見出し画像

テラグループ総帥徳重徹―テラモーターズ、Terra Charge、テラドローンで「日本発・世界一」を狙う男

はっきり言おう。

徳重徹は、最近の日本には珍しい起業家である。

国内で小さくまとまらない。安全なSaaSに逃げない。ハードウェアを恐れない。新興国の泥臭い現場に自ら入り、国策を読み、大企業を巻き込み、ついには戦場にまで踏み込む。かつてのソニーやホンダの創業者たちが持っていた「日本発・世界一」への執念を、令和の今、本気で背負っている数少ない人物だ。

そして、ここが肝心なところだ。

テラグループの本当の強みは、EVでも、EV充電でもない。

ドローンである。

それも、実戦で鍛えられた迎撃ドローンだ。

正確に言おう。テラグループが世界を相手に跳ぼうとしている一番の武器は、こちらから攻めるための攻撃ドローンではない。飛んでくる敵の無人機を撃ち落とす、防御側の迎撃ドローンである。ウクライナの戦場でイラン製の攻撃型無人機シャヘドを撃墜し、いま中東・欧州から引き合いが来ている。安価な無人機を1発数億円のミサイルで迎え撃つ時代を、1機40万円のドローンで塗り替えにいく。日本のスタートアップで、ここまで防衛の最前線に近づいた企業は極めて少ない。

EVでインドへ行き、充電インフラで日本の国策市場を押さえた。だが、それらは助走にすぎない。跳躍点は、防御のためのドローンなのである。

その挑戦を率いるのが、テラグループ総帥・徳重徹である。

これは単なる成功物語ではない。
EV、充電、そして迎撃ドローンへ。バッテリー事故、補助金、上場、地政学リスクまで背負った、日本発スタートアップの「危険な希望」の物語である。


この記事でわかること

  • 徳重徹が、なぜEV・EV充電・ドローンという重いハードウェア領域で勝負してきたのか

  • Terra Chargeが、最後発から約3年10カ月で累計3万5,000口超まで伸びた理由

  • 半期決起大会の投稿から見える、営業・補助金・施工管理・開発・コーポレートを束ねる組織力

  • テラドローンがウクライナの迎撃ドローン企業に出資し、実戦経験を取りに行く意味

  • 電子戦、光ファイバーFPV、AI自律飛行が、ドローン戦争をどう変えているのか

  • 最終的に「AIで自律飛行できるドローン」が勝ち筋になるのか

3分でわかる結論

テラグループの本質は、EVメーカーでも、充電器メーカーでも、ドローン作業会社でもない。地上ではEV充電インフラ、空ではUTM、戦場では迎撃ドローンを押さえにいく「次世代インフラ企業」である。

特に重要なのは、Terra Chargeの成長が「営業力だけ」では説明できない点だ。EV充電は、営業、補助金申請、設計、施工管理、アプリ開発、保守、コールセンター、コーポレートが一体にならなければ回らない。徳重徹が半期決起大会後に語った「全工程のチームワーク」が、最後発からトップシェア級へ上がった理由そのものである。

そして、テラドローンの次の勝負はAIである。電波妨害が強まれば、通常の無線操縦ドローンは飛べない。光ファイバーFPVは妨害に強いが、線を引きずるため距離・重量・運用制約がある。最後に残るのは、GPSも通信も切られた環境で、カメラ・慣性航法・地形照合・オンボードAIによって自律飛行し、目標を認識し、帰還または迎撃まで遂行できるAIドローンである。


目次

  • 第1章 徳重徹の原点――大企業、MBA、シリコンバレー、そして日本への危機感

  • 第2章 テラモーターズ――2010年、EVから始まった世界挑戦

  • 第3章 テラモーターズの投資家・株主――大企業連合を味方にする戦い方

  • 第4章 Terra Charge――後発から国内トップクラスへ

  • 追補A 半期決起大会のその後――ニュース化されたのは「新発表」ではなく組織力だった

  • 第5章 補助金ビジネスとしてのTerra Charge――強みと危うさ

  • 第6章 テラドローン――2016年、空のインフラへ

  • 第7章 テラドローンの株主・資本戦略――三井物産、INPEX、Wa’ed Ventures

  • 第8章 上場後のテラドローン――成長と赤字の両立

  • 第9章 国からの補助金――国家実証を使って海外市場へ行く

  • 第10章 サウジアラムコとのMOU――中東エネルギー施設を狙う

  • 第11章 ウクライナ投資――迎撃ドローンへ踏み込んだ意味

  • 第12章 Terra A1とTerra A2――低コスト迎撃ドローンが変える防空の経済学

  • 第13章 日本の地政学とドローン防衛――なぜ今、重要なのか

  • 第14章 ロシアの反応――スタートアップが国際政治の盤面に乗った

  • 第15章 世界と日本の潮流のなかのテラドローン――出資から実戦経験までを取りに行く

  • 追補B ドローンとAIの関係――電磁波攻撃、光ファイバーFPV、そして自律飛行AIドローンへ

  • 第16章 インドネシア火災事故――成長企業を襲った重大リスク

  • 第17章 バッテリー問題――EVとドローンに共通する成長の影

  • 第18章 テラモーターズ、Terra Charge、テラドローンは何を目指しているのか

  • 第19章 投資家から見たテラグループ――なぜ資金が集まるのか

  • 第20章 国からの補助金・政策支援――追い風はどこにあるか

  • 第21章 徳重徹の強さ――ハードウェアを恐れない起業家

  • 第22章 弱点とリスク――急拡大の裏側

  • 第23章 未来予測――テラグループはどこへ向かうのか

  • 第24章 日本にとっての意味――生成AIではなく、フィジカルAIの会社

  • 第25章 結論――徳重徹は、日本発ベンチャーの“危険な希望”である

第1章 徳重徹の原点――大企業、MBA、シリコンバレー、そして日本への危機感

徳重徹は1970年、山口県生まれ。九州大学工学部を卒業後、住友海上火災保険(現・三井住友海上火災保険)に入り、商品企画・経営企画に従事した。29歳で同社を退職して自費で渡米し、2000年に米Thunderbird経営大学院(サンダーバード国際経営大学院)でMBAを取得。シリコンバレーでは自ら最初のスタートアップを起業し、技術ベンチャーへの投資やハンズオン支援にも携わった。

この経歴で重要なのは、徳重が最初から「技術」と「グローバル市場」と「資本」の交差点にいたことである。

日本の大企業に入り、米国でMBAを取り、シリコンバレーでベンチャー投資を見る。その後に日本へ戻り、EVとドローンというハードウェア領域へ入る。これは、日本のスタートアップとしてはかなり珍しい進路である。

多くの日本スタートアップは、国内SaaS、アプリ、EC、メディア、人材、フィンテックなどから始まる。理由は明確だ。ハードウェアは難しい。資金がかかる。サプライチェーンが必要になる。品質問題が起こる。海外展開はさらに難しい。

しかし徳重は、最初から難しいほうへ行った。

EV、三輪車、インド、バングラデシュ、ドローン、測量、UTM、防衛、ウクライナ。どれも泥臭く、規制が重く、現場があり、事故も起こり得る領域である。

だからこそ、徳重徹という起業家は面白い。

なお、徳重には『世界へ挑め!』(フォレスト出版)、『常識を逸脱せよ。』(プレジデント社)、『「メイド・バイ・ジャパン」逆襲の戦略』(PHP研究所)などの著書がある。「日本発メガベンチャーをもう一度つくる」という主張は、創業当初から現在まで一貫している。


第2章 テラモーターズ――2010年、EVから始まった世界挑戦

テラモーターズは2010年4月に日本で創業された。

最初のテーマは、電動二輪・電動三輪EVだった。日本国内では、創業から2年ほどで電動二輪の国内シェアNo.1を獲得したと同社は説明している。2013年にはスマートフォン連携型EV「A4000i」を発表した。

ただし、テラモーターズの本当の勝負は日本ではなかった。

勝負の舞台はインドである。

インドでは、オートリキシャや三輪タクシーが都市交通、近距離移動、ラストワンマイル物流の重要な役割を担っている。そこへ電動三輪EVを投入する。これは、単に「環境に良い乗り物を売る」という話ではない。

運転手にとっては、燃料代が下がる。
都市にとっては、大気汚染が減る。
政府にとっては、脱炭素と産業育成になる。
メーカーにとっては、巨大市場が開く。

この構造を早期に見抜き、徳重はインド市場へ入った。

インド政府は2015年にFAME India、つまりFaster Adoption and Manufacturing of Electric Vehicles制度を導入し、EV購入補助や充電インフラ整備を進めた。テラモーターズのインド展開は、この政策的追い風とも重なった。

実績も出ている。同社は、インドで年間3万台規模のEV販売を達成し、電動三輪市場でトップシェアを獲得したと説明している(会社発表ベース)。

つまりテラモーターズは、単独で市場を作ったのではない。

インド政府のEV政策、都市交通の需要、脱炭素、低所得層の起業機会、三輪モビリティ文化という複数の波に乗った。

ここが重要である。

徳重徹の事業の特徴は、「技術だけで勝つ」ではない。
「国の政策」「現地の社会課題」「インフラの空白」「資本市場」を組み合わせることで、勝てる場所を探していく。


第3章 テラモーターズの投資家・株主――大企業連合を味方にする戦い方

テラモーターズ、そしてそこから生まれたTerra Chargeの特徴は、投資家・提携先の顔ぶれにある。

ここで、グループの構造を整理しておきたい。

EV充電事業「Terra Charge」は2022年4月、テラモーターズ社内の新規事業として立ち上げられた。その後2024年2月、Terra Motors株式会社はTerra Charge株式会社へ社名を変更し、インドの電動三輪・金融事業は新設のTerra Motors株式会社へ承継された。

つまり現在のテラグループは、EV充電のTerra Charge、新興国EVのTerra Motors、ドローンのTerra Droneという三社体制である。

Terra Chargeには、エネルギー、金融、リース、自動車関連、不動産、海外投資家など、EV充電インフラの社会実装に必要なプレイヤーが関わっている。

これは単なる資金調達ではない。

EV充電インフラは、充電器だけ売れば終わりではない。設置場所、電力契約、マンション、商業施設、自治体、金融、リース、保守、駐車場、アプリ、決済、補助金申請、工事、電力ピーク制御まで必要になる。

そのため、投資家には意味がある。

自動車関連企業はモビリティの知見を持つ。
エネルギー会社は電力・ガス・エネルギーマネジメントに強い。
リース会社は法人車両や設備投資の金融設計に強い。
銀行は融資枠を持つ。
海外投資家はグローバル展開の視点を持つ。

つまり徳重は、EV充電インフラを「一社で全部やる」のではなく、既存大企業の資産を巻き込む形で社会実装しようとしている。

資金調達も大型化している。

シリーズCでは、大阪ガス、東京センチュリー、住友三井オートサービスなどから約40億円を調達。2024年12月にはシリーズD前半として、みずほ銀行、東邦ガス、みずほリース、河村電器産業、海外機関投資家などからエクイティ・デットあわせて100億円を調達した。さらに2025年8月には後半として104億円を追加し、シリーズD全体で204億円、累計調達額は261.4億円に達したと同社は発表している。

