〔チヨガミ〕
「明日は、みんなで折り紙をします。ここに、たくさん折り紙用紙があります。もちろん、好きな紙をお家から持ってきても良いですよー」
先生がそう言った。折り紙は得意だからすごく楽しみ。明日は綺麗なのを持って来よう。鶴を折ってみんなにあげたら、嬉しがるかな。
「ただいまー。おばあちゃん、明日みんなで折り紙をするから、紙をちょうだい」
「みんなで折り紙するの?それじゃあ、あの箱にあるの全部持っていきなさい」
たくさんもらった。
♢
「それでは、折り紙をしましょう。好きなように折ってね。わからなかったらお友達や先生に聞いてねー」
「はぁい」
持ってきた紙を出す。カドを合わせて、ピンとした鶴にしよう。
「なにそれ、可愛い紙!」
「少しあげるよ、好きなの良いよ」
「ありがとう!」
「わ!それ欲しい!模様がある!」
「良いよ!」
たくさん持ってきて良かった。みんなニコニコしてくれる。
「あら、千代紙、人気だねー」
これはチヨガミという名前なのか。先生もニコニコしてくれる。うれしい。
♢
帰る時間だ。家に帰ったら何をしようかな。
「来週、クリスマスのプレゼント交換しない?!」
楽しそう!
「いいよ!」
「いいよ!」
「やる!」
「うん!」
帰る仲間4人でプレゼント交換!楽しみ!
♢
「おばあちゃん、クリスマスにプレゼント交換をするの。1人1つ持って行って、誰のをもらえるかはクジ引きなの。2千円までのやつ!」
「それじゃあ、用意しないとね。明日か明後日、一緒に買いに行こう」
「うん!絶対ね!」
♢
「これが良い!」
「それが良いの?」
「絶対これが良い!喜んでくれるから」
「なら、それが良いねぇ」
「おばあちゃん、有難う!」
「気に入ったのが見つかって、良かったね。喜んでくれると良いねぇ」
「うん!」
♢
今から、プレゼント交換がはじまる!
みんなと同じように、目をつぶってコップの中に入った紙切れを取る。
「わぁ!」
「あっ!」
「おぉっ!」
「はい!」
それぞれ、名前を引いた人にプレゼントが入った紙袋を渡してる。
♢
「ありがとう!」
「わっ、やった!」
みんな、プレゼントもらって喜んでる。さぁ、渡そう!
「はい、これ!見て!」
「ありがとう!」
嬉しいだろうなぁ。
「……」
あれ?
なんでなにも言わないのかな?きっと、びっくりしたんだね。ニッコリしてみよう。
「……なにこれ。ダサい」
えっ、今、なんて言ったの?
どうしてそんな顔してるの?
「……これ、いらない!」
え?なんで?これ、好きでしょ?
きっと、からかってるんだ。
もっとニッコリしてみよう。
……?
ニッコリしてくれない。
こんなにニッコリしてるのに。
みんな、なんで嫌そうな顔なの?
みんなを見て、またニッコリする。
ねぇ、嬉しいよね?
「これ、ジジババみたい!」
……なんで?この紙の模様、チヨガミだよ。好きだよね?この前、あげたよ?そしたらニッコリしてくれた。
小物入れだから、もう使えるよ?
ねぇ、これ、ちゃんと見た?好きな模様の、小物入れだよ?きれいだよ?
……ねぇ、ジジババって、ダメなの?
「……もう帰ろう」
帰るの?
ニッコリしたまま、目に涙が溜まってきた。口がへの字になりそうだけど、ちゃんと口もニッコリするんだ。
きっと、すぐに、プレゼントをありがとうって言ってくれるから、それまでニッコリしているんだ。
そうだよね?大切に持ってきたんだから。
「……」
こっちを見ないで、プレゼントを置いて帰っちゃった。
♢
「ただいまー」
「おかえり。プレゼント交換どうだった?」
「楽しかった!」
ニッコリするけど、まだ涙が出てくる。口がへの字になる。
「あれ、その袋。渡してないのかい?」
「なんか、もう同じやつ持ってるって言うから!これ好きなんだって!だから、おそろいで持ってる事にしたの!」
「……」
なんでおばあちゃん、悲しい顔するの……
♢
あれ、みんな、お話をしてくれない気がする。
ニッコリしても、ニッコリしてくれない。
どうしてかな?
すぐ近くにみんながいるのに、ここにいないみたい。
「ねぇ」
「……」
話しかけても嫌なのかな?
声を出さずに、首をかしげてみる。目にいっぱい、涙が溜まった。わからないって顔をしないと。だって、嫌じゃないかもしれないから。
……みんな、あっちへ行っちゃった……
♢
「有難うございました」
「また来ます」
「お待ちしております」
羽織が3着売れた。
細身のデニムに合わせるのね。良い。ピンヒールのミュールにも合ってる。
「店長さん!」
今度は誰かな?
「こんにちはー」
あ、先週来てくれた人。
「今回は何探してるんですか?」
「巾着です!濃い緑のが欲しくて」
「右の棚にいくつかありますよ」
「見てみます!このお店、オシャレで好きです。和柄が好きなんです!」
「嬉しいです。有難うございます」
リサイクル着物をメインで売るこの小さな店は、リーズナブルで、常連客も多い。
大正浪漫なインテリアも少し置いてある。
商品を楽しそうに眺めているお客様を見る。
僕は、心からニッコリする。
お客様も、それに気付いてニッコリしてくれる。
この人達は子供の頃、千代紙で鶴を折った事はあるのかな?
千代紙と同じ柄の小箱をもらったら、果たしてニッコリしてくれただろうか……
♢
今、毎日悲しい気持ちにさせられている人がどこかにいると思う。
あなたがまだ子供でも、大人でも
「世界は広くて、自分はせまい場所にいる。広い世界は、せまい場所がたくさん集まって出来ている。だからあなたのすぐ近くには、ちゃんと違う場所がある」
ということを知ってほしい。
子供なら、誰か大人に相談してほしい。
少し勇気を出して、
「今いるところでは毎日とても悲しくて傷ついている。違う場所へ行ってみたい」
と言ってみてほしい。
あなたが子供で、もし親が毎日ひたすら悲しくさせるなら、相談は親でなくて良い。
♢
あなたを悲しくさせた人を無理に許す必要は無い。
あなたは何もしなくて良い。
謝られていないうちは何歳になっても許さなくて良いし、謝られたって当然許さなくて良い。
心の傷は目に見えづらいから、自分がどれだけ人を悲しませる事をしたか、わかろうとしない人も多い。残念だけれど。
違う場所があるということは、間違いない。
ーあなたの旅に幸あれー
