに過ぎない」と指摘しています。
言い換えれば、YouTubeで得た高評価やチャンネル登録者数という「信用」はYouTube上では貨幣のように通用しても、それを離れて現実社会の別の文脈(例えば就職や金融取引)で直接通用するわけではありません。「一か所で得た評価がどこでも通用するようにならないと、評価経済社会とは言えない」と岡田氏が述べる通り、今のSNS評価は各プラットフォーム内に閉じたものであり、社会全体の経済基盤として機能するには至っていないのです。
また、SNS上の評価には信頼性や恒常性の課題もあります。フォロワー数や「いいね」は時として操作されたり、短期的な注目を集めるための過激な手段で稼がれたりすることもあります。評価経済が健全に社会基盤となるには、評価そのものの質(信頼できる評価か、長期的な価値に結びつく評価か)が重要になります。しかし現状では、単に数字としての人気が先行しがちで、その評価が本当に価値を裏付けるものか精査が追いついていない面もあります。
さらに、人々の意識面でも過渡期の問題があります。岡田氏は2017年に起きた日本の「VALU騒動(※)」に言及し、「評価経済で生きられるはずなのに、紙幣に変えないと不安になって現金化してしまったこと」が失敗の原因だと述べました。
VALUは個人が自身のトークンを発行して評価(信用)を売買できる画期的な試みでしたが、人気YouTuberらが自分のVALUを高値で売り抜け現金化したことで信頼を損ない、制度自体の信用も揺らいでしまいました。この出来事は、評価そのものを蓄積・運用せずにすぐ既存の貨幣に換えようとしてしまう現状のマインドを浮き彫りにしました。
評価経済社会の本格的な成立には、人々が評価をそれ自体で価値ある資本とみなし、すぐお金に換えなくても評価を蓄えて活動できるような文化的成熟も求められるでしょう。
要するに、YouTubeやTikTokによって評価経済社会の片鱗は出現したものの、まだ過渡期にあります。SNS発の評価システムは個人の影響力をお金に変える道を開きましたが、それは評価経済社会の「第一幕」に過ぎません。岡田氏は、評価経済への大きなパラダイムシフトは約50年のスパンで進行するとし、我々はいまその序盤にいると述べています。評価が社会全体で通用する統合通貨の議論や、評価どうしの交換レートの整備など、次なる段階に至るにはなお時間がかかるという見通しです。
そうした次のフェーズを実現する鍵として注目されているのが、次章で述べる「デジタルスペース革命」、すなわちブロックチェーン技術を核としたWeb3.0的な分散型経済基盤の台頭なのです。
3. デジタルスペース革命が評価経済社会を実現する要因
SBIホールディングス社長の北尾吉孝氏は、ブロックチェーンやAI、メタバースなどの新技術によってもたらされる新時代を「デジタルスペース革命」と呼び、その波が次なる経済社会の原動力になると提唱しています。
北尾氏によれば、デジタルスペース革命とは「デジタル空間における経済・社会システムの劇的変革」であり、インターネット時代に続く新たな世界の到来を指すものです。
具体的には、インターネット基盤上にブロックチェーンのレイヤーが重なり、その上でWeb3、メタバース、AIなどが融合した新しい経済圏=「デジタルスペース生態系」を構築する動きです。
北尾氏は長期的視点で見ればこの変革がコンドラチェフの長期波動(景気が約50年周期で循環するという考え方=岡田斗司夫氏のパラダイムシフト50年周期にも付合する)における次の成長エンジンとなり、今後数十年にわたって世界経済を牽引し得ると述べています。この革命的変化が、評価経済社会を現実の社会基盤として実現するための技術的・制度的土台を提供すると期待されているのです。
デジタルスペース革命の中核にあるブロックチェーン技術は、信用の分散化をもたらす点で評価経済社会に直結するインパクトがあります。従来は企業や銀行、政府などの大きな組織が信用を独占し、人々はそれら中央主体を仲介して取引する必要がありました。しかしブロックチェーンによりP2P(個人間)の価値交換が仲介者なしで可能となるため、個人や小規模コミュニティでも大規模な資金調達や取引を直接行えるようになります。実際、スマートコントラクトを用いた分散型金融(DeFi)では、人々がプログラム上の契約に信頼を置いて資金を預け合い、貸し借りや交換が行われています。このように信用の媒介が組織から技術(コード)へと置き換わることで、大組織だけが握っていた信用独占が崩れ、個人でも自らの評価やアイデアをもとに経済活動を起こしやすくなるのです。