未上場のEV充電スタートアップとしては、国内最大級の調達規模である。

ここで見えるのは、徳重の狙いが単なる充電器設置数ではないということだ。

彼が目指しているのは、EV充電器を入り口にしたエネルギーインフラである。

将来、EVは単なる車ではなく、走る蓄電池になる。
マンション、商業施設、工場、オフィスに設置された充電器は、電力需給調整の端末になる。
太陽光、蓄電池、EV、電力料金、デマンドレスポンスがつながる。

この構想において、Terra Chargeは「充電器販売会社」ではなく、「EV時代の電力接点」を取りに行く会社になる。


第4章 Terra Charge――後発から国内トップクラスへ

Terra Chargeは2022年4月に始まった。

Terra Chargeのサービスは、EV充電器、アプリ、決済、クラウド管理、設置工事、ハード・ソフトの管理運用を一体で提供するものである。

日本のEV充電インフラは長く不足してきた。EVを買いたくても、マンションに充電器がない。商業施設にも十分にない。高速道路の急速充電器も出力不足や待ち時間の問題がある。地方では設置密度が低い。

経済産業省は2030年までに充電インフラ30万口、うち公共用急速充電器3万口を整備する方針を掲げている。一方、国内の設置数は2024年3月時点で約4万口、2025年時点でも約6.8万口にとどまるとされ、目標との差はなお大きい。

Terra Charge自身の国内設置数は、2024年10月末に1万口、2025年3月末には1.5万口を突破したと発表されている。2022年4月の最後発参入から3年での数字である。

さらに2025年後半には、設置先の質も変わり始めた。NEXCO西日本が管理する高速道路休憩施設のEV急速充電設備整備公募で、近畿圏・中国・四国・九州・沖縄など全26カ所のサービスエリア・パーキングエリアの整備・運営事業者に選定された。これは、従来のマンション・商業施設中心の充電器設置から、高速道路インフラへ踏み込む動きである。2026年度の稼働開始を目指すとされ、Terra Chargeにとって「生活圏の充電」から「移動インフラの充電」へ広がる重要な転換点になる。

同じ2025年12月には、JAFとのEV領域での協業、吉野家21店舗へのEV急速充電器拡大、トヨタ不動産の「X-BASE SHIBUYA」への急速充電器導入も発表された。これらは、Terra Chargeが単なる充電器設置会社ではなく、飲食、商業施設、オフィス、ロードサイド、高速道路をつなぐ「EV時代の集客インフラ」へ移行しようとしていることを示している。

海外では、インド(コルカタ)、タイ(バンコク)、インドネシア(ジャカルタ)で、いずれも「日本企業初」のEV充電インフラ事業として展開している(会社発表ベース)。

Terra Chargeの成長は、この国策と完全に重なる。

補助金がある。
設置目標がある。
脱炭素目標がある。
マンション・商業施設・自治体・法人車両の需要がある。
そこへ、設置・運用・アプリ・決済・補助金申請支援をまとめて提供する。

つまり、Terra Chargeは国のEV政策を事業機会に変換している。


追補A 半期決起大会のその後――ニュース化されたのは「新発表」ではなく組織力だった

2026年7月上旬、徳重徹はFacebookで、Terra Chargeの半期決起大会について次の趣旨の投稿をしている。

「昨日はEV充電、テラチャージ、半期の決起大会。営業、補助金部隊、施工管理、開発、コーポレートすべての工程がチームワーク高くないと回らない事業。最後発からなぜ、3年でトップシェアになれたのか。昨日よくわかりました。メンバー全員に感謝!!」

この投稿に連動した大型の新規事業発表や、半期決起大会そのものを報じる公式プレスリリースは、確認できる範囲では見当たらない。したがって、ここを「新発表があった」と書くのは正確ではない。

ただし、この投稿は記事に入れる価値がある。

なぜなら、Terra Chargeの競争力の核心が、徳重自身の言葉で非常に明確に表れているからだ。

EV充電インフラは、単に充電器を売る事業ではない。営業が案件を取っても、補助金申請が通らなければ設置は進まない。補助金が通っても、現地調査、電気容量確認、設計、施工管理、設置先との調整、アプリ連携、課金、保守、問い合わせ対応が詰まれば、サービスは回らない。つまり、EV充電は「営業だけが強い会社」でも、「機械だけを持つ会社」でも勝てない。

徳重が投稿で挙げた、営業、補助金部隊、施工管理、開発、コーポレートという工程は、Terra Chargeの事業構造そのものである。

実際、同社は2026年2月26日時点で国内EV充電器の累計設置数が35,269口となり、3万5,000口を突破したと発表している。急速充電器も1,005口の設置を完了し、1,000口を超えた。2022年4月のサービス開始から3年10カ月での達成である。発表では、国内の充電器設置数が約6.8万口であることにも触れ、Terra Chargeが日本のEV充電インフラの一角を担う規模まで成長したことを示している。

この「3万5,000口突破」は、半期決起大会の投稿とつながる。つまり、最後発から短期間で拡大できた理由は、トップ営業の突破力だけではなく、組織の処理能力にあった。

2026年4月には、事業開始4年目で初の新卒第一期生を迎えたことも発表された。徳重は新卒社員に対し、「第1期新卒社員は、テラチャージの未来を形づくる中核となる存在」「失敗を恐れず、フルスイングで挑戦してほしい」といったメッセージを贈っている。これは、Terra Chargeが創業者主導の急成長フェーズから、組織で拡大するフェーズへ移ったことを示す。

さらに2026年7月1日には、初回利用者向けの「WELCOMEクーポン」キャンペーンを開始した。ここで重要なのは、Terra Chargeが設置口数の拡大だけでなく、実際の利用体験、アプリ利用、初回充電の心理的ハードル低減へ踏み込んでいる点である。EV充電インフラは、置けば終わりではない。使われて初めて意味がある。

直近では、父の日ドライブ応援キャンペーン、アップガレージ横浜町田総本店での急速充電器サービス開始、初回利用キャンペーンなど、利用者向け施策が目立つ。これは、設置先を増やすBtoBフェーズから、EVユーザーの利用頻度を高めるBtoC運用フェーズへ移行しつつあることを示している。

つまり、半期決起大会後に見えてきたのは、新しい単発発表ではない。

「EV充電インフラは、チームでしか勝てない事業である」

この認識である。

営業が案件を取る。補助金部隊が制度を読み、申請を通す。施工管理が現場を動かす。開発がアプリと課金を支える。コーポレートが資金・採用・管理を整える。カスタマーサポートが利用者の不安を吸収する。

この一連の工程が噛み合ったからこそ、Terra Chargeは最後発から急拡大できた。

本稿の前半では、Terra ChargeをEV充電インフラ企業として見てきた。しかし、より正確に言えば、Terra Chargeは「補助金・施工・アプリ・保守まで統合した、EV充電オペレーション企業」である。この点を追記しておきたい。

第5章 補助金ビジネスとしてのTerra Charge――強みと危うさ

EV充電インフラ事業を見るとき、補助金の存在は避けて通れない。

日本政府はEV充電器整備を進めるため、充電設備導入への補助制度を整えてきた。充電インフラ関連の補助金予算は、2022年度の50億円から2023年度175億円、2024年度360億円へと拡大したと報じられており、国の本気度がうかがえる。Terra Charge自身も、EV充電設備の補助金申請の代行・サポートを提供している。

これはビジネスとして非常に合理的である。

設置先の企業やマンションオーナーにとって、EV充電器は必要だとわかっていても、初期投資が重い。補助金制度も複雑で、申請が面倒である。そこをTerra Chargeが支援すれば、導入障壁が下がる。

一方で、補助金依存には危うさもある。

補助金が厚い時期は設置が進む。
補助金が減ると、投資判断が厳しくなる。
補助金の条件が変わると、収益モデルが変わる。
入札制や費用対効果重視が進むと、価格競争が強まる。

つまり、Terra Chargeにとって本当の勝負は「補助金で設置数を増やすこと」ではない。

補助金が縮小しても回る収益構造を作れるか。
充電器の稼働率を上げられるか。
電力マネジメントで付加価値を出せるか。
マンション、商業施設、法人車両、地方自治体を押さえられるか。
エネルギー会社やリース会社との提携を収益に変えられるか。

ここが今後の焦点になる。


第6章 テラドローン――2016年、空のインフラへ

2016年、徳重徹はテラドローンを創業した。

テラドローンは、測量、点検、農業、インフラ、石油・ガス、建設、化学プラントなど、産業向けドローンのサービスを展開してきた。

その実績は数字にも表れている。同社は測量、点検、農業、運航管理の分野で累計3000件以上の実績を持ち、ドイツの調査会社Drone Industry Insightsが発表する「ドローンサービス企業 世界ランキング」では2019年以降連続でトップ2にランクインし、2024年には世界1位を獲得した。2025年には経済産業省主催「日本スタートアップ大賞2025」で国土交通大臣賞も受賞している。

日本のスタートアップが、世界ランキングの首位を取る。これは日本のドローン業界では例外的な事例である。

産業用ドローンの海外展開も続いている。2026年6月には、屋内・閉鎖空間の点検向けドローン「Terra Xross 1」について、米国トップクラスの産業用ドローン販売代理店DSLRProsと販売代理店契約を締結した。防衛が注目を集めがちだが、点検・測量といった本業のドローンソリューションも、着実に北米市場へ広げている。

テラドローンの事業は大きく二つに分けられる。

第一に、ドローンソリューション事業。
測量、点検、農業、施設管理、石油・ガス、建設などで、ドローンを使った現場課題を解決する。

第二に、運航管理、UTM事業。
多数のドローンや空飛ぶクルマが空を飛ぶ時代に、飛行計画、位置情報、空域管理、安全管理を担う。

この二つのうち、将来性が大きいのはUTMである。

ドローンは、機体だけでは社会実装できない。都市の上空、港湾、空港周辺、送電線、工場、物流ルート、災害現場などで多数の機体が飛ぶなら、空の交通整理が必要になる。これがUTM、Unmanned Traffic Managementである。

このUTM領域で、テラドローンは世界的な布石を打ってきた。

ベルギーのUTMプロバイダーUniflyとは、創業間もない2016年に戦略的パートナーシップを締結し、出資を重ねた上で、2023年7月に株式51%を取得して子会社化した。Uniflyは欧米8カ国で国家レベルのUTM導入実績を持ち、ドイツ政府傘下の航空管制サービスプロバイダーDFSが第二筆頭株主に名を連ねる企業である。

米国では2024年3月、UTMサービスのAloft Technologiesに出資して筆頭株主となった。Aloftは米連邦航空局(FAA)が認定するUTMサービスプロバイダーで、米国の簡易UTMにあたるLAANCで84%以上のシェアを持つとされる。

