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〔チヨガミ〕

「明日は、みんなで折り紙をします。ここに、たくさん折り紙用紙があります。もちろん、好きな紙をお家から持ってきても良いですよー」

 先生がそう言った。折り紙は得意だからすごく楽しみ。明日は綺麗なのを持って来よう。鶴を折ってみんなにあげたら、嬉しがるかな。

「ただいまー。おばあちゃん、明日みんなで折り紙をするから、紙をちょうだい」

「みんなで折り紙するの?それじゃあ、あの箱にあるの全部持っていきなさい」

 たくさんもらった。



「それでは、折り紙をしましょう。好きなように折ってね。わからなかったらお友達や先生に聞いてねー」

「はぁい」

 持ってきた紙を出す。カドを合わせて、ピンとした鶴にしよう。

「なにそれ、可愛い紙!」

「少しあげるよ、好きなの良いよ」

「ありがとう!」

「わ!それ欲しい!模様がある!」

「良いよ!」

 たくさん持ってきて良かった。みんなニコニコしてくれる。

「あら、千代紙、人気だねー」

 これはチヨガミという名前なのか。先生もニコニコしてくれる。うれしい。



 帰る時間だ。家に帰ったら何をしようかな。

「来週、クリスマスのプレゼント交換しない?!」

 楽しそう!

「いいよ!」

「いいよ!」

「やる!」

「うん!」

 帰る仲間4人でプレゼント交換!楽しみ!



「おばあちゃん、クリスマスにプレゼント交換をするの。1人1つ持って行って、誰のをもらえるかはクジ引きなの。2千円までのやつ!」

「それじゃあ、用意しないとね。明日か明後日、一緒に買いに行こう」

「うん!絶対ね!」



「これが良い!」

「それが良いの?」

「絶対これが良い!喜んでくれるから」

「なら、それが良いねぇ」

「おばあちゃん、有難う!」

「気に入ったのが見つかって、良かったね。喜んでくれると良いねぇ」

「うん!」



 今から、プレゼント交換がはじまる!

 みんなと同じように、目をつぶってコップの中に入った紙切れを取る。

「わぁ!」

「あっ!」

「おぉっ!」

「はい!」

 それぞれ、名前を引いた人にプレゼントが入った紙袋を渡してる。



「ありがとう!」

「わっ、やった!」

 みんな、プレゼントもらって喜んでる。さぁ、渡そう!

「はい、これ!見て!」

「ありがとう!」

 嬉しいだろうなぁ。

「……」

 あれ?

 なんでなにも言わないのかな?きっと、びっくりしたんだね。ニッコリしてみよう。

「……なにこれ。ダサい」

 えっ、今、なんて言ったの?
 どうしてそんな顔してるの?

「……これ、いらない!」

 え?なんで?これ、好きでしょ?
 きっと、からかってるんだ。

 もっとニッコリしてみよう。

 ……?
 ニッコリしてくれない。
 こんなにニッコリしてるのに。
 みんな、なんで嫌そうな顔なの?

 みんなを見て、またニッコリする。
 ねぇ、嬉しいよね?

「これ、ジジババみたい!」

 ……なんで?この紙の模様、チヨガミだよ。好きだよね?この前、あげたよ?そしたらニッコリしてくれた。
 小物入れだから、もう使えるよ?
 ねぇ、これ、ちゃんと見た?好きな模様の、小物入れだよ?きれいだよ?

……ねぇ、ジジババって、ダメなの?

「……もう帰ろう」

 帰るの?

 ニッコリしたまま、目に涙が溜まってきた。口がへの字になりそうだけど、ちゃんと口もニッコリするんだ。

 きっと、すぐに、プレゼントをありがとうって言ってくれるから、それまでニッコリしているんだ。

 そうだよね?大切に持ってきたんだから。

「……」


 こっちを見ないで、プレゼントを置いて帰っちゃった。



「ただいまー」

「おかえり。プレゼント交換どうだった?」

「楽しかった!」

 ニッコリするけど、まだ涙が出てくる。口がへの字になる。

「あれ、その袋。渡してないのかい?」

「なんか、もう同じやつ持ってるって言うから!これ好きなんだって!だから、おそろいで持ってる事にしたの!」

「……」

 なんでおばあちゃん、悲しい顔するの……



 あれ、みんな、お話をしてくれない気がする。
ニッコリしても、ニッコリしてくれない。
どうしてかな?

 すぐ近くにみんながいるのに、ここにいないみたい。

「ねぇ」

「……」

 話しかけても嫌なのかな?
 声を出さずに、首をかしげてみる。目にいっぱい、涙が溜まった。わからないって顔をしないと。だって、嫌じゃないかもしれないから。



 ……みんな、あっちへ行っちゃった……





「有難うございました」

「また来ます」

「お待ちしております」

 羽織が3着売れた。
細身のデニムに合わせるのね。良い。ピンヒールのミュールにも合ってる。

「店長さん!」

 今度は誰かな?

「こんにちはー」

 あ、先週来てくれた人。

「今回は何探してるんですか?」

「巾着です!濃い緑のが欲しくて」

「右の棚にいくつかありますよ」

「見てみます!このお店、オシャレで好きです。和柄が好きなんです!」

「嬉しいです。有難うございます」

 リサイクル着物をメインで売るこの小さな店は、リーズナブルで、常連客も多い。
大正浪漫なインテリアも少し置いてある。

 商品を楽しそうに眺めているお客様を見る。

 僕は、心からニッコリする。

 お客様も、それに気付いてニッコリしてくれる。

 この人達は子供の頃、千代紙で鶴を折った事はあるのかな?
 千代紙と同じ柄の小箱をもらったら、果たしてニッコリしてくれただろうか……



 今、毎日悲しい気持ちにさせられている人がどこかにいると思う。

 あなたがまだ子供でも、大人でも

「世界は広くて、自分はせまい場所にいる。広い世界は、せまい場所がたくさん集まって出来ている。だからあなたのすぐ近くには、ちゃんと違う場所がある」
ということを知ってほしい。

 子供なら、誰か大人に相談してほしい。

 少し勇気を出して、
「今いるところでは毎日とても悲しくて傷ついている。違う場所へ行ってみたい」
と言ってみてほしい。

 あなたが子供で、もし親が毎日ひたすら悲しくさせるなら、相談は親でなくて良い。



 あなたを悲しくさせた人を無理に許す必要は無い。
 あなたは何もしなくて良い。
 謝られていないうちは何歳になっても許さなくて良いし、謝られたって当然許さなくて良い。

 心の傷は目に見えづらいから、自分がどれだけ人を悲しませる事をしたか、わかろうとしない人も多い。残念だけれど。

 違う場所があるということは、間違いない。

 ーあなたの旅に幸あれー




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