猫と本気で喧嘩する96歳にサイダーを
実家のキッチンで母の手伝いをしていたときのこと。
なにやらリビングから、猫さまの泣き声と祖母の鳴き声が(あ、逆だ)聞こえてくる。
なにを騒いでいるのかなと覗いてみると。
「退きなさい!退いてちょうだい!テレビがみえないでしょ!
退いてください。ねえ!じゃまで見えないのよー泣泣泣」
高齢になり、すっかりちいさくなってしまった祖母は、テーブルからちょこんと頭だけ出して座っている。
ちょうど、テレビまでの視線を遮る位置に6キロの長毛の猫さまが寝ていてテレビがみえないらしい。
猫さまめがけて孫の手で、バシバシしながら泣いている。
猫さまにはギリのラインで当たらないのだが、(ちゃんと距離をはかって寝ていらっしゃる)猫さまも文句をいわれているのはわかるらしく、祖母にむかってにゃごにゃごおっしゃっている。
ああ。懐かしい風景だ。
こうやってごねる祖母をいつも祖父は優しくなだめすかして泣き止ませていた。
だが、その祖父はもういない。
どうして私をおいていってしまったの…
まぁ、94歳までがんばってくれたけど。
しかたない、私が跡目を継ぎましょう。
チュールで猫さまを移動させ、祖母にはティッシュと、祖母の好物である少し気のぬけたサイダーをコップにひとくちそそぎ、キッチンへともどる。
祖母の記憶はもう2分もたないので、テレビをみはじめれば涙もかわくだろう。
母に、たいへんだったねといわれたが、
「ヒンメル(祖父)ならそうしただろうからさ」

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