ただし、Aloftとの関係はその後変化した。テラドローンは2025年9月に完全子会社化の方針を発表していたが、事業環境・為替・条件面の変化を受け、2026年2月に保有していたAloft株式35.3%をすべて譲渡した。これによりAloftは持分法適用関連会社から外れ、現在はテラドローングループの一員ではない。2024年に筆頭株主となり、2025年に完全子会社化へ動いたものの、2026年に全株式を手放した、という経緯である。

したがって、現時点のUTM戦略は、欧州のUniflyを軸に、日本・アジア・中東での社会実装を進める構図として見るべきである。Aloftの離脱は、米国UTM市場の直接取り込みという点では後退である。一方、資本効率や為替リスクを考え、過度に高い買収を避けた判断とも読める。テラドローンのUTM戦略は依然として重要だが、米国市場については再構築が必要になった。

一方で、Unifly側では前進もある。2026年5月、Uniflyはマレーシア国家UTMプラットフォームのU2、すなわち運航交通管理システムの技術パートナーに選定された。これは、Aloft離脱後も、テラドローングループのUTM事業が欧州だけでなくアジアの国家レベル空域管理インフラへ入り込む可能性を示す材料である。Aloftの売却で「米国UTMの直接支配」は後退したが、Uniflyを通じた国家UTM案件は、なお同社の中長期テーマであり続ける。

さらに2026年6月、Uniflyは欧州最大級の防衛企業MBDAと、対ドローン(C-UAS)ソリューションで提携すると発表した。MBDAは、エアバス、BAEシステムズ、レオナルドが共同保有する欧州の複合兵器大手である。この提携は、Uniflyが持つUTM(空域を検知・識別・管理する技術)を、MBDAの防空システムと組み合わせ、空港や重要インフラ、軍事施設に迫るドローンを「検知から対処まで」一気通貫で無力化する仕組みを狙う。ここで重要なのは、UTMが民間の空の交通整理にとどまらず、防衛の対ドローン網へと直結し始めている点だ。将来的には、Uniflyの管制基盤に、テラドローンの迎撃ドローンTerra A1・A2を組み込む構想も示されている。地上の充電インフラ、空のUTM、そして防空。徳重が張ってきた布石が、ここで一本につながり始めている。

ここが、徳重徹の戦略の本質である。

EVでは車両から充電インフラへ行った。
ドローンでは機体や作業から空の運航インフラへ行った。

地上では充電インフラ。
空ではUTM。

徳重は、乗り物そのものよりも、乗り物が動くためのインフラを取りに行っている。


第7章 テラドローンの株主・資本戦略――三井物産、INPEX、Wa’ed Ventures

テラドローンは、上場前から大規模な資金調達を行ってきた。

2022年にはシリーズBで7000万ドル規模の資金調達を発表し、UTMやUAM、つまり空飛ぶクルマ関連ソリューションの成長を加速させる目的を示した。

また、2023年にはサウジアラムコ系のWa’ed Venturesから1400万ドル(約18.5億円)の投資を受け、サウジアラビアに現地拠点Terra Drone Arabiaを設立したことも大きな意味を持つ。

上場時の株主構成を見ると、筆頭株主は徳重の資産管理会社系(役員関連で約39%)、第2位が徳重徹個人(新株予約権含めて約19%)、そしてサウジアラムコ系VC(約5%)、三井物産(約3.6%)、SBI系VC、INPEX(約2.2%、上場時に全株売出)と続く。金融VCだけでなく、商社・エネルギー大手が名を連ねている点が特徴である。

さらに2025年5月20日には、テラドローンが三井物産と、米国でのドローン・空飛ぶクルマ事業に向けた共同出資会社設立の検討でMOUを締結したと発表した。共同出資会社はテラドローンが過半を出資する方針とされ、発表当日の株価は前日比約15%高と急伸した。

ここで見えるのは、テラドローンの資本政策が「産業株主」を重視しているということだ。

三井物産は総合商社。
INPEXはエネルギー。
Wa’ed Venturesはアラムコ系。
これらは単なる金融投資家ではない。

ドローン点検、石油・ガス施設、インフラ管理、中東展開、海外案件、空のインフラ構築において、事業シナジーを持つ投資家である。

これは、Terra Chargeのエネルギー、金融、リース、自動車関連企業との連携と同じ構造である。

徳重徹は、資金だけを取りに行っているのではない。
事業展開に必要な大企業の信用、販売網、顧客基盤、現地アクセスを資本政策に組み込んでいる。


第8章 上場後のテラドローン――成長と赤字の両立

テラドローンは2024年11月29日、東証グロース市場へ上場した。

上場は大きな節目である。

しかし、上場したからといって、すでに安定黒字企業になったわけではない。テラドローンは、国内外で拠点を作り、UTM企業を買収・投資し、中東で案件を広げ、ウクライナ防衛領域にも踏み込んでいる。先行投資が重い。

数字で確認しておこう。

2025年1月期は、売上高が前期比49.7%増の44億3500万円、最終損益は4億7400万円の赤字だった。

2026年1月期は、売上高47億8200万円(前期比7.8%増)に対し、営業損益は11億4300万円の赤字、最終損益は23億2700万円の赤字へ拡大した。後述するインドネシア火災事故に伴う特別損失約7億円や、米国持分法適用会社の子会社化中止に伴う株式譲渡損などが響いた。

2027年1月期については、売上高50億7300万円、最終損益12億6600万円の赤字を会社は予想している。サウジアラビアなどでの受注増を見込む一方、先行投資は続く。

徳重は決算説明会で「ドローン業界には強い追い風が吹いている。世界でその機会を取り込んで事業を成長させたい」と語ったと報じられている。

さらに2027年1月期第1四半期では、売上高10億1000万円、純損益2億4900万円の赤字と報じられている。会社側は2027年1月期通期について、売上高50億7300万円、最終損益12億6600万円の赤字という予想を据え置いている。つまり、火災事故後も事業継続はしているが、黒字化まではまだ距離がある。

一方で、株式市場の反応は激しい。防衛事業への参入を表明した2026年3月以降、テラドローン株には防衛テーマとして短期資金が殺到した。3月末のウクライナ出資や5月の防衛装備庁受注のたびに株価は急騰し、ストップ高や上場来高値を繰り返した。過熱を受けて東証は3月27日に同社株を日々公表銘柄に指定し、4月上旬には委託保証金率を引き上げる信用規制も入った。株価は一時6000円台から1万円前後まで乱高下し、市場では典型的な「材料株」「高ボラティリティ銘柄」と見なされている。業績の裏づけが赤字である以上、この期待先行の株価をどう実需へ結びつけるかも、経営の宿題である。

問題は、赤字そのものではない。

重要なのは、その赤字が将来の独占的・高収益なポジションにつながるかどうかである。

もしテラドローンが単なるドローン測量会社で終わるなら、利益率は限定的かもしれない。
しかし、UTM、空飛ぶクルマ運航管理、防衛ドローン、エネルギー施設点検、国家インフラ案件を押さえるなら、先行投資の意味は大きくなる。


第9章 国からの補助金――国家実証を使って海外市場へ行く

テラドローンは、国の補助金・実証事業も活用している。

経済産業省のグローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金に採択され、インドネシアにおけるUTMシステムの実用性実証を行った。

さらにUAEやサウジアラビア向けにも、UTMの社会実装や新規事業創出を狙う事業に採択されている。

これは非常に重要である。

テラドローンは、単に海外営業をしているのではない。
日本政府のグローバルサウス政策、インフラ輸出、デジタル公共財、ドローン社会実装支援と連動している。

日本企業が海外でインフラを売るとき、政府の後押しは大きい。
特に空域管理、ドローン物流、空飛ぶクルマ、航空安全のような領域では、相手国政府、航空当局、通信規制、警察、防衛、自治体との調整が必要になる。

そこへ、日本政府の補助事業として入れば、単なる民間営業よりも信用を得やすい。

徳重徹の戦略は、ここでも一貫している。

国策の流れを読む。
補助金や実証を活用する。
現地政府・大企業とつながる。
実証から商用化へ進む。
インフラのポジションを取る。


第10章 サウジアラムコとのMOU――中東エネルギー施設を狙う

2025年4月、テラドローンはサウジアラムコとのMOUを発表した。

内容は、アラムコとドローン、ロボティクス、AIを活用した石油・ガスセクター向けソリューションの革新とローカライゼーションを探る戦略的パートナーシップである。

これは、テラドローンの未来にとって非常に大きい。

報道によれば、2025年から2026年にかけてアラムコ施設での試験点検を実施し、2027年の本格運用開始を想定している。最終契約を獲得すれば、テラドローンにとって過去最大のドローン点検案件となる。徳重はロイターの取材に対し、中長期で数十億円規模の売上を目指す考えを示したとされる。

布石はMOUだけではない。2025年5月にはサウジの検査人材育成機関ITQANと、7月には検査会社FAHSSともMOUを締結し、現地の点検人材育成やサービス共同展開を進めている。サウジ側の国家戦略「Vision 2030」が掲げる人材ローカライゼーションと歩調を合わせた動きである。

石油・ガス施設は、巨大で、危険で、人が点検するにはコストとリスクが高い。
ドローン、ロボット、AIによる点検は、労働安全、保守効率、異常検知、コスト削減に直結する。

さらに中東では、エネルギー施設が安全保障上の重要インフラでもある。サウジの石油施設は過去にもドローンやミサイル攻撃の対象になってきた。

つまり、テラドローンが中東で扱うテーマは、単なる点検では終わらない。

エネルギー施設点検。
ドローン運航管理。
施設防衛。
迎撃ドローン。
ローカル生産。
AI監視。

これらが一つにつながる可能性がある。


第11章 ウクライナ投資――迎撃ドローンへ踏み込んだ意味

テラドローンの歴史の中で、2026年は大きな転換点になる。

それまでのテラドローンは、産業用ドローン、測量、点検、農業、UTM、空飛ぶクルマ関連の運航管理という文脈で語られることが多かった。ところが2026年、同社はウクライナの迎撃ドローン企業に相次いで戦略投資し、防衛領域へ明確に踏み出した。

出発点は、2026年3月23日の防衛装備品市場への本格参入表明である。テラドローンは、迎撃ドローン、FPVドローン、偵察ドローンに加え、海上安全保障向けの無人ボートまで開発・提供する方針を打ち出した。迎撃ドローンには、量産性に優れたロケット型、基地へ帰還・再利用できる固定翼型、速度と航続距離を高めたジェットエンジン搭載型の三タイプを用意するとした。あわせて、輸出入や各国防衛産業との技術連携を担うグローバル拠点として、2026年度内に米国法人「Terra Defense」を設立する方針も示した。日本の多層的沿岸防衛体制への適応に加え、米国・NATO加盟国・ウクライナ・アジアへの展開、さらに日本政府のOSA(政府安全保障能力強化支援)枠組みを通じた機体提供まで視野に入れる。この発表を受け、東京株式市場では同社株にストップ高水準まで買いが集まった。