さらに、分散型自律組織(DAO)の登場は社会の運営原理をトップダウンからボトムアップへと変革しつつあります。従来は国家や大企業がルールを定め資金や人材を集中させてプロジェクトを推進していましたが、DAOを使えばインターネット上で誰もが意思決定に参加でき、出資や運営に貢献できます。例えば近年注目された投資型DAO「AI16Z」では、AIエージェントが投資判断を行い、その運用方針にトークン保有者全員が投票で関与するという実験的取り組みが行われています。
このDAOでは利益もトークン保有者に自動分配され、コミュニティ全体でガバナンスと利益享受を行う仕組みになっています。
北尾氏の言うデジタルスペース革命は、まさにこうしたDAOのような新しい経済主体の出現を包含しており、従来はVC(ベンチャーキャピタル)など集中管理型の組織が担っていた投資・資本配分を、分散型のコミュニティが担う方向へ向かわせます。このようにあらゆる領域で権限と価値創出の分散化が起これば、評価=信用は特定企業内だけでなくネットワーク全体で共有され、個人の評価がそのまま経済的な力に直結しやすくなるでしょう。
デジタルスペース革命はまた、「共感資本主義」の広がりを技術面から後押ししています。共感資本主義とは、「共感」という貨幣に換算できない価値を資本として大事に育み、それを基礎に経済活動を行っていく社会のあり方を指す概念です。評価経済社会とも似ているとも言えますが、より人々の感情的なつながりに焦点を当てた表現です。
今後、巨大資本がなくても、ユーザーやファンの後押し(共感資本)を得られれば、大型プロジェクトを進められる道が開ける時代がやってきます。実際、クラウドファンディングやファントークンのように、企業の後ろ盾がなくともユーザーやコミュニティの支持(=共感資本)を直接資金に変えて事業を起こすケースが増えてきました。この動きは、評価(共感や信頼)がそのまま資本調達力になることを意味しています。
先述のインフルエンサーが自分のファンから支援を募りプロジェクトを立ち上げたり、クリエイターがNFT作品を販売してファンの共感を経済価値に換えたりするのも、その延長線上にあります。
特にNFT(非代替性トークン)の普及は、評価が経済価値に変わる新たなメカニズムとして注目に値します。NFTはデジタルデータに唯一無二の所有証明を与える技術ですが、その価値評価は往々にして作り手やコミュニティの評価・ストーリーに大きく依存します。
現に、まったく無名の人が描いたNFTアートが高値で売れることは稀で、著名アーティストや人気インフルエンサー、あるいはSDGsなど社会的意義のあるテーマを背負った人物の作品が高額取引される傾向があります。
人々はデジタルデータそのものではなく、「それを作ったのは誰か」「どんな価値観を提唱しているか」を重視して購入しているのです。
これは、評価経済社会における商品の価値は物そのものではなく、それに紐づく評価(イメージや共感)によって決定されることを端的に示しています。NFTやトークン経済の台頭により、評価・共感という無形資産を直接「経済商品」に変えることが技術的に可能になったと言えるでしょう。
こうしたブロックチェーンやDAO、NFTといったWeb3.0技術の総合力によって、評価経済社会のインフラが整備されつつあると考えられます。
インターネット+ブロックチェーンによる徹底した分散化が進めば「よりフラットでダイナミックな社会システム」が構築され、個々人が新しいチャンスを得ると同時に従来のトップダウン社会が解体される可能性が高まると思います。
評価経済社会の実現には技術基盤だけでなく人々の意識変革も必要ですが、デジタルスペース革命はその両面を推進しています。人々が評価や共感にもとづいて経済行動することをテクノロジーが後押しし、またそうした行動がきちんと報われる仕組みを作る——これこそがデジタルスペース革命が評価経済社会を実現に近づける最大の要因なのです。
4. デジタルスペース革命の浸透による社会へのインパクト
デジタルスペース革命が本格的に浸透した場合、労働や資本の形態、価値創造のモデルに大きな変化が予想されます。
まず、働き方に関しては、従来の企業に所属して雇用されるモデルから、個人がプロジェクトごとにコミュニティやDAOに参加して貢献するモデルへシフトする可能性があります。インターネットとブロックチェーンによって地理的・時間的な制約は大きく緩和され、才能やスキルのある個人が世界中のプロジェクトにオンデマンドで関わることができるようになります。これはちょうど、ウーバーなどで労働力のオンデマンド化が進んだ流れの知的労働版とも言えるでしょう。評価経済社会では個人の評価がそのまま信用となるため、優れた実績や信頼を積んだ個人ほど様々なコミュニティから招かれ、仕事の機会を得るという構図も考えられます。逆に言えば、組織の看板ではなく個人の評価そのものが「履歴書」として機能するようになる世界です。
