船乗りが経験した荒天のリアル、陸では想像できない世界
荒天の話をする。
陸の人が「台風すごかったね」って言うレベルとは、次元が違う話。
船の骨組みが歪んだ
一番やばかったのはこれたいね。
荒天がひどすぎて、船の骨組みが歪んだ。
船って鉄でできとうけん、そう簡単には曲がらん。でも曲がった。それくらいの力が波からかかっとったとよ。
その後ドックに入れて修理した。鉄の骨組みを直すって、どれだけの力が船にかかっとったか想像できるやろ。
あの時は「船って壊れるんや」って初めて実感した。
船の中がカオスになる
荒天の時、船の中がどうなるか教える。
ゴミ箱がひっくり返る。油がひっくり返る。居住区の椅子が通路に吹き飛んでくる。
固定されとらんものが全部動く。船って荒天対策はされとうけど、それでも追いつかんくらいの揺れになることがある。
歩くのも大変。通路を歩いとったら突然壁に叩きつけられる。ご飯を食べようとしたら皿が滑っていく。普通の日常動作が全部難しくなる。
初めて経験した時は「これ映画の中の話やろ」って思った。現実やったけど。
遺書を書いた奴がおった
これ、笑えんけど笑える話。
荒天がひどい時、遺書を書いとった奴がおった。
「20度傾いた」って言いよった。20度って数字だけ聞いたらピンとこんかもしれんけど、200メートルの船があんなに傾くのを実際に経験したら「これ沈むんじゃないか」ってなるとよ。
遺書書くくらいそいつは本気で怖かったんやろね。笑えんけど、後から聞いたら笑ってしまった。気持ちはめちゃくちゃわかるけんね。
横揺れが一番怖い
縦揺れと横揺れがあるんやけど、断然横揺れの方が怖い。
縦揺れはボートに乗っとるみたいな感じで、ある程度慣れる。でも横揺れは体が対応できん。
ぎぎぎぎーーって鉄板がきしむ音船でしか聞いた事ない音がする。あれが続くと「このまま壊れるんじゃないか」って本能的に怖くなる。
10年船に乗っとうけど、ひどい横揺れはいつまで経っても慣れん。あれだけは「怖い」と素直に言える。
それでも船は走る
荒天でも、船は止まらん。
遅くはなるけど、目的地に向かって走り続ける。荷物も人も乗せたまま、嵐の中を進んでいく。
「なんでこんな天気でも走るんや」って思う人もおるかもしれん。でもそれが仕事。
荒天の中で船を動かし続ける人間がおるから、物が届いて、人が移動できる。
しんどい仕事やけど、それが船乗りの仕事やけんね。