市場の裏づけも大きい。同社の説明によれば、2024年度の世界の防衛関連支出は過去最高の約432兆円に達し、なかでも無人システム分野は年率7.6%超の成長が見込まれる。軍用無人機(UAV)市場だけでも2025年の約158億ドルから2030年に約228億ドルへ拡大すると予測されている。テラドローンは、この急拡大する市場を、実戦で鍛えた技術と日本の量産力で取りにいこうとしている。

その一週間後、2026年3月31日、テラドローンは子会社のTerra Inspectioneering(オランダ)を通じて、ウクライナ・ハルキウ拠点のAmazing Drones(アメイジング・ドローンズ)と資本業務提携契約を締結し、戦略的出資を実施した。同時に、迎撃ドローン「Terra A1」の発売も発表した。Terra A1は、シャヘド型のような攻撃用無人機に対抗する低コスト迎撃ドローンとして位置づけられている。

ここで、言葉を整理しておきたい。

「戦闘ドローン」と一口に言っても、中身は分かれる。敵の陣地や車両を攻撃しにいくFPV型や自爆型が「攻撃ドローン」であり、ウクライナに飛来するシャヘドや、戦車を破壊するFPVドローンがこれにあたる。一方、テラA1やA2は、その飛んでくる無人機を空中で撃ち落とす「迎撃ドローン」である。攻める兵器ではなく、守る兵器だ。同社が英語の発表でも一貫して「interceptor drone」と呼び、「attack drone」とは呼んでいないのは、この性格を明確にするためである。

本稿で「防衛ドローン」と書くとき、その中心にあるのはこの迎撃ドローンと、後述する偵察・監視用ドローンである。こちらから攻撃を仕掛けるものではなく、飛来する脅威を「見つけて、撃ち落とす」ための装備だと理解してほしい。専守防衛を国是とする日本にとって、この区別は決して小さくない。

日本のドローン企業によるウクライナ防衛企業への投資は初とされ、発表当日には首都キーウで、現地の防衛技術クラスター「Brave1」関係者らも交えて記者会見を開いた。徳重はこの半年で8回ウクライナを訪問したと明かし、「多くの日本企業は戦後支援を考えるが、ウクライナに必要なのは今この瞬間の支援だ」と語っている。同社は迎撃ドローンなどの技術研究に約1000万ドル(約16億円)規模を投じる方針も示した。

続いて2026年4月28日、テラドローンは同じくTerra Inspectioneeringを通じて、ウクライナの固定翼迎撃ドローン企業WinnyLab(ウィニーラボ)にも戦略的出資を実施した。WinnyLabは、固定翼型の迎撃ドローン「Terra A2」を担う企業である。

この間、動きは驚くほど早かった。ここで、テラドローンがウクライナで実際に何をしているのかを、具体的に見ておきたい。

まず、現場の切迫感が桁違いである。同社によれば、ある地域では月間およそ5000機規模のドローンが飛来している。これを1発数億円の迎撃ミサイルで落とし続ければ、守る側の財政と弾薬が先に尽きる。そこに、1機約2500ドル(約40万円)の迎撃ドローンを大量に投入する。これがテラA1の思想である。

テラA1を開発したアメイジング・ドローンズ社は、ウクライナ・ハルキウを拠点とするディフェンステック企業だ。CEOのマクシム・クリメンコ氏によれば、同社はエンジニアや兵士のボランティア活動から始まり、いまや自国を守る製造拠点へと成長した。電子戦や通信妨害が常態化する戦場で、現場のフィードバックを即座に機体へ反映させる開発力が、徳重が提携を決めた理由だという。

テラA1の機体そのものは、全長約47cmの小型ロケットのような形をしている。その場から垂直に離陸し(VTOL方式)、大がかりな射出装置を必要としない。離陸後は10秒ほどで時速200kmまで加速し、4つのローターで水平飛行に移る。最大時速はおよそ300kmで、時速180〜200kmとされるシャヘドを速度で上回り、追いつける。飛行時間は約15分と短く、近距離での即応迎撃に用いる。目標に体当たりするか、至近で自爆し、その破片で撃墜する仕組みである。

2026年4月17日、テラA1はまずウクライナ軍の1部隊に導入された。ウクライナでは、少数を実戦投入して現場評価を得て、良ければ追加導入していく短サイクル型の調達が一般的だという。テラA1もそのモデルに乗った。チェルニヒウ州の対シャヘド迎撃部隊の指揮官は、操作性の良さや搭載カメラの性能を評価するコメントを寄せている。実際に操縦したウクライナ兵は、急旋回のような高機動でも問題なく反応すると語ったと伝えられる。

そして4月28日、テラドローンはテラA1がシャヘド型の長距離無人機の迎撃に成功したと発表し、その映像を公開した。公開された動画では、迎撃ドローンが自爆型ドローンを追尾して肉薄し、直後に通信が途切れて画面が砂嵐になる。迎撃機が自爆し、その破片で標的を撃墜したものと見られている。同社はこれを「コンバットプルーブン(実戦実証済み)」の証拠と位置づけた。以後、テラA1は複数のシャヘドを撃墜し、すでに人命を救ったとも評価されている。

続く5月19日、固定翼型のテラA2も実戦環境での運用に入った。開発元のウィニーラボ社(CEOはオルハ・ビハン氏)は、固定翼型UAVと広域監視・迎撃を専門とするウクライナ企業だ。テラA2は全長1m級で、専用カタパルトから発進する。最大時速312km、航続75km、40分以上の滞空が可能で、防空レーダーと連携して広域監視・目標検知・追尾・迎撃までを一体でこなす。近距離で即応するテラA1に対し、テラA2は「来る前に、遠くで対処する」広域防空レイヤーを担う。あるウクライナの部隊は、複数のシステムを比較検証したうえでテラA2を採用し、公表スペックを上回る成果を現場で示していると評価したという。そして2026年6月15日、テラドローンはテラA2もシャヘド型の長距離無人機の迎撃に成功したと発表した。これで、近距離のテラA1、広域のテラA2という二層がともに「コンバットプルーブン」となり、多層防空の骨格が実戦で裏づけられたことになる。

両機はいずれも、通常の試験場では再現できないGPS妨害・電子戦・通信遮断が常時発生する環境で運用され、そこで得たデータをもとに高速で改良を重ねている。テラドローン自身が語るように、攻撃側の性能は数カ月単位で上がり、迎撃側も改良し続けなければならない「いたちごっこ」である。だからこそ、実戦の改良サイクルに直結していることが、この事業の核心的な価値になる。

ここで見逃せないのは、開発のスピードそのものだ。ゼロから自社開発すれば数年から十数年かかる迎撃ドローンを、テラドローンは実戦で鍛えられたウクライナ企業に出資して技術を統合することで、わずか数カ月で製品化した。自社研究開発と国内サプライチェーンで積み上げる三菱重工や川崎重工といった伝統的な防衛企業とは、まったく異なるアプローチである。これが日本の防衛産業の常識を覆すやり方だという評価もある。

なお、ウクライナ全体でも迎撃ドローンの存在感は急速に高まっている。報道によれば、ゼレンスキー大統領は迎撃ドローンの成功率を約68%、価格を1機3500〜5000ドル程度とし、10万ドル超のシャヘドに対する最もコスト効率の良い防衛手段だと語ったとされる。ウクライナ軍の無人機部門の副司令官も、迎撃ドローンが防空撃墜数の3割を担うようになったと述べたと伝えられる。テラA1・A2は、この大きな潮流の一部として位置づけられる。

そして2026年6月15日、テラドローンはAmazing DronesとWinnyLabの両社を、それぞれ発行済株式の50%を取得して連結子会社化すると発表した。買収額は非開示である。WinnyLabについては、同日発表されたグループの欧州防衛拠点、エストニアのTerra Defense Europeが持分50%を取得して筆頭株主となり、過半数の取締役を派遣する体制と報じられている。経営権を握ることで、攻撃側と迎撃側で数カ月単位で続く「いたちごっこ」に、開発の意思決定を速めて対応する狙いだという。

さらに同じ6月15日、テラドローンは第三弾として、ウクライナ・リヴィウ拠点の固定翼型UAVメーカーBesomar(ベソマー)社と、偵察用ドローンの合弁会社設立準備を開始したと発表した。偵察ドローンを手掛けるのは同社として初めてで、機体「Terra C1」は半径110kmの範囲を約3時間連続飛行でき、GPS妨害下でも運用できるとされる。これにより、広域を哨戒する固定翼型「Terra A2」、近距離を即応で守るロケット型「Terra A1」に、脅威を早期に発見する偵察・監視の「目」を加え、「見つける・把握する・対処する」を一体化した多層型無人防衛ソリューションを構築する構想が明確になった。

生産面では、迎撃ドローンの開発・製造に3Dプリンターを多用することでイラン製攻撃ドローンより低価格を実現し、需要増を受けて月産1000機体制まで生産能力を引き上げる方針も示している。

そして防衛事業は、輸出だけでなく国内調達でも動き出した。2026年5月8日、テラドローンは防衛装備庁から「モジュール型UAV(汎用型)教育用」300機を約1億1543万円で受注したと発表した。納入は同年9月末を予定し、防衛装備庁からの初の直接受注となる。単価は約38万円に抑えられ、GPSが遮断される電子戦環境でも自律飛行できるSLAM(自己位置推定)技術を搭載する。隊員のドローン操縦教育に充てられ、将来の無人機大量運用を見据えたものである。

ただし、注意しておきたい点がある。現在ウクライナで実戦運用されているのは迎撃・偵察を中心とする「守り」の装備だが、テラドローンは3月23日の参入表明で、低空の目標に対処するFPVドローンや無人ボートといった、より攻撃的な用途への展開も掲げている。同社の製品群が今後どこまで広がるかは、日本の防衛装備をめぐる制度と世論の両方に関わってくる。本稿の主役はあくまで迎撃・偵察の「防衛ドローン」だが、その輪郭が固定的でないことは押さえておきたい。

これは単なる投資ではない。

日本企業が、ウクライナの実戦環境で鍛えられている迎撃ドローン技術をグループ内に取り込もうとしているのである。

ここで重要なのは、「実戦環境」という言葉である。

平時の実証実験と、戦場での運用はまったく違う。
平時の実証では、天候、通信、飛行経路、安全距離、電波環境、オペレーター数、地上設備をある程度コントロールできる。
しかし戦場では、相手が妨害してくる。
通信が遮断される。
GPSが妨害される。
電子戦がある。
夜間運用がある。
量産性が問われる。
現場修理が問われる。
価格が問われる。
数が問われる。
そして、失敗すれば人命や重要インフラが失われる。