資本の面でも、分散型経済への移行は従来の資本主義モデルを変容させます。北尾氏はデジタルスペース革命によって「資本の民主化」が進むと述べています。例えば有望なスタートアップ企業に対して、これまではベンチャーキャピタルや銀行など一部の大口投資家が資金提供してきましたが、今後は世界中の個人が少額ずつDAO経由で投資し、その見返り(リターン)をスマートコントラクトで公平に受け取るといった仕組みが現実になり始めています。既に株式や不動産をトークン化し、小口の投資家でも参加できるマーケットプレイスが登場しており、金融商品の形態や資金調達の方法が大きく様変わりしつつあります。これにより、「資本をどれだけ持っているか」よりも「共感をどれだけ集められるか」が事業の資金調達力を左右するようになるでしょう。言い換えると、お金そのものより人々の信頼・応援という評価資本を集められる個人・組織が有利になる時代です。
その一方で、既存の金融システムとの融合や対立も避けられないテーマです。多くの既存金融機関はブロックチェーン技術やデジタル通貨の可能性に注目し、取り込もうとしています。SBIグループがRipple社やR3社に出資して次世代金融基盤の構築に注力しているように、銀行や証券会社もブロックチェーンを活用した決済や証券取引の高速化・効率化に乗り出しています。各国の中央銀行も中央銀行デジタル通貨(CBDC)の研究・実証実験を進めており、デジタル通貨を国家の枠組みで取り入れる動きがあります。一方で、ビットコインをはじめとする暗号資産が既存通貨体制に挑戦し、国家の金融統制と摩擦を起こす場面も出てきました。中国が暗号資産取引を禁止するなど、分散型通貨への警戒感から規制が強まる動きもあります。
北尾氏は「仮想通貨とブロックチェーンが起こす革新の波は、インターネットよりも大きい可能性を秘めている」と述べており、そのインパクトは既存金融システムにとって脅威であると同時に新たなチャンスでもあります。既存の銀行や証券取引所がブロックチェーン技術を採用し取り込んでいけば融合が進む一方、真に分散型のDeFiやコミュニティ通貨が主流化すれば従来の金融仲介者は役割を失いかねず、対立軸も生まれるでしょう。
デジタルスペース革命による価値創造の変化も見逃せません。これまで価値創造は企業内での研究開発や工場生産が中心でしたが、今後はコミュニティ主体の価値創造が拡張すると予想されます。オープンソースのソフトウェア開発が良い例で、世界中の有志が協力して革新的なプロダクトを生み出していますが、ブロックチェーンとトークンによりそうした貢献に直接経済的報酬を与えることも可能になりました。人々が自分の属するコミュニティの発展に貢献し、そのコミュニティの発行するトークンの価値上昇が自分の利益にもなる、といったエコシステムが各所で成立するかもしれません。地域通貨やご当地ポイントのブロックチェーン版のようなものが広がれば、地域コミュニティが自前の経済圏を持ち、そこでの評価(地域への貢献度)が地域通貨として機能する未来も考えられます。
公共分野でも変化が起きるでしょう。海外では都市開発に市民がDAO形式で参加する試みが始まっており、「ブロックチェーン技術は市民に参加型の所有権や資金アクセス、意思決定権を与えつつある」との指摘もあります。例えば地域住民がトークンを保有し、その投票によって街づくりの予算配分を決めたり施設運営に関与したりすることが技術的には可能です。これが進めば、従来は行政や大企業に依存していた社会資本の整備がより民主的かつ効率的に行われる可能性があります。つまり、個人・コミュニティ主体の経済活動が社会の隅々にまで広がることで、「参加すること自体が価値を生む」ような社会になるかもしれません。
総じて、デジタルスペース革命後の社会では、組織の形や経済の原理が多様化・分散化し、一種のエコシステム的経済が出現するでしょう。そこでは企業と個人、消費者と生産者、投資家と被投資者といった境界が曖昧になり、誰もが評価(信用・共感)を元手に役割を変えて参加できる柔軟な社会です。従来の雇用モデルや資本主義の前提が大きく揺らぐため、既存の金融・産業システムはその変化に対応する必要があります。適応できるプレイヤー(既存企業や政府機関)は新技術を取り入れ生き残っていくでしょうし、適応できないところは新興の分散型ネットワークに取って代わられるかもしれません。
すなわち、社会が変わっても何も努力しなければ個人にはチャンスはないし、逆にこの波にしっかり準備すれば大企業も大いに乗っていけます。変化に主体的に向き合うことこそ重要だと思います。評価経済社会とは、言い換えれば常に評価され続ける社会でもあります。その中で豊かさを享受するには、個人も組織もアップデートを続け、信頼と共感を集める行動を取っていく必要があるでしょう。
5. デジタルスペース革命後の評価経済社会で生き抜くための指針
評価経済社会の本格到来を見据え、個人が備えるべきことは大きく分けてスキル・マインドセット・ネットワークの3点に整理できます。
