CDの海で、僕は今日も箱舟を探している(無印良品 ポリプロピレンケース)
気づけば、僕の部屋はCDでできた地層になっている。
一枚一枚は薄っぺらいくせに、積み重なるとまるで地質時代の年輪だ。下の層にはクラプトンの若かりし日の叫びが眠り、真ん中あたりには汗ばんだシティ・ポップの夏があり、いちばん上には昨日BookOffで掘り当てたばかりの、まだ帯すら外していないジャズが乗っている。掘れば掘るほど、自分の人生の断面が出てくる。困ったことに、この地層、放っておくと勝手に隆起するのだ。
団地暮らしというのは、面積との我慢比べである。丁寧な暮らしを気取ってはみるものの、実態は「いかに少ない足場で多くの音楽を溺れさせずに済むか」という、毎日の綱渡りだ。そんな僕の暮らしに、ある日一艘の箱舟がやってきた。無印良品の、あの縦長のストッカーである。
正直に言うと、最初は半信半疑だった。キッチンの隙間収納用として設計されたこの無骨な箱が、まさかCDスリムケースの避難所になるとは、開発した人も想像していなかっただろう。だが試してみると、これが驚くほど相性がいい。奥行40cmという寸法は、まるでCDスリムケースを縦に並べるために生まれてきたかのようにぴったりで、幅18cmの中にぎっしりと、しかし窮屈すぎない絶妙な余白を残して収まってくれる。キャスター付きだから、模様替えのたびに大陸移動のごとくズルズルと引きずって配置転換できるのも、腰の心配な中年男には地味にありがたい。
CDというのは不思議なメディアで、ジャケットの美術品としての魅力を諦めて「スリムケース」という質素な僧衣に着替えさせると、驚くほど嵩が減る。それでもなお増え続けるのだから、これはもう物欲というより、地層が地層を呼ぶ自然現象に近い。one more thingを求める心が、次の一枚、また次の一枚をBookOffの棚から連れて帰ってきてしまうのだ。
そして今、僕は静かに三艘目の箱舟を検討している。
すでに二台のストッカーがCDの重みでミシミシと軋みながらも、律儀に音楽を支えてくれている。だが正直に告白すると、床にはまだ「行き場のない移民たち」が積まれている。彼らを迎え入れる新しい船を出すべきか、それとも思い切って何かを手放すべきか——団地暮らしの永遠のジレンマである。ただ、経験上わかっているのは、迷っているうちにCDの水位はどんどん上がってくるということだ。堤防は、決壊してから作るものではない。
というわけで、同じように「気づけばCDが床を侵略していた」という漂流者たちへ。この無印の縦長ストッカーは、派手さはないが、黙々と仕事をこなす頑丈な相棒だ。キッチン用品として設計されたものが、いつの間にか僕の音楽人生を支える柱の一本になっている——そのミスマッチな感じも、なんだか自分の生き方に似ていて、嫌いになれない。
▼僕が実際に使っているストッカーはこちら
CDスリムケースと組み合わせれば、驚くほど省スペースにレコードコレクションならぬ「CDコレクション」を積み上げていける。三艘目を迎えるかどうかは、もう少し悩んでみようと思う。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援おねがいします!おこずかい制のおじさんに愛のチップを!