ウクライナ戦争は、ドローン戦争の実験場になってしまった。

この現実は重い。だが、安全保障を考える上では避けて通れない。

テラドローンがウクライナ企業を子会社化した意味は、単に「戦争で使われているドローンを買った」ということではない。

実戦から得られる運用データ、改良サイクル、部品選定、量産ノウハウ、電子戦対応、現場の評価、失敗事例を、企業の内部能力として取り込もうとしている点にある。

これは日本のスタートアップとしては、かなり異例の動きである。


第12章 Terra A1とTerra A2――低コスト迎撃ドローンが変える防空の経済学

現代の防空には、深刻な問題がある。

それは、攻撃側のドローンが安く、防御側の迎撃ミサイルが高いという非対称性である。

たとえば、安価な攻撃用無人機に対して、数千万円から億円単位の迎撃ミサイルを撃つ。これを長期戦で続けると、防御側の財政と弾薬備蓄が先に苦しくなる。

この非対称性を崩すために、世界各国が注目しているのが低コスト迎撃ドローンである。

Terra A1は、ロケット型の近距離・即応型迎撃ドローンである。

会社発表によれば、最大時速300kmで32kmの範囲をカバーし、電動推進による低騒音・低熱源の隠密性を活かして15分の飛行を実現。空域監視から標的の検知・無力化までを1機で完結させる。海外報道では1機あたり約2500ドルとされ、同社は数百万円規模の無人機脅威に対して約40万円で運用可能な迎撃事例を公表している。

シャヘド型が1機約3万〜5万ドル、迎撃ミサイルが1発数億円に達し得ることを考えれば、このコスト構造の意味は大きい。

一方、Terra A2は固定翼型の迎撃ドローンである。最大時速312km、航続距離75km、40分以上の飛行が可能とされ、レーダーシステムと連携して広域監視・目標検知・追尾・迎撃までを一体で担う。固定翼型は、一般にロケット型やマルチコプター型よりも長距離・長時間飛行に向く。

この二つ、さらに偵察型を組み合わせると、テラドローンが狙う防衛構想が見えてくる。

近距離で素早く迎撃する、最終防衛レイヤーのTerra A1。
広域を長時間哨戒し、前段で迎え撃つTerra A2。
数十〜数百km先まで進出して敵を捉える偵察型のTerra C1。
将来的には、速度と航続距離を高めたジェットエンジン搭載型も加わる。
その上に、ドローン運航管理、センサー、レーダー、指揮管制、AI識別、通信ネットワークを重ねる。

つまり、テラドローンが目指しているのは、単体の機体販売ではなく、偵察から迎撃までを束ねる階層型の低コスト防空システムである。

この構想には、すでに引き合いが来ている。徳重はロイターの取材に対し、迎撃ドローンにUAEやサウジアラビアなど中東諸国、さらにロシアに近いポーランドなど欧州から問い合わせが来ていると明かした。安価なドローンを1発数億円のミサイルで迎え撃つ非合理性が、各国に迎撃ドローンの必要性を突きつけているという。一方で徳重は、量産と国産化にあたり、中国製部材、とりわけ電池をサプライチェーンからどう排除するかが課題だとも指摘している。

ここに、同社がこれまで積み上げてきたUTMの意味が出てくる。

UTMは、本来は民間ドローンの安全な運航管理のための技術である。だが、多数のドローンを安全に飛ばし、位置を把握し、飛行経路を管理し、空域を整理する技術は、防衛領域にも応用可能である。

民間の空の交通管理。
産業ドローンの運航管理。
空飛ぶクルマの運航管理。
防衛ドローンの統制。
迎撃ドローンの運用。

これらは、すべて「空をデジタルに管理する」という大きなテーマでつながる。

テラドローンが本当に強くなるとすれば、機体メーカーとしてではない。

「空の運用システム」を持つ会社としてである。


第13章 日本の地政学とドローン防衛――なぜ今、重要なのか

日本にとって、この動きは極めて重要である。

日本は、地政学的に不安定な場所にある。

北にはロシア。
西には中国。
南西には台湾海峡。
朝鮮半島も近い。
日本列島は海に囲まれ、島嶼部が多く、長い海岸線を持つ。
南西諸島の防衛、重要インフラ防護、港湾、防衛施設、原発、送電網、通信施設、空港、石油備蓄基地など、守るべき対象は多い。

にもかかわらず、日本企業は長らく「戦場で実際に使われるドローン」の経験を持ちにくかった。

これは当然でもある。日本は平和国家であり、防衛装備移転や武器輸出に強い制約があった。防衛産業そのものも、国内需要中心で、世界市場で大きく戦う構造にはなりにくかった。

しかし、世界は変わった。

ウクライナ戦争で、ドローンは戦争の主役になった。
中東でも、ドローンとミサイルによる重要インフラ攻撃が現実化した。
台湾海峡や南シナ海でも、無人機、無人艇、衛星、電子戦、AI識別が重要になる。
安価なドローンの群れに対して、高価なミサイルだけで対応する時代ではなくなった。

この状況で、日本企業がウクライナの実戦ドローン企業とつながり、迎撃ドローン技術を取り込むことには、大きな意味がある。

制度面の追い風もある。2026年4月21日、日本政府は防衛装備移転三原則の運用指針を改正し、これまで国産完成品の輸出を救難・輸送・警戒・監視・掃海の「5類型」に限っていた制約を撤廃した。これにより、従来より広い種類の防衛装備品について、国家安全保障会議などの厳格な審査を前提に、個別案件ごとの輸出判断が可能になった。ただし、紛争当事国への移転は原則として制限されるため、「何でも自由に輸出できる」わけではない。テラドローンが実戦実証済みの迎撃ドローン事業を本格始動させた時期と、この制度改正が重なったのは偶然ではない。

需要側でも、国の姿勢は明確だ。防衛省は2025年12月に公表した令和8年度予算案で、無人アセット防衛能力に過去最大の約2773億円を計上した。その中核が、UAV・USV・UUVなど10種類・数千機規模の無人機を組み合わせた多層的沿岸防衛体制「SHIELD」である。これに1001億円を投じ、令和9年度中の構築を目指す(前年8月の概算要求では1287億円が示され、予算案で1001億円に整理された)。短期間で安価に大量取得できる無人機によって、有人装備に依存してきた従来の態勢を、非対称的な防衛へ転換する狙いである。海外製ドローンへの依存リスクが指摘されるなか、国産装備とサプライチェーンの確保が国策として進む。テラドローンの防衛装備庁向け初受注は、この流れの中に位置づけられる。

ただし、これは簡単な道ではない。

防衛装備は、民間製品とは違う。
輸出管理がある。
相手国政府との調整がある。
外交リスクがある。
倫理問題がある。
上場企業としての説明責任がある。
民間ドローン企業としてのブランドリスクもある。

テラドローンは、ここから「産業ドローン企業」から「防衛・安全保障テック企業」へ変わっていく可能性がある。

その転換を市場がどう評価するか。
日本政府がどう位置づけるか。
海外政府がどう扱うか。
株主がどこまで許容するか。

この数年が、大きな分岐点になる。


第14章 ロシアの反応――スタートアップが国際政治の盤面に乗った

テラドローンのウクライナ投資は、ロシアの反応も招いた。

経緯を整理する。

ロシア外務省のザハロワ報道官は2026年4月6日、テラドローンとアメイジング・ドローンズの提携について、「ロシアの安全保障上の国益に対する露骨な敵対行為」と非難し、ウクライナ国内の武器生産施設はロシア軍の合法的な軍事目標だと警告したと報じられた。

さらに4月8日、ロシア外務省は武藤顕・駐ロシア大使に対して正式に抗議した。一方、在ロシア日本大使館は、会談は日本側の呼びかけで行われ、ルデンコ外務次官から「個別企業」に関するロシア側の立場が伝えられたのに対し、武藤大使が反論したと説明している。

これは非常に象徴的である。

日本の一スタートアップの投資が、ロシア外務省の抗議対象になった。

つまりテラドローンは、すでに単なる民間ベンチャーではなく、国際安全保障の文脈で見られる企業になったということだ。

これは、強みでもある。

なぜなら、それだけ同社の技術・投資・事業展開が現実の戦場に近いという証拠だからである。世界の安全保障環境の変化と、同社の事業が直結し始めている。

しかし同時に、リスクでもある。

ロシア、中国、中東、欧州、米国、日本の規制当局。
それぞれの国が、ドローン、防衛技術、データ、通信、AI、部品輸出をどう管理するか。
ここに一つでも問題が起きれば、事業は止まる。

特に上場企業であるテラドローンにとって、防衛領域の拡大は株式市場からの評価にも直結する。

投資家によっては、防衛事業を成長機会と見る。
別の投資家は、地政学リスクや倫理リスクとして警戒する。
ESG投資の文脈では、防衛産業への投資判断は機関投資家ごとに分かれる。

つまり、テラドローンは今、世界市場へ行くための最も難しい扉を開けた。


第15章 世界と日本の潮流のなかのテラドローン――出資から実戦経験までを取りに行く

ここまで読むと、一つの疑問が浮かぶ。

ウクライナのドローン企業に出資し、実戦で技術を試す。これは、テラドローンだけの特権なのだろうか。

答えは、半分はノーで、半分はイエスである。

まず「ウクライナのドローン企業に出資する」こと自体は、いまや世界的な潮流である。ウクライナは「世界の防衛テックの震源地」と呼ばれ、資金が殺到している。調査会社PitchBookによれば、ウクライナ関連の防衛・デュアルユース企業が集めたベンチャー資金は2025年に7億7600万ドル超と過去最高を記録し、2022年以降の累計はおよそ18億ドルに達する。

顔ぶれも多彩だ。ドイツのクアンタム・システムズはウクライナに拠点を置き、現地の有望なドローン新興企業フロントラインの株式を取得した。米ボーイングもウクライナでの足場を広げた。UAEの防衛大手EDGEは、長距離ドローン・ミサイルを手がけるファイアポイントの株式30%取得を狙い、その企業価値は20億ドル超とも報じられる。米国のMITSキャピタルやグリーンフラッグ・ベンチャーズ、スウェーデンのフロント・ベンチャーズといったVCも、次々とウクライナへ入っている。

「実戦で試す」ことも、テラドローンの専売特許ではない。クアンタム・システムズは「Build with Ukraine」構想のもと現地メーカーと合弁を組み、ウクライナのエアロジックスは米独のオイテリオンと組んで米国生産に踏み込んだ。ウクライナのスカイフォールと英スカイカッターの共同事業は、米国防総省の「ドローン・ドミナンス」構想の初回コンペで優勝している。世界の主要プレイヤーが、こぞってウクライナという「戦場の実験室」に群がっているのが現実だ。

日本勢も、まったく動いていないわけではない。ここで、比較のためにもう一つの日本企業の動きを見ておきたい。楽天グループである。

2025年5月20日、楽天はウクライナの政府系防衛技術クラスター「Brave1」との連携を発表した。Brave1は、2023年にウクライナ政府が民間スタートアップを支援するために設立した組織で、1500社の防衛企業と連携し、3600の新技術、300のNATO規格準拠製品を生み出してきたとされる。前線で日々技術が試され、改善されていく、まさにウクライナ防衛テックの司令塔だ。テラドローンが出資したアメイジング・ドローンズも、このBrave1のエコシステムから出てきた企業である。