まずスキル面では、デジタルスペース革命の技術を使いこなすリテラシーが重要です。具体的には、ブロックチェーンウォレットの扱い方やNFTの発行・取引、DAOへの参加方法など、Web3時代の基礎的なスキルを身につけておくと良いでしょう。幸い、これらはインターネット環境さえあれば誰でも少額から体験できます。今のうちに自分で仮想通貨ウォレットを作って少額の暗号資産を扱ってみる、興味のある分野のDAOに参加して議論してみるといった小さな一歩が、将来大きなアドバンテージになります。また、評価経済ではクリエイティビティやコミュニケーション能力も資本になります。コンテンツを発信する力や、自分の専門分野で価値を生み出せるスキル(文章を書く、動画を作る、プログラムを書く等)を磨くことも、自身の評価を高め経済的価値に繋げるための土台となるでしょう。
次にマインドセット(心構え)です。岡田斗司夫氏は「評価経済の中で一番ダメなのは、嫌われる人でも好かれる人でもなく、よくわからない人」と指摘しています。評価される社会では、自分が何者で何を大事にしているかを明確に打ち出すことが肝心です。言い換えれば「自分のキャラ」を確立し、一貫性を持って発信することです。SNSにおいてもリアルにおいても、十人十色の価値観がある中で支持を得るには、全員に薄く好かれるより、ある層に熱狂的に支持される方が評価資本として強力です。好き嫌いが分かれることを恐れず、自分の信じる発信を続ける胆力が求められます。ただし過去の言動も全て蓄積・参照されるため、場当たり的にキャラを演じるのではなく、時間をかけてでも本当に自分が提供できる価値を軸に据えることが大切です。また、評価をすぐお金に換えようとしない長期志向も重要です。岡田氏は「自分が得た評価をすぐに換金しようとしない。評価を集めて再投資するのが評価経済で生きる大原則だ」と述べています。評価経済社会では、評判=信用という見えない資本をどれだけ増やせるかが勝負になります。短期的に現金化するよりも、信用を積み上げそれをさらに大きな信用へと雪だるま式に育てる戦略が、生き抜く上での王道となるでしょう。これは従来の資本主義で「利益を再投資する者が長期的に成功する」のと同じ原則が、評価という無形資本に対しても当てはまるということです。
ネットワークの活用も欠かせません。評価経済社会では、一人ひとりが小さな経済圏のハブになり得ます。ゆえにコミュニティへの参加と貢献が自分の評価を高める有効な方法になります。自分の専門や趣味に関連するオンラインコミュニティ、DAOなどに積極的に関わりましょう。他者を助け、有益な情報や作品を共有し、信頼を築くことで、そのコミュニティ内での評価が高まります。それが評判となって別のコミュニティでも歓迎される、といったように評価はネットワークを伝って波及します。特にWeb3の世界では、「まず貢献し信頼を得てから報酬を受け取る」文化が根付いてきています。オープンソース開発やNFTアートのコミュニティでも、最初はボランティア的に参加していた人が評価を高めた結果プロジェクトのコアメンバーに招かれ、トークン報酬を得るようになった例が多数あります。したがって、自ら進んでコミュニティに価値提供する姿勢が大事です。それによって築いた人脈は、中央集権的な企業の肩書以上にあなたの信用財産となり、将来何かを起こす際に大きな支えとなるでしょう。
このように、新しい経済システムの到来期には無数のチャンスが存在します。重要なのは、今から小さくても実践を始めることです。個人であれば、自分の作品をNFTとして出品してみる、ブログやYouTubeで専門知識を発信して評価を集めてみる、といったことから始められます。起業志望者であれば、仲間とともに小規模なDAOを立ち上げ運営してみることで、将来大きなプロジェクトを動かすノウハウが得られるでしょう。評価経済社会では「走りながら信頼を獲得する」ことが肝心です。デジタルスペース革命が巻き起こす波は大きいですが、その波に飲まれるのではなく乗りこなすつもりで、まずは身近な領域から第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
これからの社会には未知の可能性が満ちています。評価経済社会とデジタルスペース革命という新時代の扉は開き始めたばかりです。その先の未来を創るのは、他でもない私たち一人ひとりの行動と評価の積み重ねなのです。
参考文献・情報源:
岡田斗司夫『評価経済社会』、ダイヤモンド・オンライン記事
「岡田斗司夫×堀江貴文が語りつくす!」
CANARYインタビュー記事
「評価経済のことは俺に聞け!岡田斗司夫に学ぶ経済のパラダイムシフト」
ハヤカワカズキ氏note
「Web3.0と岡田斗司夫「評価経済社会」から見る2022年のトレンド予想」
他、北尾吉孝氏講演など