連携の第一弾として、楽天は2025年5月に幕張メッセで開かれた日本唯一の大規模防衛・安全保障展示会「DSEI Japan 2025」で、Brave1が支援するウクライナのスタートアップ6社のブース出展「Brave1 Powered by Rakuten」を、資金面などで支援した。出展したのは、電子戦下でも自律飛行を可能にするソフト・ハードを手がけるDwarf Engineering、FarsightVision、Griselda、LifesaverSIM、Skyfall Industries、そしてドローン群を自律制御するソフトのSwarmerの6社である。ドローンや無人機、医療IT、デジタルツインなどの分野で、実戦の現場経験を積んだ顔ぶれだ。

楽天がここに動くのには背景がある。同社はウクライナ侵攻後、「楽天クラッチ募金」などで13億円超を集め、三木谷浩史会長兼社長は個人でも10億円を寄付、2023年9月にはゼレンスキー大統領と直接会談している。メッセージングアプリ「Rakuten Viber」のウクライナ普及率は98%に達し、2024年1月にはキーウに新オフィスも構えた。人道支援と事業の両面で、ウクライナに深く関わってきた企業なのである。

記者会見で楽天の向井秀明執行役員は、「ウクライナで発達したスタートアップ技術を日本に持ってくることは国益になる」「遅れていると言われる日本の防衛産業へのスタートアップ活用を後押ししたい」と語った。Brave1のナタリア・クシュネルスカCEOも、「戦場では悲しみもあるが、実験場ではできない専門知識も得られた」と、実戦がもたらす知見の重みを強調している。

ただし、ここが肝心な違いである。楽天の役割は、あくまでウクライナ企業と日本市場・日本政府をつなぐ「支援」「橋渡し」であって、特定のドローン企業に資本を入れて子会社化し、自社製品として実戦投入する、というものではない。いわば、場を用意する立場だ。日本企業がウクライナ防衛テックに関わる形として、楽天は「支援・仲介」型、テラドローンは「出資・事業化」型と整理できる。同じ日本発でも、コミットの深さと形が違う。

では、テラドローンは何が違うのか。

第一に、いま見たとおり、日本企業として防衛分野で「出資」まで踏み込んだのは初めてだった。Brave1のCOOイリーナ・ザボロトナ氏は、キーウの記者会見に寄せたレターの中で、これを「日本のドローン企業による、ウクライナ防衛企業への史上初の投資」と表現した。楽天が場をつなぐ側に回ったのに対し、テラドローンは当事者として資本を入れた。ここに一線がある。

第二に、そこで止まらなかった。出資から、ウクライナ3社の連結子会社化へ。さらに、セキュリティを強化したR&Dセンターの新設、現地での柔軟な生産体制の構築、日本人エンジニア・生産技術者の派遣までを計画している。単に「戦場で使われているドローンを買う」のではなく、開発と生産の現場そのものに、グループとして根を張ろうとしている。ここまで踏み込んだ日本企業は、現状ほかにない。

第三に、学ぶ姿勢である。テラドローンがウクライナから吸収しようとしているのは、機体だけではない。ミサイル攻撃を受けても生産が止まらないよう工場を分散させる「分散型生産」のノウハウ、電子戦・GPS妨害・通信遮断が常態化した環境での運用データ、そして前線の部隊から日々戻るフィードバックで機体を高速改良する「短サイクル開発」の文化である。徳重は「我々には技術も、量産の経験も、多少の資金もある。だが、実戦で証明された経験がない」と率直に語る。その欠けたピースを、ウクライナで埋めようとしている。

この提携を、徳重は「結婚のようなものだ」と表現する。彼は2025年9月、東京の渡航自粛の空気を押し切って初めてウクライナに入り、以来、自らの人脈とLinkedInを頼りに100社を超えるウクライナの防衛テック企業と会ってきた。混み合うFPV(攻撃)ドローン市場ではなく、飛来する無人機を撃ち落とす迎撃ドローンにこそ最大の商機がある——そう見抜いた徳重は、当初、日本の投資家をなかなか説得できなかったという。目のつけどころ自体が、他と違っていた。

第四に、日本という国の事情とも噛み合っている。米シンクタンクISW(戦争研究所)のジョージ・バロス氏は、日本企業とウクライナ企業を結びつけることは「ウクライナを支える国際連合を広げるうえで重要だ」と指摘する。日本は憲法上、武器を直接送るのは難しい。しかし、デュアルユース(軍民両用)の技術開発・生産で貢献する道は開かれている。テラドローンの動きは、その現実的な一手でもある。実際、日本の防衛省も、実戦で急速に進化するウクライナ製ドローンの購入を検討し始めたと報じられている。

つまり、こういうことだ。

「ウクライナに出資する」だけなら、世界に大勢いる。「実戦で試す」だけでも、テラドローンが唯一ではない。だが、日本企業として、出資から連結子会社化、現地生産、そして実戦経験の獲得までを一気通貫でやろうとしているのは、いまのところテラドローンだけである。

そして忘れてはならないのは、これが同社の本業とも地続きだという点だ。徳重によれば、テラドローンの売上はすでに6割が海外である。産業用ドローンとUTMで世界を回ってきた土台の上に、ウクライナの実戦知見が乗る。この組み合わせこそが、同社が「日本発・世界一」を狙う足場になっている。

最後に、国内の景色も押さえておきたい。日本の防衛ドローンは、いまテラドローンの独走ではない。むしろ、いくつかの流れが同時に走り始めている。

国産機体では、ACSL(6232)が先行する。同社は国産フライトコントローラを自社開発し、セキュリティを重視した小型空撮機「SOTEN」を軸に、防衛省・警察向けの調達を積み上げてきた。2026年3月には防衛省から約10億円、4月には約4.2億円の小型空撮機体を相次いで受注し、同年4月にはドローンメーカーとして初めて日本防衛装備工業会の正会員に承認された。テラドローンが「迎撃・ウクライナ・実戦」型なら、ACSLは「国産機体・政府調達・堅実」型である。同じ防衛ドローンでも、攻めどころが違う。

重工大手も動き出した。三菱重工は、研究所と事業部門の連携で迎撃ドローンの量産試作機を「3カ月で開発した」とされ、攻撃型の存在も明らかになった。護衛艦やミサイルを手がけてきた「軍事御三家」の一角が、ウクライナ戦争を受けてドローンへ舵を切り始めたのである。制度対応や大規模調達に強い重工プライムと、実戦の高速改良サイクルに強いスタートアップ。日本の防衛ドローンは、この二つの流れがせめぎ合う局面に入った。

ウクライナ企業を「見に行く」動きも、テラドローンだけではない。2026年6月の日本最大級の展示会「Japan Drone」では、ウクライナ企業ジェネラル・チェリーのブースに、日本の大手企業とみられるスーツ姿の来場者が予約制の商談で次々と訪れたと報じられた。ウクライナの実戦技術への「接続口」を探す日本企業は、静かに増えている。

こうした環境の変化は、政府の姿勢にも表れている。小泉進次郎防衛相(当時)は、テラドローンのウクライナ出資をめぐる記者の問いに対し、外交・個別企業への論評は避けつつ、「継戦能力の確保などの面で、国内に無人機の生産・技術基盤が存在することが望ましい」「国内企業の生産力・技術力の向上は意義がある」と述べた。ウクライナ製ドローンの将来的な取得についても、特定国の装備を予断せず総合的に判断する、と含みを残している。

つまり、テラドローンは「日本で唯一の防衛ドローン企業」ではない。ACSLがいて、三菱重工がいて、ウクライナ詣でを始めた大企業もいる。そのなかでテラドローンが際立つのは、繰り返しになるが、出資から連結子会社化、現地生産、実戦投入までを一気通貫でやり切ろうとしている一点にある。国内勢が国産化と政府調達で足場を固め、重工が量産試作を急ぐなか、テラドローンだけが「戦場そのもの」に深く踏み込んでいる。この立ち位置の違いこそ、同社を読み解く鍵である。


追補B ドローンとAIの関係――電磁波攻撃、光ファイバーFPV、そして自律飛行AIドローンへ

ここで、テラドローンの記事にどうしても加えておきたい論点がある。

それは、ドローンとAIの関係である。

結論から言えば、ドローン戦争は最終的に「AIで自律飛行できるかどうか」の勝負へ向かう可能性が高い。

ただし、いきなり完全自律のAIドローンだけが勝つわけではない。現在の戦場では、無線操縦ドローン、電子戦、光ファイバーFPV、半自律AI、完全自律に近いAIドローンが、互いに弱点を突き合いながら進化している。

順番に整理したい。

まず、従来型のFPVドローンや偵察ドローンは、操縦者と機体の間で無線通信を行う。操縦者は映像を見ながら操作し、ドローンを目標へ向かわせる。この方式は安価で大量投入しやすく、ウクライナ戦争で戦車、装甲車、陣地、補給車両を次々に破壊してきた。

しかし、最大の弱点は電波である。

敵が強力な電子戦装置を使えば、通信が妨害される。GPSも妨害される。映像伝送が途切れる。操縦不能になる。目標直前でリンクが切れれば、ドローンは外れるか、墜落する。

そこで登場したのが、光ファイバーFPVドローンである。

光ファイバーFPVは、ドローンが極細の光ファイバーケーブルを後方に引き出しながら飛ぶ。操縦信号と映像を有線で送るため、通常の電波妨害が効きにくい。Reutersは、ウクライナとロシアの双方が、最大20kmほど伸びる極細ケーブルでドローンを誘導し、電子妨害の届かない形で運用していると報じている。戦場周辺では、その光ファイバー片が鳥の巣にまで使われるほど広がっている。

これは非常に強い。

電波を出さない。妨害されにくい。映像も安定する。GPSがなくても操縦できる。電子戦に対する一つの解である。

しかし、光ファイバーにも弱点がある。

ケーブルを巻いたリールの重量が増える。飛行距離に限界がある。障害物に絡まる。機動が制約される。長距離飛行や広域迎撃には向きにくい。さらに、ケーブルが切れれば終わる。

つまり、光ファイバーFPVは「電子戦に強い近距離兵器」としては極めて有効だが、すべてのドローンを置き換えるわけではない。

次に来るのが、AI自律飛行である。

AI自律飛行とは、操縦者が常時操作しなくても、ドローン自身が周囲を認識し、位置を推定し、経路を選び、目標を追尾し、任務を遂行する能力である。ここには複数の技術が含まれる。

カメラで地形や目標を認識するコンピュータビジョン。
GPSが使えない環境で自己位置を推定するSLAM。
慣性航法装置、気圧計、磁気センサー、地形照合によるナビゲーション。
目標を見失わず追い続けるAIトラッキング。
複数機を協調させる群制御。
通信が途切れても最後の任務を継続するオンボードAI。

CSISは、ウクライナがAI駆動の無人システムを進めており、完全自律戦争はまだ理想段階だが、航空システムを中心に部分自律では大きく前進していると分析している。重要なのは、人間が関与しない完全自律ではなく、「通信・GPS・操縦者への依存を減らす部分自律」が現実の戦場で先に進んでいる点である。

なぜAI自律飛行が重要なのか。

理由は単純だ。

電波妨害されても飛べるからである。
GPSがなくても位置を推定できるからである。
操縦者が見えない先でも任務を継続できるからである。
大量のドローンを少人数で運用できるからである。
迎撃側が一瞬で判断しなければならない場面で、AIが目標候補を提示できるからである。

戦場では、ドローンの数が増えすぎている。人間が一機ずつ操縦し、一機ずつ判断する方式には限界がある。前線では操縦者も狙われる。電波を出せば位置を特定される。通信すれば妨害される。

だから、ドローンは「操縦する機械」から「任務を与える機械」へ変わっていく。

この変化は、テラドローンにとって非常に重要である。

Terra A1やTerra A2のような迎撃ドローンは、飛来する敵ドローンを短時間で発見し、追尾し、衝突または近接爆発で無力化しなければならない。相手も高速で動く。電子戦もある。夜間もある。GPS妨害もある。

この環境では、人間がすべてを手動で操作するには限界がある。

必要なのは、センサー、レーダー、カメラ、AI認識、飛行制御、迎撃アルゴリズムの統合である。

つまり、迎撃ドローンの本当の価値は、機体そのものだけではない。

「どの目標を脅威と判断するか」
「どの機体を向かわせるか」
「どの角度から接近するか」
「妨害を受けたとき、どう復帰するか」
「外した場合、次の機体をどう投入するか」

この判断を、どこまでAIで高速化できるかが勝負になる。

ここで、電磁波攻撃、光ファイバー、AI自律飛行の関係を整理すると、次のようになる。

無線操縦ドローンは安価で大量投入できるが、電子戦に弱い。
光ファイバーFPVは電子戦に強いが、距離・重量・ケーブルの制約がある。
AI自律飛行ドローンは通信妨害に強く、長距離・広域・大量運用に向くが、開発難度が高い。

この三つは置き換えではなく、階層的に併用される可能性が高い。

近距離の塹壕攻撃や車両攻撃では、光ファイバーFPVが強い。
広域偵察や長距離飛行では、AI自律飛行が必要になる。
防空・迎撃では、センサーとAIを組み合わせた自律追尾が不可欠になる。
群れで飽和攻撃・飽和迎撃を行う場合、人間の手動操縦だけでは対応できない。

つまり、最終的な答えは「光ファイバーかAIか」ではない。

光ファイバーは、電子戦への現実的な短期解である。
AI自律飛行は、電子戦を超える中長期の本命である。

戦場ではまず、電子戦に弱い無線ドローンが広がった。次に、電子戦を避けるため光ファイバーFPVが広がった。そして次に、光ファイバーの物理的制約を超えるため、AI自律飛行が必要になる。

この流れを考えると、テラドローンが本当に世界で勝つためには、迎撃ドローンの機体だけでは不十分である。

AIで飛べること。
GPSなしで飛べること。
通信なしで目標へ向かえること。
複数機を協調運用できること。
UTMとC-UASを接続し、空域全体を見える化できること。

これが必要になる。

この点で、テラドローンには面白い布石がある。

同社はもともと、UTM、つまり空の運航管理に取り組んできた。Uniflyを傘下に置き、マレーシア国家UTMやMBDAとのC-UAS協業にも進んでいる。UTMは民間ドローンの交通整理であり、C-UASは敵ドローンの検知・識別・無力化である。一見別の技術に見えるが、どちらも「空をデジタルに把握し、判断し、制御する」技術である。

そして、Terra A1、Terra A2、Terra C1が加わると、テラドローンは次のような構想を描ける。

Terra C1が広域を偵察する。
Unifly系の空域管理が味方・民間・敵性飛行体を識別する。
レーダーやセンサーが脅威を検知する。
AIが脅威度を判定する。
Terra A2が遠距離で迎撃する。
突破されたものをTerra A1が近距離で落とす。
結果データが次のAI学習と機体改良に戻る。

これが実現すれば、単なるドローン会社ではなく、AI防空オペレーション企業になる。

もちろん、倫理と制度の問題はある。人間の判断をどこまで残すか。AIが目標を誤認した場合、責任は誰が負うのか。専守防衛の範囲をどう定義するのか。輸出先でどう使われるのか。これらは避けて通れない。

しかし、技術の方向性だけを見れば、答えはかなり明確である。

最終的には、AIで自律飛行できないドローンは、強力な電子戦環境では勝ち残りにくい。

人間が操縦するドローンの時代から、AIが飛行を支援するドローンの時代へ。
そして、通信が切れても任務を続ける自律ドローンの時代へ。

ドローンとAIは、もはや別々の技術ではない。

ドローンはAIの身体であり、AIはドローンの脳である。

テラドローンが、ウクライナで実戦経験を得た迎撃ドローンと、UniflyのUTM、MBDAとのC-UAS協業、そしてAI自律飛行を結びつけられるなら、日本発のフィジカルAI企業として、かなり面白い位置に立つ。

その意味で、徳重徹の挑戦は「ドローン企業の挑戦」ではない。

AIが現実世界を飛ぶ時代に、日本企業がどこまで食い込めるか。

その試金石なのである。

第16章 インドネシア火災事故――成長企業を襲った重大リスク

一方で、テラドローンには重大なリスクも存在する。

2025年12月9日昼、インドネシア・ジャカルタの6階建てオフィスビルで火災が発生した。建物には現地子会社PT Terra Drone Indonesiaが入居しており、従業員22人(女性15人、男性7人)が死亡、19人が負傷したと報じられている。犠牲者は全員が同子会社の従業員だった。

報道によれば、1階に保管されていたドローン用バッテリーから出火し、火は最上階まで燃え広がった。現地警察は12月12日、同社のドローン用電池が出火原因だと発表し、安全対策が不十分だったとして現地子会社のCEOを容疑者に認定したとされる。一方、会社側は、当該バッテリーは自社製造品ではなく、販売製品の安全性への影響はないとの趣旨を説明している。なお、現地CEOについては、現地メディアが逮捕・容疑者認定を報じる一方、日本側報道では「事情聴取を受けているとの情報を確認しているが、逮捕の有無を含む事実関係を確認中」とする会社側説明も伝えられている。したがって本文では、最終的な司法判断が確定した事案としてではなく、重大な安全管理・ガバナンス上のリスクとして扱うべきである。

経営への影響も大きかった。テラドローンは火災を受けて約7億円の特別損失を計上し、2026年1月期の最終赤字は23億円規模へ拡大した。2026年1月末時点で、死亡した22人のうち19人への補償金支払いが完了したと発表されている。

この事故は、テラドローンにとって極めて重い。

もちろん、事故原因や責任の最終判断は、当局の調査や司法判断を待つ必要がある。現時点で断定すべきではない。

しかし、ドローン企業にとってリチウムイオンバッテリーの管理は根幹である。

ドローンは高出力のバッテリーを使う。
充電、保管、放電、輸送、検査、劣化管理、温度管理、短絡防止、火災時対応が不可欠である。
特に事業所で大量のバッテリーを扱う場合、単なる社内ルールでは足りない。
防火区画、避難経路、消火設備、充電管理、保管棚、温度センサー、監査体制、教育、第三者検査が必要になる。

この事故は、テラドローンの「世界展開の弱点」を突いた。

グローバル展開する企業は、本社だけが優秀でも足りない。
海外子会社も同じ安全基準で運営しなければならない。
現地ビルの防火基準、避難経路、消防設備、バッテリー保管状況、社員教育まで管理する必要がある。

特にドローン、EV、蓄電池、ロボット、電動モビリティの企業にとって、バッテリー事故は事業継続に直結する。

テラモーターズもEVを扱う。
Terra ChargeもEV充電インフラを扱う。
テラドローンもドローンバッテリーを扱う。

徳重グループ全体にとって、バッテリー安全は避けて通れない最重要課題である。


第17章 バッテリー問題――EVとドローンに共通する成長の影

リチウムイオンバッテリーは、現代の電動化社会の中心にある。

EV。
ドローン。
スマートフォン。
蓄電池。
ロボット。
電動バイク。
電動三輪。
空飛ぶクルマ。

すべてがバッテリーによって動く。

しかし、バッテリーは便利であると同時に危険でもある。高密度のエネルギーを小さな筐体に閉じ込めているからである。過充電、過放電、物理的損傷、製造不良、高温、短絡、劣化、保管不良が重なると、熱暴走や火災につながる。

テラモーターズ、Terra Charge、テラドローンの未来を考えると、バッテリー安全管理は単なる裏方業務ではない。経営戦略そのものである。

EV充電インフラでは、充電器の安全性、過電流保護、漏電対策、遠隔監視、保守、利用者教育が必要になる。
ドローンでは、バッテリー保管、充電中監視、交換管理、劣化診断、現場運用手順が必要になる。
防衛ドローンでは、さらに過酷な環境での運用、輸送、保管、量産時の品質管理が問われる。

つまり、徳重徹の事業が拡大すればするほど、バッテリー安全は中心テーマになる。

これは弱点であると同時に、乗り越えれば強みにもなる。

なぜなら、世界のEV・ドローン・ロボット企業は、すべて同じ課題を抱えているからである。
バッテリー安全の標準化、管理ソフト、遠隔監視、保管設備、保険、認証、教育までパッケージ化できれば、それ自体が事業になる。

テラグループが今後本当に世界企業になるなら、単に機体や充電器を売るのではなく、「電動化インフラの安全管理」まで含めて提供する必要がある。


第18章 テラモーターズ、Terra Charge、テラドローンは何を目指しているのか

ここまで見ると、徳重徹の事業群が目指している方向が見えてくる。

それは、地上と空の次世代インフラ企業である。

テラモーターズは、電動三輪・小型EVから始まった。
Terra Chargeは、EV充電インフラを押さえに行っている。
テラドローンは、産業用ドローン、UTM、防衛ドローンへ進んでいる。

表面的には別々の事業に見える。

しかし、根底には共通点がある。

第一に、脱炭素である。
EV、充電インフラ、電動モビリティは、脱炭素政策と直結する。

第二に、都市インフラである。
EV充電器も、ドローン運航管理も、都市や地域のインフラになる。

第三に、グローバルサウスである。
インド、インドネシア、タイ、中東、ウクライナなど、日本国内だけでなく海外の成長市場を狙っている。

第四に、国策との連動である。
EV補助金、充電インフラ整備、グローバルサウス共創事業、ドローン社会実装、防衛技術、空飛ぶクルマ。どれも政府政策とつながる。

第五に、ハードウェアとソフトウェアの融合である。
機体、充電器、バッテリー、センサー、アプリ、決済、クラウド、UTM、AI、運航管理が組み合わされる。

徳重徹が目指すのは、単なる「EV会社」でも「ドローン会社」でもない。

地上ではEV充電インフラ。
空ではドローン運航インフラ。
安全保障では低コスト防空インフラ。

この三つをつなぐ、日本発のグローバルインフラ企業である。


第19章 投資家から見たテラグループ――なぜ資金が集まるのか

テラモーターズ、Terra Charge、テラドローンには、複数の大企業・金融機関・海外投資家が関わっている。

なぜ資金が集まるのか。

理由は明確である。

一つ目は、市場が大きいからである。
EV充電インフラ、産業ドローン、UTM、防衛ドローン、空飛ぶクルマ。どれも将来市場が大きい。

二つ目は、国策と重なるからである。
脱炭素、EV普及、ドローン社会実装、グローバルサウス、防衛技術、重要インフラ防護。政府が支援するテーマに乗っている。

三つ目は、海外展開が早いからである。
インド、中東、インドネシア、ウクライナ、米国、欧州。日本国内だけに閉じていない。

四つ目は、大企業が入りやすい領域だからである。
エネルギー会社、商社、金融、リース、不動産、インフラ、通信、防衛、自治体。多くの既存大企業が関わる余地がある。

五つ目は、徳重徹の「世界一」への執念である。
スタートアップ投資では、経営者の胆力が重要になる。徳重は、国内で小さく勝つタイプではなく、海外で泥臭く戦うタイプである。この性格が、投資家にとってリスクであると同時に魅力でもある。


第20章 国からの補助金・政策支援――追い風はどこにあるか

テラグループの事業は、複数の政府政策と重なっている。

まずEV充電インフラである。日本政府は2030年までに充電インフラ30万口を整備する方針を掲げている。Terra Chargeは、この政策のど真ん中にいる。

マンション、商業施設、公共施設、自治体、法人車両拠点に充電器を設置する。
補助金申請も支援する。
急速充電器も普通充電器も展開する。
アプリ決済、クラウド管理、保守まで提供する。

次に、ドローン・UTMである。

テラドローンは、経済産業省のグローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金に採択され、インドネシアでUTM実証を進めた。

これは、日本政府にとっても意味がある。

日本は、AIや半導体では米中に大きく遅れた。
しかし、ドローン運航管理、空飛ぶクルマ、産業ロボット、防災、インフラ点検、海洋・島嶼防衛では、まだ勝負できる余地がある。

テラドローンの海外実証は、日本のインフラ輸出、グローバルサウス戦略、デジタル公共インフラ輸出と重なる。

最後に、防衛である。

ウクライナ戦争以降、日本でも防衛装備、無人機、対ドローン、弾薬、電子戦、サイバー、衛星通信への関心が高まっている。テラドローンがウクライナの迎撃ドローン企業を傘下に入れたことは、日本の安全保障産業にとっても象徴的な出来事になる可能性がある。

ただし、防衛領域では国の支援がそのまま企業利益になるとは限らない。
輸出管理、政府調達、機密管理、サプライチェーン、安全保障上の審査が必要になる。
ここで、テラドローンがどこまで制度に適応できるかが重要になる。


第21章 徳重徹の強さ――ハードウェアを恐れない起業家

日本のスタートアップ界では、ハードウェアは敬遠されがちである。

ソフトウェアより資金がかかる。
在庫が必要。
品質問題が出る。
サプライチェーンが複雑。
海外展開が難しい。
規制が多い。
事故が起きる。
利益率が低くなりやすい。

しかし、国家や産業を変えるのは、多くの場合、ハードウェアとインフラである。

EVは道路・電力・都市を変える。
充電器はエネルギー網を変える。
ドローンは物流・点検・農業・防災・防衛を変える。
UTMは空域管理を変える。
迎撃ドローンは防空の経済学を変える。

徳重徹の強さは、この重い領域から逃げないことにある。

彼は、国内SaaSで堅実に積み上げる起業家ではない。
新興国に行く。
現場に入る。
大企業を巻き込む。
政府政策を読む。
海外投資家を引き入れる。
防衛にも踏み込む。
事故にも向き合わなければならない。

この泥臭さこそが、徳重徹の本質である。


第22章 弱点とリスク――急拡大の裏側

一方で、課題も多い。

第一に、収益性である。
テラドローンは上場したが、成長投資が重い段階にある。2026年1月期は火災特損も重なり23億円規模の最終赤字となり、2027年1月期も赤字継続を会社は見込む。株式市場はいつまでも赤字を許容しない。

第二に、補助金依存である。
Terra Chargeは国のEV充電政策と強く連動している。これは追い風だが、補助金が縮小すれば設置ペースや収益性に影響する可能性がある。

第三に、海外子会社ガバナンスである。
インドネシア火災事故は、海外拠点の安全管理がいかに重要かを示した。最終的な原因・責任判断とは別に、世界展開する企業として、グループ全体の安全基準を再設計する必要がある。

第四に、防衛領域の地政学リスクである。
ウクライナ投資は大きな成長機会だが、ロシアの反発を招いた。今後、中国、中東、欧米の規制や外交にも影響を受ける。

第五に、技術競争である。
ドローンもEV充電も、世界中に競合がいる。中国企業、米国企業、欧州企業、イスラエル企業、トルコ企業、ウクライナ企業がひしめく。日本発というだけでは勝てない。

第六に、バッテリー安全である。
EV、ドローン、ロボット、蓄電池のすべてで、バッテリー事故は致命的なブランド毀損につながる。

つまり、徳重徹の事業は、夢が大きい分、リスクも大きい。


第23章 未来予測――テラグループはどこへ向かうのか

今後、テラグループは大きく五つの方向へ進むと考えられる。

第一に、EV充電インフラの国内拡大である。
Terra Chargeは、マンション、商業施設、公共施設、法人車両拠点で設置数を増やす。日本政府の2030年30万口目標の中で、上位事業者としての地位を狙う。

第二に、EV充電とエネルギーマネジメントの融合である。
充電器は、単なるコンセントではない。将来は、電力需給調整、再エネ、蓄電池、V2H、V2G、デマンドレスポンスとつながる。ここでエネルギー会社、リース会社、自治体との連携が重要になる。

第三に、UTMの海外展開である。
インドネシア、UAE、サウジアラビアなどで実証を重ね、航空当局や政府と接点を作る。将来、物流ドローンや空飛ぶクルマが社会実装されれば、UTMは不可欠なインフラになる。

第四に、エネルギー施設・重要インフラ点検である。
サウジアラムコとのMOUに象徴されるように、石油・ガス、電力、港湾、プラント、送電網、通信施設の点検市場は巨大である。ドローン、ロボット、AIを組み合わせれば、人手不足と安全性の課題を同時に解決できる。

第五に、防衛・対ドローン領域である。
ウクライナのTerra A1/A2を起点に、低コスト迎撃ドローン、重要インフラ防護、空域監視、電子戦対応、量産体制へ進む可能性がある。

この五つがつながると、テラグループは非常に面白い企業群になる。

地上のEV充電。
空のUTM。
インフラ点検。
防衛ドローン。
エネルギーマネジメント。

これらを束ねる会社は、世界的にもまだ多くない。


第24章 日本にとっての意味――生成AIではなく、フィジカルAIの会社

今、日本では生成AIが注目されている。

もちろん生成AIは重要である。
しかし、日本が世界で勝てる可能性があるのは、むしろフィジカルAIかもしれない。

フィジカルAIとは、現実世界で動くAIである。
ロボット、ドローン、自動運転、工場、自動倉庫、建設機械、農業機械、医療機器、防災、防衛。
現実のセンサー、機械、モーター、バッテリー、制御、通信、現場運用と結びついたAIである。

テラドローンは、まさにフィジカルAI企業になり得る。

ドローンは現実世界を飛ぶ。
センサーで現場を計測する。
AIで異常を検知する。
UTMで空域を管理する。
迎撃ドローンで脅威に対応する。
現場データを蓄積し、次の運用改善に使う。

これは、単なるソフトウェアではない。
現実世界で動き、失敗し、壊れ、燃え、改良される技術である。

日本が強かったのは、もともとこの領域だった。

製造業。
品質管理。
現場改善。
ロボット。
精密機械。
自動車。
電子部品。
センサー。
材料。

テラモーターズ、Terra Charge、テラドローンは、この日本の強みを、EV、充電、ドローン、防衛、空のインフラへつなげようとしている。


第25章 結論――徳重徹は、日本発ベンチャーの“危険な希望”である

徳重徹は、完成された成功者ではない。

むしろ、今も危険な勝負の最中にいる。

テラモーターズは、電動三輪EVでインドなど新興国市場へ挑んだ。
Terra Chargeは、日本のEV充電インフラという国策市場で急拡大している。
テラドローンは、産業ドローンからUTMへ進み、サウジアラムコ、中東、インドネシア、そしてウクライナの迎撃ドローンへ踏み込んだ。

この流れは、非常に大きい。

日本のスタートアップで、ここまで海外、ハードウェア、インフラ、防衛、エネルギー、国策を横断している企業は多くない。

一方で、課題も重い。

赤字。
補助金依存。
海外ガバナンス。
バッテリー火災。
防衛領域の外交リスク。
技術競争。
株式市場からの圧力。

これらを乗り越えられなければ、巨大な構想は途中で折れる。

しかし、それでも徳重徹という起業家は注目に値する。

なぜなら、彼は「日本で小さく勝つ」ことを目指していないからである。

彼が目指しているのは、日本発で世界のインフラを取りに行くことだ。

地上では、EV充電インフラ。
空では、ドローン運航管理。
戦場では、低コスト迎撃ドローン。
エネルギー施設では、点検・監視・防護。
新興国では、次世代モビリティ。

これは、日本企業が本来挑むべき領域である。

生成AIの世界では、日本は米国や中国の巨大モデルに遅れた。
しかし、フィジカルAI、ドローン、ロボット、EVインフラ、防衛、現場データの世界では、まだ勝負できる。

テラモーターズ、Terra Charge、テラドローンは、その可能性を持つ数少ない日本発ベンチャーである。

徳重徹は、成功が約束された起業家ではない。
だが、日本がもう一度、世界で戦えるのかを問う存在である。

この会社が失敗すれば、「やはり日本発ハードウェアベンチャーは難しい」と言われるかもしれない。
しかし、もし成功すれば、日本のスタートアップ観は大きく変わる。

日本からでも、EV、ドローン、防衛、空のインフラで世界を取りに行ける。
日本からでも、国策と海外市場をつなぎ、大企業と政府を巻き込み、戦場の最先端技術まで取り込める。
日本からでも、フィジカルAIの時代に世界企業をつくれる。

徳重徹とテラグループの挑戦は、まだ途中である。

だからこそ、追いかける価値がある。


参考リンク


ハッシュタグ

#徳重徹
#テラモーターズ
#TerraMotors
#TerraCharge
#テラチャージ
#テラドローン
#TerraDrone
#日本発スタートアップ
#EV
#EV充電
#ドローン
#防衛ドローン
#ウクライナ
#フィジカルAI
#モビリティ
#空のインフラ
#UTM
#グローバルサウス
#日本復活
#ハードウェアスタートアップ
#安全保障
#次世代インフラ
#TerraDefense
#迎撃ドローン
#防衛装備庁
#偵察ドローン
#AIドローン
#自律飛行
#光ファイバードローン
#電子戦
#C_UAS

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー